お客様と美容師を幸せにする「一日3名限定」。湘南ライフを楽しむパーソナルヘアサロン【ASUNARO オーナー MASAさん】#2
「ゆかりのない湘南で0からスタートするのはかけだった」と話すのは、パーソナルヘアサロン「ASUNARO」のオーナー・MASAさん。けれど、そんな不安は良い意味で裏切られ、オープン当初から今に至るまで経営は順調。一号店を辻堂に構えた4年前から現地の世帯数が増えはじめていたため「ビジネスのしやすい街だった」そうですが、揺るぎのないコンセプトと濃厚なお客様づきあいも大きく関係しているようです。
後編では、一日3名に限定にした狙いと、サロンが掲げる「美容師の地位向上」「給与水準の底上げ」について伺います。加えて、湘南の魅力にあてられ変化したMASAさんのライフスタイルにも注目。
教えてくれたのは
パーソナルヘアサロン ASUNARO オーナー・MASAさん
都内で約10年間働き、30歳の節目で結婚&独立。藤沢市・辻堂に移住し、同じく都内で働いていた奥様と一緒にパーソナルヘアサロンを2018年に開業。2021年4月に2号店を鵠沼海岸にオープン。現在は、両店舗を行き来しながらサロンワークをこなしている。
お客様への向き合い方と美容師の働き方。両方にとってプラスとなるよう「一日3名」に
――一日の予約数を3名にしたのにはどんな理由が?
営業時間が9〜18時なので、一人あたり3時間×3組が調度良いという計算なんですけど、他のサロンと比べると一人あたり結構時間をかけている方かもしれません。お客様にしっかり向き合い、カウンセリングもしっかり行うためにも3時間は絶対に必要だなと思ったんです。3名限定にしたのは、自分のパフォーマンスを一番出せる数が大体そのくらいだったから。それ以上こなすと疲れてしまうので。
あと、兼ねてから掲げていた「美容師の地位向上」と「給料水準の底上げ」も関係しています。
――そこにも意識を向けているんですね。
会社を立ち上げたらスタッフを雇うことを決めていたのですが、「美容師の地位向上」と「高水準の給料」は絶対に叶えたいと思っていたんです。ASUNAROに入ってくれた方にはそこでの苦労はさせたくないし、プライベートの時間もしっかり確保できる労働環境を整えたいなと。「高単価で一日3名のみ」にすれば、高い給与水準をキープでき、仕事終わりにたっぷり自分の好きなことができる。お客様への向き合い方と、美容師の働き方、双方を考えた上での「一日3名」なんです。
――お客様づきあいにおいては、都内との違いを感じていますか?
距離感が近いというか、濃い感じはしますね。この辺りの方々はめちゃフランクなんですよ。服装も、カジュアルだけどこだわりを持っている人が多いのでお洒落ですし。都内のサロンは、千葉や神奈川など色々なところから来店するため統一感がなく、多種多様なお客様に対応するのが大変。一方、ここでは地域住民の方の来店がほとんど。紹介もすごく多いですし、繋がっている感じがします。
あと嬉しいのが、東京だと直前キャンセルが多かったんですけど、今はほぼないです。年に1回あるかないかってくらいです。
――湘南エリアならではの難しさはありますか?
都内でやれていれば、こっちでだって上手くやれると思います。僕も都内での10年間があったおかげで、ここに来てから難しさを感じたことは特にありません。技術的にも都内の方が進んでいますからね。逆に、こっちから都内に行く方が難しいのかも。
だから、どんどんチャレンジして地方を盛り上げてほしいですね。地方に行くのが怖い、都内ブランドを捨てるのが怖い、と思っている人もいるかもしれませんが、全然怖がる必要なんてないですよ。
――この辺では趣味を充実させている方も多そうですよね。MASAさん自身、ライフスタイルも変わりましたか?
そうですね。ここは仕事と趣味を両立しやすい環境だなと思います。僕、移住5年目にしてやっとサーフィンをはじめたんですよ(笑)。湘南に来たからサーフィンをはじめるのっていかにもな感じがして抵抗があったのですが、休日をもっと充実させるために小さな意地は捨てようって。はじめてみると、やっぱり楽しいです(笑)。この辺は海も近くて、潮の香りがするし、夏はみんな花火してるし、夜8〜9時とかにビールを持って海に行くこともありますよ。そういう暮らしが気に入っています。
売れる仕組みづくりは万全。「素直さ」があれば月100万も実現可能
――スタッフ採用で大事にしていることはありますか?
一番は美容が大好きという気持ち。ストイックになれとは言わないけれど、美容が好きな人はどんどん突き詰めていくし、成長していくんですよね。もう一つが、素直さ。この二つが備わっていれば、あとはサロンがバックアップするので大丈夫です。
美容師個人に全部任せるという会社もたくさんありますが、僕はそれは違うと思っていて。コンセプトがしっかりしていて、ブランディング力が高いサロンであれば、スタッフも売上をつくりやすいと思うんです。うちのサロンでは売上をつくれる仕組みを確立していると自負しているので、0スタートでも1年で月100万円の売上も難しくありません。
ただ、屈折した子だとなかなか吸収できないので、そこは面接で人柄をしっかり見させていただいています。
――実際、ASUNAROでは若手スタイリストさんが一人活躍されていますね。
去年の4月に入社したCHISATOというスタッフなんですけど、入社当初はお客様0だったのに、今では月80〜90万円で安定しています。彼女、ものすごく素直なんですよ。スポンジのようにどんどん吸収してくれて。お客様も3時間みっちり話すわけなので、彼女の人柄の良さが伝わるんでしょうね。
あとちょっと乗ってくれば、うちの給与システム的に還元率が上がるので、もう少し頑張って欲しいかな。うちのサロンは還元率がすごく良いんです。おそらく普通の美容室とは桁違いだと思います。「美容師の地位向上」「給与水準の底上げ」がベースにありますからね。スタッフに早く成長してもらい、目指すはプロフェッショナル集団です。
――有名店や人気店に負けず、稼げるサロンなんですね。
人気店はたくさんのお客様を担当できると思うけど、歩合は低め。「稼げるかどうか」でサロンを探すなら、またちょっと思考を変えても良いかもしれません。
美容師の地位向上のためにも「良いものを安く売る」というのをやめたいですよね。1000円カットは世の中に絶対に必要です。問題なのは3000円くらいのカット。その値段でやっているサロンって値段以上に結構しっかり切ってくれるじゃないですか。それが美容師の地位や給与水準を下げてしまっているんじゃないかと思うんです。ある程度クオリティが高く、こだわりを持っているサロンはもっと単価を上げていってほしいですね。ASUNAROがその成功例になって、相乗効果で周りのサロンも上がっていけたら良いなって。
――現在、求人はかけていますか?
募集してはいるんですけど、HPとInstagramのみで、課金はしていません。求人サイトに載せるとすごい量の募集が来るじゃないですか。その全員と面接して、説明して…というのは今のマインドではなく、HPやInstagramを見てうちで働きたいと思ってくれた人を待っています。
パーソナルヘアサロンでバリバリ稼げるワケ
1.お客様にしっかり向き合え、美容師にとっても負担の少ない「一日3名限定」にしているから
2.紹介による地域のつながりを大事にしているから
3.ブランディングや集客など、スタッフが売上をつくりやすい仕組みをサロンで確立しているから
取材・文/佐藤咲稀(レ・キャトル)
撮影/喜多二三雄