「未来の幸せを創る」がパーパス。美容師のピークを50代、60代に変えていきたい【美容師 中澤俊夫さん】♯2
吉祥寺、国分寺、立川など、西東京エリアにてヘアサロン「shell」「tokute」、ネイルサロン「Ada」、ネイル+アイラッシュ併設型「sofa」など、計7店舗を展開する株式会社Link up。その代表を務めるのが中澤俊夫さんです。前編では中澤さんの独立前の経験について伺いました。
後編では、独立後のお話について伺います。売上や店長としての成果が評価され、FC店での独立のチャンスをつかんだ中澤さん。しかしさまざまな意思決定に時間がかかることなどを懸念し、最終的には自分で会社を立ち上げ、独立することを決意します。
その後オープンしたサロンは、中澤さんが美容師として歩んできたキャリアのなかで感じ続けてきた、業界の慣習への違和感や美容師の理想像を明確に反映した設計となったそうです。
お話を伺ったのは…
中澤俊夫さん
株式会社Link up 代表取締役社長
茨城県出身。小学生のときに通った美容室で、くせ毛を活かしたスタイリングをしてもらったことがきっかけで、美容師になることを決意。作新理容美容専門学院卒業後、東京の美容室を3社経験。2019年に独立し、株式会社Link upを開業。「shell吉祥寺店」を皮切りに、東京西部のエリアに多店舗展開を進め、現在は 「shell」、「tokute」(ヘア)、「Ada」(ネイル)、「sofa」(ネイル+アイラッシュ)など4ブランドで7店舗を運営。会社のパーパスである「未来の幸せを創る」を軸に、顧客第一はもちろん、スタッフが何歳になっても人生のピークを更新できるような環境づくりにも力を注いでいる。
美容室運営を通じて、「未来の幸せを創りたい」という思い

――独立をした理由は?
正直、独立については、最初はあまり考えていませんでした。しかし、3社目で店長を任され、その後さらなるキャリアアップを考えたとき、その会社では「FC店のオーナーになる」というのが事実上の最終ステージだったんです。今が挑戦するときなのかもしれないと思い、独立を考えるようになりました。
「FC店オーナーになるか、自分で一から立ち上げるか」と悩んだのですが、当時所属していたのがある程度規模のある会社だったため、意思決定は役員会を経ることや運営の制約があることも理解していました。
「もし制約が多いのであれば、自分でチャレンジしてみよう」と思い、そのことが独立のきっかけになったんです。
――サロンのコンセプトは、どのように決めましたか。
会社のパーパス(企業が存在する意義や社会的価値を明確にする概念)にしたのは「未来の幸せを創る」ということです。お客様はもちろん、スタッフ、スタッフの家族、関わってくれているステークホルダーの皆様の未来の幸せを創るために、美容業に向き合っていこうという意志を表しています。
美容師の仕事は労働集約型ビジネスであり、限られた施術時間と人手で成り立っています。だからこそ、スタッフがキャリアの選択肢を自分で選べるよう、店舗展開や新たなキャリアパスを増やしていくことが重要だと考えたのです。
――なぜ、そのようなことを考えたのですか?
私自身、長年この業界で働くなかで、美容師のキャリアゴールは多くの場合「独立」だけに制限されている現状に疑問を感じてきました。一般企業と比べて、進む方向性やキャリアパスが極端に少ない構造に少しずつ違和感を覚えていたんです。
「この状況を変えない限り、美容師が本当に幸せをつかむのは難しい」と考え、スタッフ自身がやりたいことを実現できる場所づくりを目指すことにしました。そのためにはまず、「吉祥寺を中心とした西東京エリア」にドミナント展開し、複数店舗による運営体制を整えることが最適だと判断し、現在の展開につながりました。
――なるほど。
一般的には「美容師人生のピークは40代」という話もありますが、僕は50代、60代になっても、生涯のピークと呼べる進化を続けられるような環境を提供したいと思いました。この会社では店長、マネージャーなどの管理職だけでなく、美容師の道を極めることや、教育に携わることも可能ですし、今後は講師業もできるようになればと考えています。またスタッフがやりたいことを応援し、「多様なキャリアパス」を創出したいと思っています。
独立から半年でコロナ禍を経験。焦らずに、今できることに集中

――スタッフの方の声から、具体的な制度が生まれた例はありますか?
はい。スタッフから「もっと学びの機会を」、「成長の場を」という声が出たことで、社内では月1回「リンクアップ大学」という勉強会を開催するようになりました。この日は全店舗を休業にしながら、全スタッフを出勤扱いにし外部講師を招いて研修を受けられるようにしています。
全店を休業するとなると、数百万円の売上の損失になるため、最初は勇気が要りましたが、この研修によってリピート率の向上 や新規客獲得にもつながり、結果的にいい循環が生まれたと思います。
――現在は7店舗を運運営しているそうですが、経営は順調に?
最大のピンチは、オープンから半年後に迎えたコロナ禍でした。2ヶ月ほどロックダウン期間となり、お客様がほとんど来ない状態が続きました。当時はまだスタッフが僕を含めて3人で規模は小さかったのですが、銀行からの借り入れをした状態で開業したばかりだったため、この先どうなるんだろうという不安がありました。
しかし先ほどもお話ししたように性格的にポジティブな部分があるので、今できることに全力を注げば、お客様はきっと戻ってくると信じて経営を続けました。
幸い美容業界はすぐにお客様が戻ってきたので、大惨事を避けることができましたし、開業から1年で2店舗目を出店することができました。その後はおかげさまでスタッフにも恵まれ、順調に経営が進んでいます。
仕事の痛みは「成長痛」

――今後の目標は?
将来的には会社をホールディングス化し、分社化なども視野に入れています。幹部メンバーにいつも共有しているのですが、僕が今これだけ会社経営に力を入れているのは、年齢を重ねておじいさんになっても、仲間と一緒に毎日チャレンジし続けたいという思いからなんです。
美容師のピークは40代などといわれますが、僕は年を取るごとに人生のピークを更新してきた実感があります。今後もそれを更新し続け、今年より来年、そして60代、70代になっても「これをやりたい」、「次はあれもやりたいよね」と話し合いながら、生き生きと人生を楽しんでいきたいです。
僕は個人プレーヤーとして動くよりも、スタッフがそれぞれの役割で成長し活躍する姿を見るほうがずっと好きです。だからこそ仕組みや環境を整えて、全員が輝ける組織を築いていきたいと思っています。
――中澤さんにとって、働くこととは?
僕にとって仕事とは、将来の自分を作っていく糧のようなものだと思っています。僕は自分の好きなことを仕事にしましたが、世の中に価値を提供できないまま、自分の満足だけで完結してしまうならそれは趣味と変わりません。誰かのためになること、世の中に価値を創り出すことに取り組むからこそ、仕事はただの「好きなこと」以上の意味を持つのではないでしょうか。そして誰かの役に立ち、居場所を作れる仕事をすれば、自分の未来も開けるはずです。
仕事で辛い思いをしたとしても、それは「成長痛」のようなもの。ずっと続くわけではないですし、その痛みがあることによってもしかしたら1年後、2年後にとても楽しい未来が待っているかもしれません。成果を手にしたとき、今までの苦労があったからこそよろこびを大きくしてくれると思います。
確かに、ひとりで苦しみを抱えるのは辛いかもしれません。でも、仲間がいれば悩みや未来を共有できます。理不尽な痛みを抱える必要はないけれど、成長につながる経験はぜひ積んでいきたいと思っています。
中澤さんのこれまでの歩みを通じて、その仕事観に触れられた今回の取材。仕事での苦労は、未来を切り拓く可能性を秘めていることを改めて実感しました。
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