経営安定の秘訣は「リピーター」という考えを捨て「卒業させる」こと【もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事 Vol.31 整体院 和-KAZU- 迫田和也さん #2】
ヘルスケア業界のさまざまな職業にフォーカスして、その道で働くプロにお仕事の魅力や経験談を語っていただく『もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事』。前回に続き、YouTubeの整体系チャンネルで登録者数40万人超という人気整体師、迫田和也さんに、お話を伺っていきます。
前編では、迫田さんが開業するまでのエピソードをお聞きしました。接骨院での仕事に違和感を持ち、柔整師を辞めてフィリピンへボランティアに行った迫田さんは、学びたくても学べない子供たちの姿に触発され、整体術を極めることを決意。自分の手でしっかり施術ができると確信し、独立開業に至ります。
中編では、開業後の活動にフォーカス。開業後すぐに月売上300万円を実現した迫田さん。高い売上を実現できた理由は何だったのか、そして、現在力を入れているという技術セミナーの意義と、これからの展望をお伺いします。
教えてくれたのは…
「整体院 和-KAZU-」
院長 迫田和也さん
柔道整復師、筋膜ヨガインストラクター、プロフェッショナルファスティングマイスターの資格を持つ。整体院にて痛みの根本的な改善をサポートするかたわら、YouTubeチャンネル「Kazuya Sakoda」にて、整体のセルフケアやファスティングに関する動画を配信。チャンネル登録者数は41万人を超える。近著『10秒押すだけ!痛みを治す最強の整体 攻めるべきは「トリガーポイント」』他。
知ってもらう努力とターゲティングで、初月売上300万円超を達成
―開業後すぐに高い売上を実現されたようですが、開業前の顧客の存在が大きいですか?
元々いらしていた方は、ほんの一部ですね。新規の方の入り口としては、ホームページが多かったです。当時は、整体院で見やすいホームページを作っているところ自体が少なかったので、きちんとホームページを作るだけでも集客の効果はありました。
開業に当たり、別の先生から「知ってもらうための努力もしなきゃダメですよ」って言われたんです。施術には自信がありましたし、来てもらえれば何とでもなる。だから、広告やマーケティングの勉強をして、ホームページ作りやチラシのポスティングなども行いました。
―高い売上を実現できた理由は、何だと思いますか?
私の整体院は、1回1時間1万円の完全予約制で、マンションの一室という完全個室で行っています。開業当時は、そういう形態の整体院が少なかったので、タイミングがよかったというのもあると思います。
とくに、時間で動いている働く世代の方、1万円出してでも改善したい方、プライバシーを守りたい方が多くいました。「こういうところを探していたんだよね」という方が、すごく多かったですね。自宅で施術を行っていた時に感じたニーズから、現在の形態で開業しましたが、結果的によかったです。
お客様を「卒業させる」ことが、経営の安定につながる
―売り上げをキープし続ける秘訣は?
リピーターを増やす、という考え方はしないほうが良いです。ずっと来てもらうのではなく、「卒業させる」こと。
施術できちんと痛みを取るのはもちろん、どうしたら痛みが戻らないかをしっかり説明し、お客様自身でもケアできるようになっていただく。そして最終的に、来院は3カ月に1回、健診のような感覚で来るようにしていくのが理想。
それができて初めて、「ここに来てよかった」と思っていただけます。すると、周りにも紹介していただけるようになるんです。
―地元の整体院であれば、クチコミは重要ですよね。
そうですね。そのためには、ファンになっていただくことも大切です。
「卒業させる」というスタイルでやることで、お客様が満足してくれる。ファンになって通ってくれるし、さらに紹介もしてくれる。そうやって、経営は安定していくんです。
でも、そのためには技術力がないと始まらないですよね。ほとんどの整体師の方が、慢性痛を「治らないもの」と勘違いしているんですが、その原因は技術不足なんです。
だからまずは技術力をしっかり手に入れて、お客様に説明するスキルを勉強する。これは大前提ですね。
「世界から腰痛をなくす」をスローガンに、自身の技術を広めていく
―現在ご自身のなかで重要な位置づけをされているという、技術セミナーについて教えてください。
YouTubeを見た方から施術依頼の問い合わせがたくさん来るんですが、遠方の方もいらっしゃいますし、全員を私がみることも、定期的なメンテナンスを行うことも現実的じゃないんです。だから、全国に私の技術をきちんと再現できる先生を作れたらいいなと。
通常のセミナービジネスですと、半年に1回、大人数を集めてセミナーを行うことが多いんですが、私の場合はビジネスがメインではないので、週2回マンツーマンでセミナーを行っています。
初回でベーシックな導入編、2回目にまとめ的な内容をお伝えする感じですね。効率は悪いんですが、技術をきちんと伝えて、再現できるようになってもらいたいんです。
そうして認定院になった先生に、YouTubeからのお客様を紹介しています。去年で50院くらい広げられて、今年も100院くらいは増やせそうですね。感覚としては、週に1つ新店舗ができている感じです。
―迫田さんは、幅広い活動をされていますが、その原動力は何でしょうか?
日本から、世界から腰痛をなくしたいんです。最初は、地域の方の身体をよくしてあげたいという気持ちでこの仕事を始めましたが、いろいろ続けてきて、綺麗事じゃなく「世界から腰痛をなくす」と言えると、思えるようになりました。
YouTubeを通して全国からお客様が来てくれるようになり、仲間の先生たちも増えました。私の認知度さえ高くなっていけば、腰痛の人がとりあえず私のところに連絡をくれるようになり、全国にいる仲間の先生につなげられる。そうしたら、全国の腰痛を改善することにつながりますから。
―今後の展望としては?
今後メインにしていきたいのは、フィリピンに整体スクールを作ることです。
今年から一般の方向けにセルフケアのオンラインサロンを始めたんですが、その収益でフィリピンに整体スクールを作る計画をしています。フィリピンは出稼ぎ国家なので、そこで技術を教えてあげれば、自動的に世界中の痛みに悩む人たちを助けられるようになる。サロン会員の方たちにも、僕の夢をお話して、理解していただいた上で、会員になっていただいています。
会員の方たちが自分で身体をよくできるようになり、フィリピンの子たちを助けることにもなり、さらにはフィリピンの子たちが世界中の人を救っていく。そういうことが、実現できると思うし、できたら面白いなと今は思っていますね。
迫田和也さんが考える「整体師が成功するための3か条」
1. まずは技術がないと始まらない
2. 知ってもらう努力をする
3. お客様を卒業させることを考える
マーケティング的な視点により、開業当初から高い売り上げを実現してきた迫田さん。患者さんの「その後」まで考え、「整体院を卒業させること」で売り上げが安定する。遠回りに見えて一番効率的だという考え方に、ヘルスケア業界で成功する秘訣が感じられました。
次回後編では、チャンネル登録者40万人を超える迫田さんの、YouTube動画の作り方について、詳しく教えていただきます。
▽#3はこちら▽
整体系チャンネルNo.1迫田和也さん流、バズる動画の作り方【もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事 Vol.31 整体院 和-KAZU- 迫田和也さん #3】>>
取材・文:山本二季
撮影:高嶋佳代