薬剤師の将来は厳しい?需給バランスの変化と市場価値を高める方法

「薬剤師は将来、余るから仕事がなくなる」、「転職市場が厳しくなっていると聞いた」昨今、このようなニュースを目にして不安を感じている薬剤師の方も多いかもしれません。

国家資格さえあれば安泰と言われた時代から、少しずつ潮目が変わりつつあるのは事実です。

しかし、過度に恐れる必要はありません。市場の変化を正しく理解し、求められるスキルを整理すれば、むしろキャリアの選択肢を広げるチャンスにもなり得ます。

この記事では、現在の薬剤師市場のリアルな動向と、これからの時代を生き抜くための戦略について、具体的に紹介します。ご自身のキャリアを見つめ直す参考にしてください。

1. 市場動向を読み解く(需給・報酬・職場別の現在地)

1-1. 求人数の推移と地域差(都市/地方、沿線/郊外)

薬剤師の需給バランスを考える上で、まず押さえておきたいのが「地域による偏り」です。

厚生労働省の「薬剤師の需給推計」などの資料でも議論されている通り、将来的には薬剤師数が需要を上回る可能性があります。

しかし、これは全国一律の話ではありません。現在でも、都市部と地方では状況が大きく異なります。

参考  薬剤師の需要推計(厚生労働省)

都市部の人気エリアや、薬学部のある地域では充足傾向にあり、希望条件での転職が難しくなりつつあります。

一方で、地方やへき地では依然として深刻な人手不足が続いており、高待遇での募集も少なくありません。

1-2. 調剤報酬改定・M&A・薬局DXが雇用に与える影響

国の医療政策は、薬剤師の働き方にダイレクトに影響します。特に近年の調剤報酬改定では、「対物業務(調剤)」から「対人業務(服薬指導・管理)」への評価シフトが鮮明です。

>>令和6年調剤報酬改定の概要

また、大手チェーンによる中小薬局のM&A(合併・買収)も加速しています。「経営者が変わって方針が合わなくなった」という相談も増えているのが現状です。

さらに、電子処方箋や調剤ロボットなどのDX(デジタルトランスフォーメーション)も進んでおり、単純作業は機械化されつつあります。

【変化のポイント】

・報酬改定  「地域支援体制加算」や「連携強化加算」など、地域との連携や実績が評価される仕組みへ。

・M&A  経営統合により、店舗異動の可能性や評価制度の変更が起こりうる。

・DX化  ピッキングなどの単純業務ではなく、患者様とのコミュニケーション能力がより重視される。

これからの雇用を守るためには、こうした変化を「脅威」ではなく「付加価値を高める機会」と捉え直すことが大切です。

>> 内部リンク「勤務先の薬局が買収されたら?薬剤師が知っておくべきM&A後の待遇変化と対策」

2. 市場価値の高い薬剤師の条件

2-1. 面対応・在宅・多職種連携で臨床価値を出せる

かつては「正確に早く調剤するスキル」が最も重視されていましたが、現在は「患者様の生活背景まで踏み込める力」が求められています。

特に在宅医療のニーズは急増しており、医師やケアマネジャーと連携して、薬学的知見から提案できる薬剤師は市場価値が非常に高いです。薬局の中だけで完結する仕事から、外へ出ていく仕事への転換が求められています。

【評価されるアクション例】

・在宅訪問  単に薬を届けるだけでなく、残薬整理や副作用のモニタリング報告を行う。

・多職種連携  退院時カンファレンスへの参加や、担当者会議での発言。

・面対応  かかりつけ薬剤師として、特定の患者様を継続的にフォローする。

これらは履歴書でも強くアピールできるポイントですので、日々の業務で意識して取り組んでみましょう。

2-2. 疑義照会の質と処方提案力(医師への介入実績)

「形式的な疑義照会」だけではなく、「処方提案につながる疑義照会」ができるかどうかが問われています。

ポリファーマシー(多剤併用)の解消や、腎機能に応じた投与量設計など、医師に対してエビデンスに基づいた提案ができる薬剤師は、どの職場でも重宝されます。

【質の高い介入例】

・「残薬調整のため日数を減らします」ではなく、「コンプライアンス向上のために一包化や服用時点の変更を提案する」。

・検査値を基に、「腎機能低下が見られるため、減量または薬剤変更を検討いただけますでしょうか」と提案する。

こうした実績を積み重ねることは、ご自身の自信にもつながります。トレーシングレポート(服薬情報提供書)の作成件数なども、具体的なアピール材料になります。

2-3. 管理/数値管理・教育/OJTを回せるプレイングマネージャー

現場の業務だけでなく、店舗全体のマネジメントができる人材は常に不足しています。

薬局長や管理薬剤師として、在庫管理、スタッフのシフト調整、後輩の教育などを円滑に行えるスキルは、転職市場で大きな武器になります。特に、経営的な視点(利益管理や加算算定率の向上)を持てる方は、幹部候補としての採用も期待できます。

【マネジメント業務の例】

・数値管理  ジェネリック医薬品の使用割合や、地域支援体制加算の要件管理。

・人材教育  新人薬剤師の指導計画作成や、事務スタッフとの連携強化。

・在庫適正化  不動在庫の削減や、発注業務の効率化。

「管理職は大変そう」と敬遠されがちですが、その分待遇面でのリターンも大きいポジションです。

2-4. 高難度領域(がん/循環器/精神/小児)への対応経験

特定の領域に強みを持っていることも、差別化の大きな要因です。

総合病院の門前薬局などでは、がん化学療法や緩和ケア、難病などの高度な知識が必要とされる場面があります。こうした領域での実務経験は、専門性を求める医療機関や薬局への転職において大きな強みになります。

【専門性の活かし方】

・がん領域  外来がん治療認定薬剤師の取得や、レジメンの理解。

・在宅緩和ケア  麻薬の取り扱いや、疼痛コントロールの提案経験。

・小児科・精神科  患者様やご家族へのデリケートなコミュニケーションスキル。

ご自身の得意分野を一つ持っておくと、キャリアの安定性がぐっと高まります。

3. 採用に強い実務経験と資格の優先順位

3-1. すぐ効く経験:在宅導入・かかりつけ・管理薬剤師・面対応

転職活動において、採用担当者がまず見るのは「即戦力として何ができるか」です。

資格取得には時間がかかりますが、実務経験は今の職場ですぐに積み上げることができます。特に「在宅業務の立ち上げ経験」や「かかりつけ薬剤師の同意取得数」などは、今の薬局業界で選考で評価されやすいです。

【アピールしやすい経験例】

・在宅業務を一から立ち上げ、月◯件の訪問を軌道に乗せた経験。

・かかりつけ薬剤師として◯名の患者様を担当し、服薬アドヒアランスを向上させた。

・管理薬剤師として、店舗の年間売上を前年比◯%向上させた。

まずは今の環境で、こうした「数字で語れる実績」を作れないか検討してみてください。

3-2. 取得コスパの高い認定:優先順位と学習ロードマップ

資格は「あれば良い」というわけではなく、目指すキャリアによって優先順位が異なります。

まず「研修認定薬剤師」の維持が必要になることが多いです。その上で、実務に関連する認定を上乗せしていくのが効率的です。

【おすすめの資格ロードマップ】

1.研修認定薬剤師   まずはこれを切らさないことが最優先。

2.実務実習指導薬剤師   学生指導ができる点は、教育体制のある薬局で評価される。

3.外来がん治療認定薬剤師・緩和薬物療法認定薬剤師   専門性を高めたい場合におすすめ。

4.スポーツファーマシスト・漢方薬・生薬認定薬剤師   自身のブランディングや興味に合わせて。

やみくもに資格を取るのではなく、ご自身のキャリアプランに沿ったものを選びましょう。

4. ワークライフと負荷コントロール

4-1. 店舗配属/シフト設計で負荷を下げる(処方箋構成・ピーク平準化)

長く働き続けるためには、業務負荷のコントロールが不可欠です。

激務の店舗で疲弊してしまう前に、配属希望やシフトの相談をしてみましょう。例えば、処方箋枚数は多くても「処方内容が軽い(単科など)」店舗や、人員配置が厚い店舗など、環境によって負担感は全く違います。

【環境調整のヒント】

・店舗の選択   総合病院の門前だけでなく、医療モールの店舗や、地域密着型の店舗なども視野に入れる。

・人員配置   事務スタッフがピッキングや調剤補助を行っている店舗は、薬剤師の負担が軽減されやすい。

無理をして体調を崩しては元も子もありません。自分のキャパシティに合った環境を選ぶ勇気も必要です。

4-2. 時短・派遣・副業の使い分け(収入×安定性の最適点)

正社員のフルタイム勤務だけが正解ではありません。ライフステージに合わせて、雇用形態や働き方を組み合わせる発想が重要です。

派遣は依然として高めの時給が期待できますが、求人減少や地域差も出てきているため、「どこでもいつでも稼げる」とは考えず、安定性とのバランスを冷静に見る必要があります。

パートに副業(ライティング、講師、オンライン相談など)を組み合わせて収入源を分散させる選択肢もあります。

【働き方の組み合わせ例】

・子育て中   正社員の「時短勤務」制度を利用し、キャリアを途絶えさせない。

・収入重視   「派遣薬剤師」として、人手不足のエリアで高単価で働く。

・スキルアップ   「週4日勤務」にして、残りの時間を大学院通学や資格取得の勉強に充てる。


柔軟な働き方を選択することで、精神的な余裕も生まれるかもしれません。

5. キャリアオプション比較

5-1. 調剤薬局の生存戦略:DX/在宅強化/専門特化

調剤薬局でキャリアを積む場合、今後は「特徴のない薬局」から選ばれにくくなる可能性があります。

生き残る薬局の特徴は、DXによる効率化が進んでいるか、在宅医療に深く入り込んでいるか、あるいは「漢方」「不妊治療」などの専門領域に特化しているかのいずれかです。

【選ぶべき薬局の視点】

・健康サポート薬局   地域住民の健康相談窓口として機能しているか。

・専門医療機関連携薬局   がん等の特定領域で高度な対応ができるか。

将来性のある薬局に身を置くことが、ご自身のキャリアを守ることにつながります。

5-2. 病院薬剤師へのブリッジ:求められる経験と移行手順

「やっぱり病院で臨床をやりたい」という思いがある場合、年齢が上がるほど転職のハードルは高くなりますが、不可能ではありません。

中小規模の病院や、療養型病院、リハビリテーション病院などは、調剤薬局での経験(特に内服管理や持参薬鑑別)を評価してくれる場合があります。

【移行のためのステップ】

・調剤薬局時代に、注射薬や輸液に関する知識を独学や研修でアップデートしておく。

・給与が下がる可能性が高いことを理解し、許容範囲を決めておく。

・まずは「慢性期病院」などで経験を積み、そこから急性期を目指すルートも検討する。


熱意と準備があれば、道は開けます。


5-3. ドラッグストアのキャリア:数値責任と専門性の両立

ドラッグストア業界は成長を続けており、キャリアパスも豊富です。

店舗での接客・調剤だけでなく、エリアマネージャーやバイヤー、商品開発など、本部職への道も開かれています。ただし、売上目標などの数値責任はシビアな一面もあります。

【ドラッグストアの魅力】

・OTC医薬品の知識   セルフメディケーションの観点から、トータルな健康提案ができる。

・高収入   業界平均と比較しても給与水準が高い傾向にある。

ビジネス感覚を養いたい方には、非常に適した環境といえるでしょう。

5-4. 企業(DI/MR/治験/本部)の入口と要件

製薬企業やCRO(開発業務受託機関)などで働く企業薬剤師は、土日休みや福利厚生の良さから人気ですが、採用枠は非常に少ないのが現状です。

未経験から挑戦する場合は、CRA(臨床開発モニター)や、企業のDI(医薬品情報)担当、コールセンター業務などが入り口になりやすいです。

【企業への転職ポイント】

・英語力   読み書きレベルでもあると有利になることが多い。

・PCスキル   Word、Excel、PowerPointの実務スキルは必須。

・年齢   未経験採用は20代〜30代前半までがメインのターゲットになりやすい。

狭き門ですが、専門エージェントを通じて非公開求人を狙うのがセオリーです。

6. リスクと失敗回避

6-1. 過度な専門特化と汎用性欠如のリスク

専門性を高めることは大切ですが、あまりにニッチな領域に特化しすぎると、潰しが効かなくなるリスクもあります。

例えば、「特定の診療科の処方しか見たことがない」という状態が長く続くと、一般的な内科や小児科の対応ができず、転職の幅を狭めてしまう可能性があります。

【リスク回避の考え方】

・専門性を磨きつつも、一般的な薬物療法の知識は常にアップデートしておく。

・定期的に他の店舗に応援に行くなどして、異なる診療科に触れる機会を作る。

「T字型人材(広い知識+深い専門性)」を目指すのが理想的です。

6-2. ブラック兆候の早期発見(人員/在庫/残業/評価の不透明さ)

残念ながら、労働環境が過酷な「ブラック薬局」も存在します。入社してから後悔しないよう、事前の情報収集で危険信号をキャッチしましょう。

特に、常に求人を出している店舗や、管理者が頻繁に変わっている店舗は要注意です。

【注意すべきシグナル】

・在庫管理がずさん   必要な薬がない、期限切れが多いなどは管理不全の証拠。

・評価制度がない   昇給の基準が不明確で、経営者の「さじ加減」で決まる。

・挨拶がない   見学時にスタッフの表情が暗い、挨拶がない職場は人間関係に問題がある可能性も。

ご自身の直感を信じ、違和感があれば立ち止まって考えることが大切です。

7. まとめ

薬剤師を取り巻く環境は確かに変化しており、以前のように「資格があれば一生安泰」という単純な時代ではなくなりつつあります。しかし、それは「実力が正当に評価される時代」になったとも言えます。

・市場を知る   地域差や報酬改定の意図を理解する。

・価値を高める   対人業務、在宅、マネジメントなど求められるスキルを磨く。

・戦略を持つ   自分の強みを棚卸しし、適切な場所で発揮する。

これらを意識することで、厳しい市場の中でも、あなたらしく輝けるキャリアは必ず見つかります。

まずは今の業務の中で、「今日からできるプラスアルファ」を見つけることから始めてみてはいかがでしょうか。応援しています。

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この記事の監修者

原瑞希
薬剤師専任キャリアアドバイザー
薬剤師免許保有

【経歴・実績】
・ドラッグストアチェーンにて薬剤師として3年間従事
・2024年度 新人賞(銀賞)受賞

【プロフィール】
元薬剤師として現場の空気感やストレスを肌感覚で理解しているため、悩みへの深い共感が可能です。
求人紹介だけでなく、入社後の教育体制まで徹底確認して提案。生活の変化を具体的にシミュレーションし、不安のない転職を支えます。

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