地域密着ビジネスの場として選んだのが「辻堂」。アクセスの良さより大事なことは…【ASUNARO オーナー MASAさん】#1

観光の賑わいから離れ、地元民だけのスローな時間が流れる住宅地。そこに溶け込むように佇むパーソナルヘアサロン「ASUNARO」。オーナーのMASAさんが30歳になったタイミングで夫婦で独立し、藤沢市・辻堂にお店を構えたのは今から4年前。「駅からの距離が遠くても海辺の街では不利にならない」と話すMASAさん、アクセスとは別の基準で街選び・物件選びにこだわったのだそう。そこに開業の成功のカギが隠されていることがわかりました。

前編では、パーソナルヘアサロンを開業した経緯や、辻堂という街に出会うまでの道のり、コンセプト設定の大切さを教えていただきました。

教えてくれたのは

パーソナルヘアサロン ASUNARO オーナー・MASAさん

都内で約10年間働き、30歳の節目で結婚&独立。藤沢市・辻堂に移住し、同じく都内で働いていた奥様と一緒にパーソナルヘアサロンを2018年に開業。2021年4月に2号店を鵠沼海岸にオープン。現在は、両店舗を行き来しながらサロンワークをこなしている。

他テナントの雰囲気、周辺の景観。お店が建ったときの全体像をイメージして物件を決めた

取材当日、朝からサーフボードを引っさげた住人たちとすれ違うというTHE・湘南なひとコマに遭遇

――まず、これまでの経歴を教えてください。

最初は渋谷のメンズサロンで3年働きました。朝7時から深夜24時まで働き詰めで、休日は雑誌の撮影。めちゃ多忙でした(笑)。でも、長い美容師人生を考えたとき、メンズしか経験がないのは不安だなと思い、表参道のサロンに再就職することに。そこで幅広いノウハウや、お客様一人ひとりと向き合うことを教えてもらいました。8年間働かせていただきましたが、その間に自分が理想とする美容師像が固まったんです。

――なぜ独立を?

もともと30歳になったら独立すると決めていたんです。僕、わりと将来設計をきっちりするタイプで、実現が遅れそうだったら急いで間に合わせる、みたいな。30歳での独立に備えて着々と準備をしていたんです。結婚と同時に、同じく都内の美容室で働いていた妻と一緒に開業することに。

――パーソナルヘアサロンにしようと思われた理由は?

やっぱりお客様一人ひとりにしっかり時間を使って向き合いたいと思ったからです。大抵、忙しい日は同時に2〜3人のお客様を掛け持ちしたり、アシスタントに任せるじゃないですか。時間がないときは急いでやったり。カットもカラーも急いでやって良いことなんて一つもないし、美容師側の都合をお客様に押しつけることに歯痒さを感じていたんです。

――ご夫婦ともども都内でバリバリ働いていた中、なぜ湘南にお店を構えたのですか?

僕は静岡出身で、妻は山梨出身。湘南エリアには特にゆかりはなかったのですが、都内から車で1時間くらいだったので、よく遊びに来ていたんです。海もあるし、自然も豊か、街の雰囲気もカジュアルで。すぐイメージがつきました。4年前にオープンした当時からすでに世帯数や人口がどんどん増えていて、ビジネスをするにも最適だなと思ったんです。

確かに、都内でずっと働いていたなら都内で独立するのがセオリーかもしれません。でも、都内の美容室はもう飽和状態だったし、あの狭い土地に、美容室もそうですけど企業も密集しすぎだなって。10年磨き上げた技術を、都内以外の場所で発信するのも大事なのかなと思いました

――とはいえ、地方で売れるの?と不安に思う人も多いはずです。

都内だから必ずしも売れるわけではないんですよね。みんな先入観で「都内じゃなきゃ」という思考回路になってしまっていますが、美容やファッションの高感度層は地方にも必ずいますし、狙うべきところはたくさんあると思います。コンセプトさえしっかりしていれば怖くないです

――お話は戻りますが、湘南エリアの中でも鎌倉や七里ヶ浜、江ノ島エリアなどの有名どころの方が商売しやすそうなイメージですが、なぜ辻堂だったのですか?

ちょっと前まではメジャーなエリアにお店が集中していましたよね。僕も、辻堂を選ぶ前に実は鎌倉も視野に入れていました。しかし、鎌倉の物件を何回も見て回っているうちに、世帯数が少ないことに気づいて。日中のあの賑わいはほとんど観光客なんです。

観光客向けのビジネスなら良いかもしれませんが、都心以外の美容室の場合は地域密着のビジネスになると思うので、地域の人口がすごく大事になってくるんですね。そうなると、鎌倉は向かないなと

物件選びでは雰囲気重視

――HPのブログを拝見すると、物件探しや内装決めなど、かなりこだわっていたようですね。

物件探しではエリアの雰囲気を見たかったので、とにかく足を使い、実際に肌で感じるようにしていました。こだわりが強かったのでなかなか見つからなかったですけどね。申し込みまでしてやっぱりやめる、というのも何件かありましたし(笑)。結局、1年半くらいかかったかな。

――一番譲れなかったポイントは?

雰囲気です。必ずしも駅近でなくても良く、徒歩10分前後であればOKとしていました。それよりも、同じ建物に入っているテナントや、建物全体の雰囲気、目の前の道路の広さ、周辺環境など、お店が建ったときの全体像を考えて選びました

辻堂は急行が止まらない駅ですが、降りたときに視界が開けている感じが気持ち良くて。駅の雰囲気も気に入りました。

コンセプトをしっかり固めること。それができていればリピート率に困らない

今回取材させていただいたのは2021年にオープンした鵠沼海岸店。エントランスは自然光がたっぷり注がれ開放的で、奥の個室は中庭から柔らかい光が届き、どこか幻想的

――メニュー展開で意識したことはありますか?

美容室のメニューってデザインや長さによってプラス料金がかかったり、トリートメントは別とか、すごく複雑ですよね。それはお客様からしたら優しくないと思い、メニューはなるべくシンプルにまとめました。カットコース、パーマコース、集中ケアコースなど、トリートメントやヘッドスパ付きのフルコースを6つだけに絞り、料金も全部込み込みに。ロング料金もなし。わかりやすく、簡潔に、必要なものだけをやっていただくという形にしました。

――商材・薬剤もお客様の髪質に合わせたオーダーメイドなんですよね。

はい。使用するシャンプーやトリートメントは全部プライベートブランドとして一からつくったものです。独立する一年前くらいから打ち合わせをしていました。試作品は自分たちで試し、トリートメントに関しては5〜6回は改良を重ねたと思います。また、商品開発にあたり、髪の構成成分や割合などに特化した資格「ヘアケアマイスター」を全課程取得しました。

――0からのスタートということでしたが、オープン当初から来店数は安定していましたか?

はい、おかげさまで。大手のクーポンサイトで最初の1年間で一気に新規のお客様を呼び込み、そのあとはリピートで繋いできました。今ではリピート率90%です。

――リピート9割とはすごい。お客様の心を掴んで離さないための秘訣とは?

コンセプトをしっかり考えていたことですね。すごくホームページに凝り、内観もお洒落にしたとしても、言っていることが薄ければあまり刺さらないのかなと。お客様はたくさん来るけど、すぐ抜けていっちゃうと思うんです。

うちの場合は、「美容師がしっかり向き合ってくれるお店」を探して来店されるお客様がほとんどで、なぜうちを選んでくれたのかという目的が明確な方ばかり。こちらは毎日向き合って仕事をしていれば自然とお客様は居ついてくれるんです。だから、コンセプトの固め方、もしくは価値のつくり方っていうのはすごく大事だと思います。

地域性を踏まえた物件選びのコツ

1.実際に足を運び、街や駅の雰囲気を感じ取る

2.お店が立ったときの全体イメージを考え、周辺環境や他テナントもチェックする

3.世帯数や人口が多い街を選ぶ


都内から1時間弱離れただけで、ガラリと時間の流れ方が変わる湘南エリア。お客様が求める美容室スタイルも都内とは違うのかもしれません。ライフスタイルに重きを置くこの街で、MASAさんも働き方を見直すことに。お客様にとっても美容師にとっても優しい「一日3名」体制について、後編で詳しくお聞きします。

取材・文/佐藤咲稀(レ・キャトル)
撮影/喜多二三雄

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Salon Data

ASUNARO KUGENUMAKAIGAN
住所:神奈川県藤沢市鵠沼海岸4-20-18
電話:0466-47-9991
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