誰もが活躍できるステージ作り、自分好みのサロンブランディングを両立【いつくし/そそ 才田とおるさん】#1

美容業界で働く上で「独立」という目標を持つ人は多いはず。そんな方へ成功している先輩オーナーの経験談を全2回でお届けします。

今回は、中目黒「いつくし」と馬喰横山「そそ」のオーナー兼ディレクターを務める才田とおるさんが登場。都内有名店で15年のキャリアを積んで独立後、プレイングオーナーとして男女問わずおしゃれな大人から絶大な人気を集めるサロンを経営しています。

前編となる今回は、才田さんが独立した経緯やサロンの構想、独立前にすべきことについてアドバイスをお聞きします。

お話を伺ったのは…
いつくし/そそ オーナー兼ディレクター 才田とおるさん

都内有名店1店舗を経て独立。2017年、中目黒に「いつくし」をオープン。2021年、東日本橋・馬喰町に2店舗目となる「そそ」をオープンする。業界誌、一般ファッション誌等の撮影、外部ヘアメイク、セミナー、コンテスト審査員等の活動も行なう。ショートやボブを得意とし、クリーンで上質なベーシックスタイルに、少しだけファッション性を含ませたヘアスタイルを提案している。

Instagram:@itsukushi_soso_saita

長く働いた人にもステージが用意されているサロンを作りたい

独立前からショート&ボブの技巧派として知られていた才田さん

――まずは独立の経緯を教えてください。

一番大きな理由は、「自分がサロンに残ることがベストではない」と感じたからでした。
僕が在籍していたサロンは入社当時、短いレングスが得意なサロンとしてずっと第一線で戦ってきている技巧派でした。でも僕がいた15年で、サロンの雰囲気がかなり変わって。若い世代を押し上げていくなかで、いろんな要素が盛り込まれていき、美容室というよりビューティーサロンになっていったんです。

僕はその当時、役職者だったので、その流れを抑え込むことができる立場でした。でも若い子たちにヒアリングをするなかで、「才田さんと同じブランディングでは、才田さん以上にはなっていけない。新しいフィールドを切り拓きたくて考えた結果なんです」と言われて。それで、「僕がずっとここに居座ると、若い子のブランディングを守ってあげられないのかもしれない」と感じたんです。

僕は後輩にすごく恵まれたと感じていたし、みんなの面倒を見てあげたいとも思っていたので、自分が残ることがベストなのか、逆に外からサポートすることがベストなのか、すごく悩みました。でも店舗展開も難しく、プレイヤーとして年齢を重ねていく環境も当時は整っていなかったので、残ることがベストではないという結論になりました。だから独立野心があったというよりは、調和をとった独立だったんです。

――そういった想いから独立されたことは、今のサロン運営にも活かされていますか?

「僕の2号を作りたくない」という気持ちはずっとあります
会社の仕事っていろいろあると思うんですけど、なかでも社員が働ける場所、輝ける場所を作っていくという仕事を怠りたくない。キャリアを重ねても、各々にステージが用意されているのが一番いいですよね。

だから店舗を増やしていく前提で、最初は個人事業主としてスタートしました。2店舗目につなぐためには、法人に変えてから2年間の免税期間を絶対に取りたいなと。人を雇用する以上は、店舗を増やせる準備はしておかなくてはならないと思っています。

あとはビューティーサロンにしたくないという気持ちもありますね。ビューティーの要素はボトムラインとして水準以上を担保しつつ、そこにファッションやカルチャーの要素を加えて、ビューティーの部分をえぐっていくようなかたちを作りたい。ファッションとカルチャーで勝負して、絶対に負けないようにしたいと思っています。

ファッションとカルチャーを融合したサロンブランディング

「そそ」の展示スペースの一角。サロン内ポップアップでの収益は作家さんにフルでバックしているため、会社の収益になっているわけではないそう。

――ファッションとカルチャーを重視されているとのことですが、サロン作りにあたってターゲットは決めましたか?

出店のときにベースとしたペルソナは、28歳の女性で、いろんな有名サロンを渡り歩いてきたけど、そろそろ絞りたいと思っている人。僕の実際のお客様は70代までいらっしゃるんですが、年齢層は高くてもお洒落な方で、「前に行っていた美容室、疲れちゃうんだよね」みたいな人が来てくれたらなと(笑)。

安定した技術と、ちょっとした刺激。習慣にしてもマンネリにならない環境を作りたいなというのは、サロン作りとしてあります。

――サロン内インスタレーションも特徴的だなと思います。

そうですね。内装ディスプレイが変わるサロンって楽しいじゃないですか。年間で大体4回、クールごとに展示が変わるので、従業員にとってもお客様にとっても刺激になればいいなと思ってやっています

またサロンプロデュースとしてカルチャーの要素でもあり、集客ツールという側面もあります。

サロン内に展示する作品は、売れそうなものを選ぶというよりは、自分たちが好きなものを選ぶようにしているんです。僕たちが素敵だなと思うものは、僕たちのお客様はもちろん、お客様になり得る人もそう感じるんじゃないかなと。だからサロンのお客様は、展示している作家さんの潜在的なファンでもあり得るし、その逆もあり得るんですよね。そこがリンクするところに発展したらいいなと思っているんです。

例えば僕がずっとビジュアルのヘアメイクを担当しているブランドがあるんですが、そのブランドを好きな方がクレジットを見て髪を切りに来てくれることもあります。逆に髪を切りに来たお客様が展示を見て、作品を購入することもありますから。

オーナーになるなら従業員が困らないための準備を

今でも前サロンの後輩たちから慕われている才田さん。 人を育てることへの愛情の深さが伺えます

――サロンを独立する前にしておくといいことは何でしょうか?

個人の売上にもよりますが、独立して会社を作って雇用するのであれば、「誰かを育てる」という経験はあったほうがいいと思います。育てることができない人間は、1人サロンやフリーランスをしたほうがいい。「この子を育てる」という愛情と気概とコミュニケーション能力は、組織を作るには必要だと思います。

またプレイングオーナーをするのであれば、数字面も見られる方がいいですよね。僕は退社を決めてから2年ほど在籍していたんですが、その間は毎週休日に税理士さんや社労士さん、会計士さんのセミナーに行って勉強しました。

オーナーが無知なのって罪だと思うんです。独立することが目標じゃなくて、良いオーナーになることが目標だと思うし、そうあって欲しい。従業員から「これどうしたらいいですか?」と聞かれたときに、「俺にもわからないよ」じゃなくて、答えられるくらいの勉強はしてから独立して欲しいなと思います。でないと従業員が困っちゃいますからね。


プレイングオーナーとして開業するための3か条

1.仕事が好きで好きでしょうがない

2.息抜きを覚えて余裕を持つ

3.周りにいる人を大切にする

開業する前から「自分の時間が欲しい」と思うなら1人サロンの方がいい。軌道に乗るまで歯を食いしばれるかは、仕事が好きで好きでしょうがないというテンションがないと、結構しんどいと思います。あとは、余裕がなさそうな人のところに人は集まらないので、息抜きを覚えることも大切。そして人を大切にすること。人を粗末にする人は、オーナーには向いていないと思います。

プレイヤーとしてサロンの売上を牽引しつつ、オーナーとして従業員みんなのことを考えた経営に取り組む才田さん。その想いは教育面にも表れています。次回後編では、そんな教育面のお話と、経営が軌道にのったきっかけについてお聞きします。

取材・文:山本二季
撮影:高嶋佳代

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Salon Data

そそ
住所:東京都中央区日本橋大伝馬町15-3
電話:03-5962-3930
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