デイサービスで行う機能訓練とは? 機能訓練指導員になるために必要な資格って?
デイサービスは通所系の介護サービスのひとつで、正式には通所介護といいます。入浴や排せつ・食事などの介護をはじめ、さまざまな介護サービスを通所で受けることになりますが、役割のひとつに機能訓練があるのです。今回は、デイサービス(通所介護)でおこなう機能訓練やその指導にあたる機能訓練指導員について説明します。
さらにその訓練内容や対象者といった具体的な説明にくわえ、機能訓練指導員になるためにはどのような資格が必要かなども確認しておきましょう。
デイサービス(通所介護)の機能訓練とは? どんな訓練をおこなうの?
デイサービス事業所でおこなう機能訓練では、日常生活での動作を改善・維持するためのサービスを提供します。リハビリと同じようなことをすると考える人も多いかもしれませんが、厳密には機能訓練とリハビリには違いがあるのです。機能訓練ではどのような訓練をおこなうのか、リハビリと異なる点も含めて詳しく見ていきましょう。
機能訓練の対象となる利用者は?|要介護認定を受けた高齢者
機能訓練の対象になる利用者は、要介護度1以上の認定を受けた人になります。介護保険のサービスを利用するためには、要介護認定を受ける必要があるのです。
認定は要支援1~2と要介護1~5の計7段階がありますが、支援は必要となるものの介護までは必要としない要支援1・2の認定を受けた人は機能訓練を受けられません。そのため、機能訓練を受けるためには、いわゆる「介護を要する状態」である要介護1以上の認定を受ける必要があります。
どんな訓練をおこなうの? 訓練の目的とは?
機能訓練は、要介護状態の高齢者それぞれの心身の状態に合わせ、可能な限り自分で身の回りのことができるように訓練するという役割をもっています。一口に機能訓練といっても、身体機能の改善や日常生活でできることを増やして質を高めるなど、利用者によって目的には違いがあるのです。
ここでは、身体面の機能向上と日常生活機能の向上という2つの側面から、機能訓練でおこなう訓練内容をご紹介します。
身体機能の向上や維持を目的とする機能訓練
機能訓練がもつ目的のひとつに、訓練を通じ身体機能の向上や維持を目指すというものがあります。歩行や立ち座りの可否をはじめとした身体機能の向上を図り、自分でできることを増やしたり、維持したりすることで、利用者の要介護状態を少しでも下げる・または維持することを目的としているのです。
そのために歩行訓練や筋力増強・関節可動域の訓練などをおこなうのが、身体面における機能訓練の特徴といえます。
日常生活機能の向上や維持を目的とする機能訓練
トイレや料理・入浴をはじめとした日常生活に必要な機能の向上・維持も、機能訓練がもつ重要な目的です。
具体的な生活行為や社会的関係の維持に関わることができるようになることを目標とし、実践的な内容の訓練を繰り返しおこなうことで、日常生活における生活機能の維持・向上を図ります。
機能訓練とリハビリはどこが違うの?
機能訓練とリハビリに似たような印象をもつ人は少なくないかもしれませんが、医師からの指導の有無という大きな違いがあります。
通所系の介護サービスとして通所リハビリテーション(通所リハ)もありますが、通所リハは医師の指示にもとづき、病気療養後の在宅復帰や心身の機能維持・回復などのために受ける医療系のサービスです。
一方、通所介護の機能訓練は、看護職員や後述する機能訓練指導員などが作成する機能訓練計画にもとづき、高齢化によって衰えがちな機能を維持・改善するという目的でおこなわれます。
機能訓練指導員になるために必要な資格とは?
デイサービス事業所などで機能訓練をおこなう役割を担うのが機能訓練指導員ですが、誰でもなれるというわけではありません。機能訓練指導員になるには、一定の資格を保有している必要があるのです。機能訓練指導員になるために必要な資格を、具体的に見ていきましょう。
1. 看護師・准看護師
機能訓練指導員の仕事ができる資格としては、看護師や准看護師などがまずあげられます。いずれも病院をはじめとした医療機関の最前線で医療行為をおこなう役割をもっていますが、デイサービスをはじめとした介護保険サービスでもその役割は重要です。
看護師・准看護師は看護系の大学や短大を卒業したあと、国家試験・都道府県の試験に合格することで資格を得ることができます。機能訓練指導員として働く場合は、利用者のバイタルチェックや体調管理・病気やケガの処置といった医療的知見が必要な場面での活躍が期待されているのです。
2. 理学療法士
機能訓練指導員になるために必要な資格としては、理学療法士もあります。理学療法士の資格取得のためには、大学などの指定された学校を卒業することが必要で、その上で国家試験に合格しなければなりません。
運動療法や物理療法をもちいて自立をサポートする専門職の理学療法士は、機能訓練においては、病気やケガなどで運動機能が衰えた利用者のリハビリテーションをおこなうという役割を担います。
3. 言語聴覚士
言語聴覚士もまた、機能訓練指導員に就くために必要な資格のひとつです。言語聴覚士の業務は、言語聴覚士法第2条で「音声機能、言語機能又は聴覚に障害のあるものについてその機能の維持向上を図るため、言語訓練そのほかの訓練、これに必要な検査および助言、指導そのほかの援助をおこなう」と定められています。
言語聴覚士は大学や専門学校など、指定を受けた言語聴覚士養成校を卒業したあと国家試験に合格し、登録をすれば資格を取得することが可能です。
機能訓練指導員として言語聴覚士に求められる役割は、言葉を使ったコミュニケーションが不自由な高齢者に対し、その機能を回復させるための訓練や指導、リハビリテーションをおこなうというものがあります。
4. 作業療法士
機能訓練指導員に必要な資格には作業療法士もあり、作業を通じすべての人が社会とのつながりをつくるためのサポートをするという役割を担います。
学校をはじめとした養成施設を卒業することで受験資格を取得し、国家試験に合格すれば資格をえられる点は、ほかの資格とほぼ同様です。機能訓練指導員としての作業療法士は、心理的リハビリや入浴・食事・読書・掃除などの動作の訓練、さらにはレクリエーションや創作活動なども、機能訓練に幅広くとりいれています。
5. あん摩マッサージ指圧師
意外なところでは、機能訓練指導員になれる資格としてはあん摩マッサージ指圧師もあり、肩こりや頭痛といった症状をあん摩やマッサージ・指圧などの手技でやわらげるという仕事です。
養成施設の卒業後国家試験に合格することで資格取得できるのは、ほかの資格と同じような手順になります。機能訓練指導員としてのあん摩マッサージ指圧師に求められる役割としては、手技により利用者がもつ身体の違和感を軽減させるというものです。
6. 柔道整復師
柔道整復師もまた、機能訓練指導員になれる資格のひとつですが、その役割はあん摩マッサージ指圧師と似たようなものといえます。本来は骨折・捻挫・打撲などを整復・固定の手技で治療するという仕事ですが、その技術をもちいることで利用者の身体をケアするという役割が期待されているのです。
学校・養成施設などの卒業でえられる受験資格にもとづき国家試験に合格する、というルートを通る必要があるのは、ほかの資格と同じような方法になります。
7. 鍼灸師
2018年から、人材不足気味の機能訓練指導員を確保するため、また人材を確保することで利用者の心身機能の維持を図るという理由から、鍼灸師も機能訓練指導員の対象資格になりました。鍼灸師もまた、専門学校や大学をはじめとした鍼灸の教育機関を卒業したあと、国家試験に合格して資格を取得することになります。
鍼灸師が機能訓練指導員として働く場合、ほかの資格と異なるのは、実務経験が必要なことです。介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)や要介護者向けの医療施設など、機能訓練指導員が在籍する施設で、半年以上の実務を経験することが求められています。
機能訓練は高齢者の生活の質向上を支援するもの
機能訓練は通所系介護サービスのデイサービス(通所介護)のなかでも、高齢者がより充実した生活を送るための機能の維持・向上をサポートするという非常に重要な役割があります。
もちろん機能訓練をおこなうスタッフとして機能訓練指導員も重責を担いますが、利用者の身体・生活機能が向上するのを目の当たりにできるのは、直接機能訓練に従事する立場としては大きな喜びです。
機能訓練指導員は、今後も引く手あまたな職業になることが見込まれます。人の生涯に不可欠なエッセンシャルワーカーのひとりとして、機能訓練指導員を目指してみてはいかがでしょうか。
参照元:
公益財団法人 日本看護協会 看護職を目指す方へ
厚生労働省 看護師国家試験の施行
公益社団法人 日本理学療法士協会 理学療法士になるには
厚生労働省 理学療法士国家試験の施行
一般社団法人 日本言語聴覚士協会 言語聴覚士とは
厚生労働省 日本言語聴覚士試験の施行
一般社団法人 日本作業療法士協会 作業療法士ってどんな仕事?
厚生労働省 作業療法士国家試験の施行
厚生労働省 あん摩マッサージ指圧師国家試験の施行
公益社団法人 全国柔道整復師学校協会
厚生労働省 柔道整復師国家試験の施行
公益社団法人 日本鍼灸師会 鍼灸の資格
厚生労働省 はり師国家試験の施行
厚生労働省 きゅう師国家試験の施行