等身大の自分を発信しクラファンで170万円の支援を獲得!「SHARE SALON grit.」代表・YOHEIさん
美容師以外にもフォトグラファー・ビデオグラファ―・パーソナルトレーナー・ラジオパーソナリティ、DJと6つの肩書きをもつYOHEIさん。前編ではどのようにして多様な働き方を実現してきたのかを伺いました。
ポイントとなっているのは、サロンワーク中のお客さまとのおしゃべり。悩みや困りごとを聞いたときに、自分が解決してあげられることが糸口となり職業を増やしてきたそうで、サロンワークがマーケティングと集客の場になっているそうです。また限られた時間のなかでも、それぞれの仕事のクオリティをあげるため勉強もかかさないというYOHEIさんに、どのように時間を作ったりモチベーションを維持しているかもお聞きしました。
後編では、YOHEIさんが昨年取り組んだ、シェアサロンのオープンについて伺います。初挑戦だったクラウドファンディングはサクセスこそしなかったものの、170万円近い資金を集めることができたそう。そのポイントは応援したいと思わせるような共感を集めることだといいます。
今回お話を伺ったのは…
YOHEIさん
美容師。「grit.HAIR+PHOTO」、「SHARE SALON grit.」代表
美容師以外にもフォトグラファー・ビデオグラファ―・パーソナルトレーナー・ラジオパーソナリティ、DJと6つの肩書きをもつ。
東京の美容専門学校を卒業後、有名サロンの就職試験を受けるもすべて落ち、美容師以外の仕事を1年半ほど経験したあと、地元福島に戻る。業務委託契約のお店でスタイリストデビュー。その後国内外のサロンで経験をつんで2017年に独立。「grit.HAIR+PHOTO」をオープンさせる。2021年7月にはクラウドファンディングで168万円の支援を受け、東北最大規模かつ最先端のトータルビューティシェアサロン「grit.」をオープン。
サロン経営の苦い経験からシェアサロンオープンへ!
──2021年7月にシェアサロン「grit.」をオープンさせていらっしゃいますが、1店舗目は通常の形のサロンでしたよね?なぜ2店舗目はシェアサロンという形にしたんでしょうか?
これは僕の苦い経験から考えたことなんです。1店舗目の「grit.HAIR+PHOTO」をオープンさせたとき、まだ経営者になりたてで頭に血が上ってる状態でした。さらに僕がそれまで働いていたお店は、東京の有名店で働いていたご夫婦が帰郷をきっかけに開いた、わりととがったお店で。そこで店長まで務めさせてもらったこともあり、失敗できないという思いも強かったんです。スタッフに熱い思いをぶつければきっと育ってくれると思ってしまい、目線をさげたり相手の思いを考えることができなくなっていたんです。そうしているうちにスタッフとの温度差ができてしまい、スタッフの出入りが激しい状態になってしまいました。
──なるほど…そこからシェアサロンの経営を思いついた、と。
はい。個人事業主との仕事になるので、スタッフを育てなければと力むこともなくなるでしょうし、同じ目線でお店を盛り上げていくことができるのではないかと。また福島にはまだあまりシェアサロンが普及していないこともあり、その流れを作っていきたいとも考えました。経営者だけが借金とリスクを背負って経営していくのは、これからの時代はなかなか難しいのではないかと思っています。
公開3日前に急遽追加した挫折した自分の姿。応援と共感がクラファン成功のコツ
──シェアサロンオープンにあたりクラファンをやろうと思った理由は?
クラファンにチャレンジすることで、この辺りではまだめずらしいフリーランス美容師としての働き方を美容師のみなさんにも知ってもらいたいという思いが強かったですね。さらにたまたま僕のお客さまにクラファンの伴走支援をする会社を経営している方がいて、その方に相談しやすいということもありました。
──クラファンの結果はどうだったんでしょうか?
目標金額の300万円に対して、170万円弱だったのでサクセスはできなかったのですが、89名もの方にご協力をいただいて本当に感謝しかないです。多くのお客さまからもご支援いただきましたし、何十年も会っていなかった友人がすごく熱いコメントとともに支援してくれたり。目標金額に届かなかったということを置いておいても、みなさんから応援していただくという何事にも代えがたい経験をすることができたと思っています。
シェアサロンは今年の7月1日に無事オープンしました。ヘアブース以外にもアイラッシュ、ネイル、脱毛ブースなどを備えたトータルビューティーサロン施設になっており、まだまだフリーランスとして一緒にお店を盛り上げてくれる方を募集中です。
──そんなにもたくさんの支援が集まった理由を、どう分析されていますか?
伴走支援の方からのアドバイスで、共感と応援の要素を文章に込められたことがよかったかなと思っています。クラファンページを見ていただくとわかると思うんですが、僕のかなり過去からの体験が書かれています。有名美容室への就職に失敗してフリーターとして生活したことや、スタイリストデビューした初月の売上が2万円だったことなど、挫折や失敗談がたくさん書いてあるんです。
実はこれ、クラファンページ公開の3日前にはなかった文章なんです。伴走支援の方から、僕が順風満帆な人生を送りすぎているように見えて、応援をしたい気持ちがわいてこないんじゃないかと指摘されて。今までの人生で挫折をしたことはないかと聞かれ、急遽付け足した文章です。
この文章に対して、周りの人からも大きな反響がありましたね。お客さまから「そんなに苦労してんたなんて知らなかった」と言われたり。今まで隠していたというわけではないのですが、やはりこうやって等身大の発信をしていくと、応援したいと思ってくださる人が増えるのかなと思いました。
目指すのは「grit.」ブランドでの世界進出
──シェアサロンのコンセプトを「自分らしく生きていくことを応援するシェアサロン」とされていますが、その理由は?
まずは働いているスタッフにとって、フリーランスという働き方が自分らしく生きられる一歩になると思っています。さらに自分らしく生きているスタッフの施術をうけることで、お客さまにとっても心地よくて、自分らしい「美しさ」が見つかったり、お客さま自身も自分らしい生き方について考えたりできるような場所にしていきたいという思いがあり、このようなコンセプトを掲げました。
──最後に、今後の目標を教えてください。
「grit.」というブランドで世界進出をしたいです。タイやカンボジアのようなアジアの発展途上国に、美容室や美容学校を展開できないかと考えています。壮大な目標ですけど、こうやって宣言して自分を追い込むことで、引っ込みがつかないようにして実現させていこうかなと思っています(笑)。
もう少し手前の目標で言えば、「grit.」をクリエイティブ集団にしていきたいな、と。フォトグラファーやWEBデザイナー、WEBエンジニアなど、さまざまなクリエイターを集めて、さまざまなことを発信できるプラットフォームにしていきたいと考えています。その第一歩として現在撮影スタジオを構想中で、年末年始ぐらいから始動できるのではないかと思っています。今後もどんどん活動の幅を広げていきたいですね。
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シェアサロンを成功させた3つのポイント
シェアサロンを成功させたポイントについて伺うと、以下の3つでした。
1. 過去の失敗から、スタッフと同じ目線に立てるシェアサロンの形式に目を向けた
2. クラウドファンディングを取り入れることで、オープン前から注目を集めた
3. 等身大の自分を発信することで、より多くの支援を集めた
YOHEIさんが口にした「世界進出」という言葉は、不思議と現実味をおびて聞こえました。それはこれまでもたくさんの不可能を可能にしてきた、YOHEIさんならではの説得力が感じられたからでしょう。これからもYOHEIさんと「grit.」の躍進から目が離せません。