訪問介護の計画書とは?目標の記入方法を例文を使って徹底解説!
訪問介護の仕事をするうえで、欠かせないもののひとつに訪問介護の計画書があります。しかし、どのようなものなのかを知っている方は、あまり多くないのではないでしょうか。
ここでは、訪問介護の計画書について、その目的や書き方、事例などをくわしく紹介します。これから訪問介護の仕事をしたいと希望されている方や訪問介護に興味のある方は、参考にしてみてくださいね。
訪問介護の計画書とは? どんな目的があるの?
訪問介護の計画書とは、訪問介護サービスを提供する際に提出する計画書のことで、利用者の希望やサービスの具体的な内容などが記載されている書類です。ここでは、訪問介護の計画書の作成者や内容などについて解説します。
誰が作成するの?|サービス提供責任者
介護保険の計画書を作成するのは、サービス提供責任者です。サービス提供責任者は、介護支援専門員(ケアマネジャー)が利用者の希望に沿って立てるケアプランにもとづいて、訪問介護の計画書を作成します。
そもそもサービス提供責任者とは、訪問介護サービスの現場で、介護支援専門員やヘルパーとの連絡や調整などのコーディネート業務をおこなうなど、サービスを利用者に提供できているかを管理する責任者のことです。
なお、サービス提供責任者は資格の名前ではなく、都道府県ごとに定められた条件を満たした方が担当する役割のことをいいます。
一方、介護支援専門員は、利用者のケアプランを作り、それが実施されるための調整をおこなう人のことです。利用者の希望や心身の状態に沿った介護サービスを受けることのできるよう、ケアプランを立て、介護施設や市町村、利用者の家族との連絡や調整もおこないます。
計画書の内容とは?|ケアプランにもとづいた具体的なサービスなど
訪問介護の計画書には、ケアプランにもとづいて、どのような介護サービスを提供するかといった具体的な内容が記載されます。その手順やどのような方法でサービスが提供されるかも、具体的に記載されるようになっているのです。介護サービスを提供する前に、その内容をチェックするための書類としても役立ちます。
どんな目的があるの?|利用者に必要な介護を提供する
訪問介護の計画書は、利用者の状況に合わせた介護サービスを継続して提供するために作成されます。計画書は作成者であるサービス提供責任者だけでなく、利用者やその家族、現場で介護サービスを提供する訪問介護員も見るものです。
目を通すことで、介護サービスの内容が利用者の状況に合ったものであるか、計画どおりの介護サービスが正しく提供されているか、目標を達成できるか、内容の見直しの必要の有無などについて確認ができます。利用者は目的意識を持つことができ、担当の訪問介護員は自分の仕事内容を見なおすきっかけにすることもできます。
介護サービスの連携にも役立つ
訪問介護の利用者は、複数の介護サービスを同時に利用していることもあります。そのような場合に計画書があると、それぞれの担当者が利用者の状況や介護サービスの内容などの情報を共有することが可能です。これにより、複数の施設が共通の目的を持って介護サービスを提供するために、とても役立ちます。
訪問介護計画書の目標
訪問介護計画書の記載項目には、利用者やその家族が目指す目標を把握し、短期と長期に分けて記載する必要があります。ここでは、短期目標と長期目標の詳細について紹介します。
短期目標
短期目標とは、解決すべき課題および、長期目標に対して段階的に対応しながら、解決に結びつける目標のことです。
緊急対応として、別途目標とは別のサービス提供を要するときは、一時的に目標内容が変わることもあります。緊急対応を目標の一つとして含めていないときは、短期目標は設定せず、緊急対応が落ち着いたときに改めて長期・短期それぞれの目標を見直し、記載します。
厚生労働省の資料によると、短期目標の期間には、『「長期目標」の達成のために踏むべき段階として設定した「短期目標」の達成期限を記載する』とあることから、要介護認定の有効期間を考慮しながら、長期目標の解決を目指して段階的に、1~3カ月程度で達成できる目標を記載しましょう。
なお、短期目標は解決が可能と見込まれるものでなければなりません。短期目標を記載するときは、利用者やそのご家族の意思を丁寧にヒアリングするよう努めましょう。
長期目標
長期目標とは、利用者やその家族が解決すべき課題に対して設定する項目のことです。ただし、解決すべき課題の短期解決が予想されるときや、いくつかの課題が解決されたうえではじめて達成できるようなときは、複数の長期目標を設定しても問題ありません。
厚生労働省の資料によると、長期目標の具体的な期間は『「生活全般の解決すべき課題(ニーズ)」をいつまでに、どのレベルまで解決するのかの期間を記載する』とあることから、要介護認定の有効期間を考慮しながら、6カ月~1年ほどの期間での達成を目安に設定しましょう。
訪問介護計画書の目標を書くときの例文
ここからは、訪問介護計画書の目標の書き方について紹介します。短期・長期それぞれ期間が異なるので、利用者やその家族からのヒアリングをもとに、達成できる目標を記載しましょう。
短期目標の例文
短期目標の記載方法は、長期目標達成にあわせて、どんな行動ができるようになるかを具体的に書くことが大切です。
そのような目的から、短期目標は以下のように記載しましょう。
長期目標が「自分で洗髪・洗身ができる」だった場合
・手の届く範囲は自分で洗うことができる
・自分ひとりで入浴までできる
・自分ひとりでできる入浴動作を増やす など
長期目標が「おしゃれをして買い物にでかける」だった場合
・定期的な外出を取り入れ、足腰の筋力を高める
・近くの公園まで歩いて行ける
・自分ひとりで車椅子で移動できる など
このように、あらかじめ設定した長期目標に沿うよう、段階的にいくつかの目標を決めることで、長期目標を達成しやすくなります。
なお、短期目標は1~3カ月程度の期間でできるようになることを記載することから、利用者にとってどんな行動ができるようになるとよいか、を具体的にイメージしながら決めることが大切です。
長期目標の例文
長期目標の記載方法は、6カ月~1年と比較的長い期間を設けて達成したい目標を記載します。
短期目標を決める前に決めておくことが大切ですから、利用者やその家族の希望を取り入れたり、現状を見据えたうえで設定しましょう。
たとえば、解決すべき課題が「ふらつきはあるが、屋外での移動を安全に行えるようになりたい」だった場合の目標例は以下のようになります。
長期目標の例
・家族旅行に行く
・ひとりで散歩にでかけられる
・ひとりでトイレに行けるようになる など
このような長期目標を立てると短期目標が決めやすくなります。例の解決すべき課題と長期目標だった場合、短期目標には以下のような課題が見えてくるでしょう。
短期目標の例
・リハビリをがんばり、今以上に筋力と体力をつける
・自分ひとりで公園まで歩けるようになる
・自力で排せつ・排せつ後の手洗いまでできる など
なお、長期目標は利用者の解決すべき課題に対して設定する必要があるため、今後のケアプランも見据えたうえで目標を立てましょう。
また、長期目標を立てて実行してみたものの、達成が難しそうと判断した場合や、利用者・家族からさらに異なる希望があった場合は、目標内容を見直し、再度設定してください。
訪問介護の計画書の書き方とは? ポイントを解説!
訪問介護の計画書は、利用者の方が介護サービスを円滑に受けることができるために作成されるものですが、どのように書かれるのでしょうか。ここでは、訪問介護の計画書の書き方について解説します。
書く前に押さえておきたいポイントとは?
訪問介護の計画書は、さまざまな方が目を通すことになるので、誰が見てもわかりやすい内容である必要があります。ここでは、訪問介護の計画書を書く前に押さえておきたいポイントについてチェックしておきましょう。
要点をわかりやすく簡潔に書く
計画書は要点をわかりやすく簡潔に書くために、5W1Hを意識することが大切です。「いつ・どこで・誰が・なにを・なぜ・どうするか」ということを意識して、簡潔にまとめましょう。そして、目標や介護サービスの内容を記載する際など、きわめて具体的な内容が求められます。
たとえば、ヘルパーが掃除の援助をする場合はどこの掃除をどのようにするのか、具体的に記載しておくことが重要です。どこの部屋に掃除機をかけ、水拭きをするのはどこか、トイレや浴室の掃除はするのかなどを明確にしておきましょう。
誰が読んでもわかるように|ヘルパー・ご家族など
訪問介護の計画書は、ヘルパーなどの介護関係者だけでなく、利用者やその家族も読むことになります。誰が読んでもわかりやすいようにしておくために、医療や介護の世界で使われる専門用語はできるだけ使わないようにしておきましょう。
記入漏れに注意する
訪問介護の計画書には、利用者の情報はもちろん、日常生活全般の状況、援助目標など、記載しなければならないことがたくさんあります。そのどれもがとても大切な項目なので、記入漏れがないよう注意するようにしてください。また、誤字脱字がないよう見直すようにしましょう。
利用者を支援する内容かを確認
利用者の体の機能の状態や家庭の状況などによって、援助の内容はそれぞれ異なります。誰にでも当てはまるような一般的な内容に終始するのではなく、ひとりひとりの実情に合った具体的な内容であるかどうかをしっかり確認するようにしましょう。
計画書にはどんな内容を書けばいいの? 事例を紹介
訪問介護の計画に記載する内容には、どのようなものがあるのでしょうか。ここでは、その書き方や具体的な事例を紹介します。
解決すべき課題
利用者がなにを解決すべきかを考えて、それを課題とします。このとき、どのような問題があるのかを具体的に記入しなければなりません。ここが漠然とした内容となっていては、これ以降の記載内容まであいまいになってしまうからです。具体的な事例には、以下のようなものがあります。
・歩行がむずかしいので、ひとりで外出することができない
・家事をひとりでおこなうことができない
・トイレに不安がある
援助目標|長期・短期
解決すべき課題に対して、どのような内容で援助するかを、具体的に長期と短期にわけて記載します。最終目標を長期の援助目標として、そこにいたるまでの段階的な目標を短期目標としましょう。具体的な事例には以下のようなものがあります。
≪長期≫
・付き添いなしでも不安を感じることなく外出できる
・ひとりで家事をこなすことができる
・ひとりでトイレに行って排せつできる
≪短期≫
・付き添いの支援を受けて、杖などを使って外出できる
・手伝ってもらいながら、家事をおこなえる
・リハビリパンツを使用ながら、周囲の声かけによって定期的にトイレに行けるようにする
本人や家族の希望
利用者やその家族の希望をありのままに記載しましょう。利用者側と介護サービスの提供者側との課題や目標がかけ離れたものとならないよう、事前に希望する内容をきちんと聞き取り調査して、そのままの内容を記入するようにしてください。具体的な事例には、以下のようなものがあります。
≪利用者≫
・行きたい場所は自分で行けるようになりたい
・自分のことは自分でできるようになりたい
・トイレにはひとりで行きたい
≪家族≫
・いつまでも父らしく自由に暮らしてほしい
・料理好きな母には、いつまでもおいしい食事を作ってほしい
・自宅で安全に暮らしてほしい
援助するサービスの具体的な内容
上述した内容に沿った形で、どのような介護サービスを提供するかを具体的に記載するようにしましょう。具体的な事例には、以下のようなものがあります。
・晴れた日は外出に付き添いますが、雨の日には買い物などがあったら代行します
・洗濯機は回しておいてもらい、晴れた日は2階のベランダへ、雨の日は1階の室内に干します
・リハビリパンツを使ってもらい、トイレまでの移動がスムーズにおこなえるように室内の環境を整え、声かけや見守りをします
利用者に関する大事な情報は簡潔にまとめるのではなく、具体的に、誰が読んでもわかりやすい文章で書くことを心がけましょう。
訪問介護計画書は利用者に合ったサービスを提供するために欠かせないもの
訪問介護の計画書は、利用者ひとりひとりの実情に合った介護サービスを、適切に提供し続けるために欠かせない書類です。この計画書によって、関係者に介護の現場での情報を共有することができ、具体的な介護の内容を確認することもできます。
作成するサービス提供責任者も、それに沿って介護サービスを提供するヘルパーも、とても大切なやりがいのある仕事です。就職や転職の際は、検討してみてはいかがでしょうか。