特性のある子を支える「児童支援」と「移動支援」の仕事/介護リレーインタビュー Vol.19【児童指導員 浦田あかねさん&移動支援員 勢理客麗奈さん】#1
介護業界に携わる皆様のインタビューを通して、お仕事の魅力、多様な働き方を紹介する本連載。
今回は、発達支援教室や移動支援事業などを展開している「株式会社スマイルキッズ」にフォーカス。発達支援教室「スマイル久が原プラス」で児童指導員をしている浦田あかねさんと、移動支援事業所「スマイルアクティブ」でヘルパーとして移動支援や居宅介護をしている勢理客麗奈さんにお話しをお聞きします。
前編では、それぞれの詳しいお仕事内容や支援員になった経緯、このお仕事に必要だと思う素質などを教えていただきます。
お話を伺ったのは…
(左)スマイル久が原プラス 児童指導員 浦田あかねさん
外資系企業、商社勤務を経て、2019年7月~株式会社スマイルキッズに入社。非常勤として児童支援の経験を積み、2020年1月から社員として児童支援員に。
(右)スマイルアクティブ 移動支援員・ヘルパー 勢理客麗奈さん
航空系専門学校を卒業後、移動支援員として働き始める。別会社を経て、2020年に株式会社スマイルキッズに入社。移動支援、居宅介護のヘルパー業務を行う。2021年からはヘルパー業務に加えて管理者業務も担当。
運動療育をメインに個々に合わせた活動を支援
―ではまず、浦田さんのお仕事について教えてください。
浦田さん:放課後デイサービスの児童支援員として、発達支援教室での児童の活動のサポートを行っています。私が勤務している「スマイル久が原プラス」は、小学3年生から高校3年生までが対象の事業所です。
「スマイル久が原プラス」は、ストレッチや体操などの運動療育がメインです。目の動きを鍛えるためのボールキャッチや、瞬発力を養ってもらうためのサッカー、個別のビジョントレーニングなど、それぞれの子どもに合わせた活動を各スタッフが考えて提供しています。
平日は小学3年生が14:30ごろ来始め、16:30ごろまでに10名前後が来所。基本的には室内で活動を行います。今は夏休みなので、在所時間は13:00~17:00。在所時間が長いので、買い物や遠足など外出活動も取り入れながら、毎日いろいろな活動をして過ごしています。
―どんなお子さんを支援されているのでしょうか?
浦田さん:自閉症やADHDなどで支援級や特別支援学校に通われているお子さんから、障がいの診断はグレーで普通級に通っているお子さんまで幅広いです。年齢もできることも幅が広いのが特徴だと思います。
―仕事をするうえで大切にしていることは何ですか?
浦田さん:子どもたちと接する時は、常に笑顔でいること。また、事業所全体に目が行き渡るように、視野を広く持つことです。子どもたちの特性で動きが読めないところがあるので、咄嗟のことにも気づけるように全体を見渡すことが大切だと思っています。だから、背を向ける子どもがいないように、というのは他のスタッフにも声掛けしています。
あとは、保護者との関わりも大切ですね。お子さんのことをとても心配されている方が多いので、必要な方には活動の報告やちょっとした進歩などでも、お迎えの時やオンライン連絡帳などで細かくお伝えしています。
登下校や帰宅時の移動、外出をサポート
―では、勢理客さんのお仕事について教えてください。
勢理客さん:仕事内容は、知的な障がいのあるお子さんや成人の方の移動支援、居宅介護などのヘルパー業務です。また、この春からヘルパーさんやご利用者様のスケジュールの調整や関連機関との連携などの管理者業務も行っています。
曜日によって、夕方から20時ごろまで居宅介護が入ります。居宅介護での支援内容は、入浴、服薬、排せつ、食事の介助です。
移動支援は児童のご利用者さんが多いので、学校に通っている期間は日中に空き時間があり、その時間にヘルパーさんのスケジュール管理などの事務作業をしています。おひとりのご利用者さんに対して、数名のヘルパーで曜日ごとにシフトを組んで対応しています。
―移動支援のお仕事は体力が必要そうですね。
勢理客さん:お子さんは走り出しも多いので、一緒に走ったりとかは多いですね(笑)。ヘルパーさんは、みなさん1日3万歩以上歩いていると思います。日によって行く場所も違いますし、移動範囲はすごく広いです。夏休みは外出支援も多く、半日くらい一緒に外に出ることも。私もご利用者さんと一緒に楽しんでいます。
―仕事をするうえで大切にしていることは?
勢理客さん:冷静でいることと笑顔でいることは、すごく心がけています。移動中にパニックになることもあるので、ヘルパー側も冷静に対応しなければいけませんし、笑顔でいることでお子さんも安心して穏やかに過ごしてくださることが多いです。
また発語がないお子さんも多いので、表情やアイコンタクトでコミュニケーションをとることもよくあります。だから表情や行動をよく観察して、今何を考えているかを汲み取っていくことも意識しています。
社会と共に生きられるスキルを提供したい
―おふたりが福祉業界に入ったきっかけを教えてください。
浦田さん:大学では社会福祉を学んでいました。前職の区切りがついたタイミングで、次はそういった福祉の仕事をしてみたいなと思って児童指導員の仕事を選びました。
勢理客さん:CAの専門学校を卒業後、体調を崩したことがきっかけで、福祉業界に興味を持ちました。それで、「人の役に立ちたい」とずっと思っていたこともあり、福祉の仕事を考え始めたんです。何から始めようか調べていると移動支援なら資格が3日で取れるとわかったので、そこから始めてみようと思って今の仕事につきました。
―「スマイルキッズ」は子どものご利用者さんが多いかと思います。選んだ理由は、そういった特徴も大きいですか?
浦田さん:そうですね。私の場合、通いやすい距離というのも大きいですが(笑)。元々子ども好きで、大学時代も子どもの福祉の勉強をしていたので、障がい児のサポートに携われたらと思って入社しました。
勢理客さん:わたしは以前働いていた事業所が成人の方をメインに支援している事業所だったので、働いているうちに段々お子様向けの支援内容にも興味が出て、今の事業所を選びました。成人の方とお子様に向けての支援の違いを今学んでいる最中です。
―支援の目標などはありますか?
勢理客さん:移動支援では、最終的には1人で外出できるようになることが目標です。もちろん障がいの程度にもよりますが、そこを目指して段階を踏みながら支援を行っています。
浦田さん:発達支援も同じです。できる限り社会的なスキルも身につけて欲しい、社会になじんで生活していけるようになって欲しいと思って、声掛けをしたり活動を考えたりしています。
また「スマイル久が原プラス」は、「自分で来て、自分帰る」ことを目標にしています。自分で帰る子もいれば移動支援を使って帰る子もいますが、そこは事業所同士で連携しながら支援を行っています。
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放課後デイサービスと移動支援という仕事で、知的障がいを持つ子どもたちをサポートしている浦田さんと勢理客さん。職種は違えど、基本にあるのはご利用者さんたちの「社会共生」を目指していることでした。次回、後編では、おふたりが仕事に感じるやりがいや大変さ、今後の目標についてお聞きします。
▽後編はこちら▽
子どもたちの成長が達成感につながる/介護リレーインタビュー Vol.19【児童指導員 浦田あかねさん&移動支援員 勢理客麗奈さん】#2>>
取材・文/山本二季
撮影/高嶋佳代