企業で働く薬剤師の品質管理とは?仕事内容・年収・転職を徹底解説
ドラッグストアや調剤薬局、病院とは異なり、企業で働く「品質管理(QC)」という職種に興味を持っている方もいるかもしれません。
「実験や分析が好き」「医薬品の安全性を根幹から支えたい」と考える薬剤師にとって、企業の品質管理職は非常に魅力的な選択肢の一つです。
しかし、実際の業務内容や年収、求められるスキルについては、イメージしづらい部分も多いのではないでしょうか。
この記事では、企業における薬剤師の品質管理業務について、具体的な仕事内容から待遇、転職のポイントまでを詳しく解説します。
1. 薬剤師が企業で担う品質管理(QC)の役割
1-1. 品質管理の基本的な仕事内容
品質管理(QC)は規格適合を試験で確認する役割です。
製造所からの出荷可否判定は、試験結果や製造記録をもとに品質部門(品質保証機能を含む部門)が行うのが一般的です。
なお、製造販売業者として市場へ出荷する際の最終的な出荷判定は、製造販売業者側の品質保証部門が担います。
なぜ薬剤師がこの業務を担うのかというと、医薬品の特性や化学的な分析手法、薬機法などの専門知識が不可欠だからです。
「実験が好きだったけれど、仕事にするのは難しそう」と不安に感じる方もいるかもしれませんが、基本的には手順書に基づいた試験が中心となります。
具体的には、以下のような業務を行います。
原材料・資材の受入試験 工場に入荷した原料や包装資材が規格に合っているかを確認します。
製造工程内検査 製造の途中で、中間製品が正しく作られているかをチェックします。
最終製品の出荷試験 完成した医薬品が承認された規格(成分量、溶出性、純度など)を満たしているかを分析します。
これらの試験を通じて、患者さんの手元に届く医薬品の安全性を担保するのが品質管理の使命です。
まずは、基本的な分析機器(HPLCやGCなど)の扱いに慣れていくことが大切です。
1-2. GMP下における品質管理業務の流れ
医薬品の製造現場では、「GMP(Good Manufacturing Practice)」という厳格な製造管理・品質管理の基準を守ることが法律で義務付けられています。
品質管理の業務も、すべてこのGMPに基づいて行われます。
「法律用語が多くて難しそう」と感じるかもしれませんが、要点は「誰がやっても同じ品質の製品が作れるようにすること」と「不正やミスを防ぐ仕組みを作ること」です。
GMP省令では、適切な設備で製造することや、手順書通りに作業を行い、その記録を残すことが求められています。
具体的な業務フローとしては以下のようになります。
1.サンプリング(検体採取)製造ロットごとに試験用のサンプルを採取します。
2.試験・分析の実施 公定法(日本薬局方など)や社内規格に基づき試験を行います。
3.記録の作成・照査 試験結果を正確に記録し、ダブルチェックを行います。ここでわずかな数値のズレも見逃さないことが重要です。
4.逸脱・OOS(規格外)対応 もし規格を満たさない結果が出た場合、原因を究明し、再発防止策を検討します。
※OOS⁼規格外試験結果(定めた品質規格から外れた試験値)
日々の業務では、単に試験をするだけでなく、こうした記録や管理業務も大きなウェイトを占めます。GMPの理解を深めることは、品質管理として働く上での必須条件といえるでしょう。
参考:医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令の一部改正について(厚労省)
1-3. 品質管理(QC)と品質保証(QA)の違い
転職活動をする際、「品質管理(QC)」と「品質保証(QA)」の違いに悩む方も多いかもしれません。
どちらも品質に関わる重要な仕事ですが、その役割と視点には明確な違いがあります。
簡単に言えば、QCは「製品そのものを検査する現場の実働部隊」であり、QAは「品質を保証する仕組み全体を管理・監督する部門」です。
・品質管理(QC)
試験室でフラスコや分析機器を使い、製品のデータを測定します。「この製品は規格通りか?」を検証します。
・品質保証(QA)
QCが出したデータや製造記録を確認し、最終的に市場へ出荷して良いかを判定します。また、顧客からのクレーム対応や査察対応も行います。「この製造プロセスは正しいか?」を保証します。
QCで現場の知識を身につけてから、将来的にQAへキャリアチェンジするという道もあります。
まずは自分が「実験・分析」をしたいのか、「システム管理・保証」をしたいのかを考えてみるとよいでしょう。
2. 品質管理薬剤師が活躍できる企業・業界

2-1. 製薬会社・原薬メーカーでの品質管理
品質管理薬剤師の最も代表的な活躍の場は、新薬メーカーやジェネリック医薬品メーカー、そして原薬メーカーです。
「自分が開発に関わった薬を世に出したい」という思いを持つ方もいるでしょう。製薬会社では、自社製品の品質を守るという強い責任感を持って働くことができます。
特に原薬メーカーでは、医薬品の「効き目」のもととなる物質を扱うため、高度な化学知識や分析技術が求められる場面も多くあります。
こうした企業では、錠剤、注射剤、軟膏剤など、扱う剤形によって試験方法が異なります。
自分の興味のある分野や、大学時代に学んだ知識が活かせる企業を探してみるのがおすすめです。
2-2. CMO・CROなど製薬関連企業での役割
近年、製薬会社が製造や開発を外部に委託するケースが増えており、これに伴いCMO(医薬品製造受託機関)やCRO(医薬品開発受託機関)での求人も増加しています。
「製薬メーカー以外でも品質管理の仕事はあるの?」と疑問に思うかもしれませんが、CMOは製造のプロフェッショナルとして、様々なメーカーから依頼された製品を作ります。
そのため、多種多様な医薬品の分析に関われるのが特徴です。
CROは主に、治験がGCPに沿って適正に進むようモニタリングやデータ管理などの臨床開発支援を担います。治験薬(治験用製剤)の製造やGMP下の品質管理は、一般にCMO/CDMOなど製造受託側の領域です。
色々な種類の医薬品に触れ、幅広い分析スキルを磨きたい方にとっては、こうした受託企業は非常に成長できる環境といえるでしょう。
メーカーだけでなく、視野を広げて検討してみてください。
※CMO⁼医薬品の製造を請け負う会社、CRO=治験(臨床試験)の運営を請け負う会社
2-3. 企業規模による業務内容の違い
企業の規模によっても、品質管理薬剤師の働き方は異なります。大手企業の場合、業務が細分化されていることが一般的です。
「理化学試験担当」「微生物試験担当」のように担当が決まっており、一つの分野を深く極めることができます。
一方で、中小企業では、試験業務だけでなく、試験法の検討やバリデーション、時には薬事申請のサポートなど、幅広い業務を兼任することがあります。
「スペシャリストとして専門性を高めたい」なら大手、「全体を見渡せるジェネラリストになりたい」なら中小規模、というように、自分のキャリアプランに合わせて企業規模を選ぶとよいでしょう。
3. 企業品質管理で働く薬剤師の年収・待遇
3-1. 品質管理薬剤師の年収相場
企業への転職を考える際、やはり気になるのは年収ではないでしょうか。一般的に、品質管理職の年収は400万円〜600万円程度が相場とされています。
調剤薬局やドラッグストアと比較すると、初任給や若手時代の年収はやや低めに設定されている場合もあります。
しかし、企業の場合は昇給制度や役職手当が整っていることが多く、経験を積んで管理職になれば、年収800万円〜1000万円以上を目指すことも十分に可能です。
年収は企業の規模や収益力に大きく左右されます。目先の月収だけでなく、将来的な昇給カーブや賞与の実績なども確認しておきましょう。
>>薬剤師の年収は高い?相場・地域差・スキルで“高収入”を実現する完全ガイド
3-2. 福利厚生・働き方の特徴
企業で働く大きな魅力の一つが、充実した福利厚生と安定した働き方です。
「土日はしっかり休みたい」「家族との時間を大切にしたい」と考える方にとって、品質管理職は働きやすい環境といえます。
多くの企業が完全週休2日制(土日祝)を採用しており、ゴールデンウィークや年末年始などの長期休暇も取得しやすい傾向にあります。
また、住宅手当や家族手当、退職金制度などが整備されている企業も多く、長く安心して働ける環境が整っています。
ただし、工場勤務の場合は始業時間が早かったり、繁忙期には残業が発生したりすることもあるため、面接時に実際の勤務状況を確認しておくことをおすすめします。
4. 薬剤師が品質管理で働くメリット
4-1. 薬剤師資格を活かしたキャリア形成
品質管理の現場では、薬学の専門知識が直接的に活かされます。
分析機器の原理を理解したり、試験結果の化学的な意味を考察したりする場面で、薬剤師としてのバックグラウンドは大きな強みとなります。
また、医薬品製造所の「医薬品製造管理者」は、原則として薬剤師が求められます。(※薬剤師の確保が困難な場合などには、一定要件を満たす技術者で代替できる例外規定もあります。)
品質管理部門での経験を積み、将来的に製造所の責任者である製造管理者を目指すキャリアパスも描けます。
資格手当が出る企業も多く、専門職として評価されながらキャリアアップしていけるのは大きなメリットです。
4-2. 社会的意義と医薬品品質への貢献
品質管理の仕事は、医薬品の品質と安全性に関わる重要な工程です。
承認された規格どおりに製造されているかを確認することで、適切な状態で医療現場に届けられるよう支えています。
「自分の仕事が誰かの役に立っているか実感しにくい」と感じる場面もあるかもしれません。
しかし、品質管理は直接患者さんと接する機会は少ない一方で、試験や分析を通じて確認された医薬品が、安心して医療の現場で使われることにつながっています。
医薬品の品質を科学的に確認し、医療の安心を支えることができる点は、薬剤師ならではのやりがいです。
4-3. ワークライフバランスの取りやすさ
病院や店舗勤務のようなシフト制ではなく、基本的にはカレンダー通りの勤務体系であることもメリットです。
夜勤や急な休日出勤が少ないため、生活のリズムを整えやすく、プライベートの予定も立てやすくなります。
「趣味の時間を確保したい」「子育てと仕事を両立させたい」という方にとって、ワークライフバランスを取りやすい環境は大きな魅力でしょう。
オンとオフの切り替えをしっかり行いたい方に適しています。
5. 薬剤師が品質管理で感じやすいデメリット
5-1. ルーティンワークの多さ
品質管理の業務は、定められた手順どおりに試験を繰り返すことが基本です。
そのため、人によっては「毎日同じことの繰り返しで飽きてしまう」と感じることがあるかもしれません。
しかし、一見同じに見える試験でも、検体の状態や環境によって微妙な変化が生じることがあります。
そうした変化に気づき、データの裏側にある現象を読み解く面白さを見出すことができれば、ルーティンワークの中にも発見があります。単調な作業と捉えず、精度の追求と捉える姿勢への転換がポイントです。
5-2. 他部署との調整・コミュニケーション負荷
品質管理部門は、製造部門に対して厳しい指摘をしなければならない場面があります。
例えば、規格外の結果が出た際に製造ラインを止めたり、原因調査を依頼したりする必要があるからです。
「現場の人と言い争いたくない」と気後れしてしまうこともあるかもしれません。
しかし、これは「品質を守る」という共通の目的のためです。感情的な対立ではなく、データに基づいた論理的な説明を行い、協力して問題を解決していく姿勢が求められます。調整力やコミュニケーション能力を磨く良い機会とも言えるでしょう。
5-3. 工場勤務・出張が発生するケース
多くの製薬工場は、広大な敷地を必要とするため、郊外や地方に立地しています。そのため、勤務地が都心から離れていたり、マイカー通勤が必要になったりするケースがあります。
また、本社勤務であっても、定期的に工場へ出張したり、転勤が発生したりする可能性もゼロではありません。
「どうしても都会で働きたい」という方にはデメリットになるかもしれません。
一方で、自然豊かな環境で落ち着いて働けることや、地方ならではの生活コストの安さをメリットと感じる方もいます。事前に勤務地や転勤の有無をしっかり確認しておきましょう。
6. 品質管理に向いている薬剤師の特徴

6-1. 正確性と細部への注意力がある
品質管理で最も重要なのは「正確さ」です。試験操作の一つひとつ、数値の読み取り、記録への記入において、ミスなく正確に行えることが求められます。
「細かい作業が好き」「誤字脱字にはすぐ気づく方だ」という方は、品質管理の適性が高いといえます。
わずかな数値の異常や、普段と違う液色の変化などに気づける注意力は、トラブルを未然に防ぐための重要な才能です。
6-2. 分析・データ確認が苦にならない
仕事の大半は、分析機器と向き合い、出てきたデータを確認・解析する時間です。長時間集中してデータを読み解くことが苦にならない人が向いています。
大学の研究室で実験データとにらめっこしていた時間が楽しかった、という方にはうってつけの環境かもしれません。
論理的に物事を考え、結果から原因を推測することが好きな方は、その能力を存分に発揮できるでしょう。
6-3. 組織内で円滑に連携できる
品質管理は一人で黙々と作業するイメージがあるかもしれませんが、実際はチームワークが重要です。
試験の進捗を共有したり、トラブル時に他部署と連携したりする必要があるからです。
自分の意見を伝えるだけでなく、相手の立場や状況を理解し、円滑に業務を進められる協調性も大切です。
報告・連絡・相談(ホウレンソウ)をしっかりと行い、周囲と信頼関係を築ける方が活躍しています。
7. 未経験から企業の品質管理薬剤師になる方法
7-1. 求められるスキル・知識・資格
未経験から挑戦する場合、特別な資格は必須ではありませんが、以下のようなスキルや知識があると評価されやすくなります。
・機器分析の経験
学生時代にHPLC(高速液体クロマトグラフィー)やGC(ガスクロマトグラフィー)などの分析機器を使った経験があれば、大きなアピールポイントになります。
・英語力
医薬品の公定書やガイドラインには英語の文献も多く、外資系企業や海外展開している企業では英語の読み書き能力が重宝されます。TOEICのスコアなどを取得しておくといいでしょう。
・GMPの基礎知識
実務経験がなくても、GMPの概念について書籍などで予習しておくと、面接での志望度の高さをアピールできます。
7-2. 転職活動で押さえるべきポイント
品質管理職は人気があり、求人が出てもすぐに埋まってしまうことがあります。特に未経験可の求人は貴重ですので、こまめに情報をチェックすることが大切です。
転職活動では、「なぜ病院や薬局ではなく、企業の品質管理なのか」という志望動機を明確にしましょう。
「実験が好きだから」という理由だけでなく、「医薬品の品質を守ることで、より多くの患者さんに貢献したい」といった視点を盛り込むと説得力が増します。
また、企業独自の風土や求める人物像を把握するために、転職エージェントを活用するのも一つの手です。非公開求人を紹介してもらえることもあるため、幅広く情報を集めながら、自分に合った企業を見つけてください。
免責事項 本記事の情報は執筆時点のものです。求人状況や労働条件は企業や時期により異なりますので、最新の情報は各企業の採用ページや転職エージェント等でご確認ください。
薬剤師の仕事探しなら「ファーマキャリア」
企業の品質管理職は、専門的なスキルやワークライフバランスを重視する薬剤師にとって非常に魅力的な選択肢ですが、求人数が限られているため自分に合った職場を見つけるのは容易ではありません。
「これまでの分析経験を活かしたい」「未経験から挑戦できる企業を知りたい」とお考えの方は、プロのコンサルタントに相談してみてはいかがでしょうか。
そんなファーマキャリアの一番の特徴は「オーダーメイド求人」
その主なポイントは下記の通りです。
・薬剤師専門のコンサルタントが、希望条件を丁寧にヒアリング
・登録者が希望するエリア内で一番良い条件を提示できる可能性のある薬局・病院・ドラッグストアなどの求人をピックアップ
・希望条件に合うよう交渉を重ねてから登録者に提案
より希望内容に近い求人を提案することで、満足のいく転職ができるようサポートします。
監修者
原瑞希
薬剤師専任キャリアアドバイザー
薬剤師免許保有
【経歴・実績】
・ドラッグストアチェーンにて薬剤師として3年間従事
・2024年度 新人賞(銀賞)受賞
【プロフィール】
元薬剤師として現場の空気感やストレスを肌感覚で理解しているため、悩みへの深い共感が可能です。
求人紹介だけでなく、入社後の教育体制まで徹底確認して提案。生活の変化を具体的にシミュレーションし、不安のない転職を支えます。
.jpg?q=1)
.jpg?q=1)
.jpg?q=1)
.jpg?q=1)
.jpg?q=1)
.jpg?q=1)