徹底した目的意識とコスト感覚を武器に、目指すは50店舗・500人雇用!【株式会社One Bloom代表取締役・Lond Bloom 代表/津賀雅也さん】#2
ゲストは引き続き、株式会社One Bloom代表取締役社長・津賀雅也さんです。表参道から福岡へと拠点を移したのは2021年。わずか10ヵ月で「Lond Bloom」「Lond Le’a」の2店舗展開を果たし、猛スピードで会社を急成長させています。
後編では、スタッフへ実践したSNSコンサルの気になる内容や、高待遇を可能にするお店の仕組みについてお聞きしました。
お話を伺ったのは…
Lond Bloom 代表 津賀雅也さん
Lond表参道店デビュー初月に指名売上160万円を叩き出し、わずか2ヶ月でトップスタイリストへ昇格。10ヶ月後には副店長就任という異例のスピード昇進を果たす。2021年春、株式会社OneBloom代表取締役としてLondグループの九州展開をスタート。2022年6月、福岡天神エリアに早くも2店舗目をオープンした。
目的意識がなければSNS集客はうまくいかない
――SNSコンサルでは、スタッフさんへどんなアドバイスをされたのですか?
クリエイティブに走りすぎず、お客様目線のコンテンツ・見せ方で発信すること。あとは、SNSマーケティングの基本的な考え方を理解することですね。まずはペルソナを作成し、自分がアプローチしたいターゲットを明確化した上で、自分が設定したゴールにつながる運用を行う意識を持てと助言しました。
――具体的にはどのような手法がありますか?
表参道時代、失客のせいで売上低迷した僕にとって、SNS集客のゴールは指名率・再来率を上げることでした。そこで、30代後半〜40代の大人女性をターゲットに設定。この世代のお客様は、一度こちらを信頼してもらえるとリピートしてくださる方が多く、ゴールを達成しやすいと考えたからです。
目的と目標が決まれば、あとはターゲットに合わせて肉付けしていくだけ。例えば「SNS 最適な投稿時間」と検索すると、朝の通勤時間帯・夜○○時以降がベストとか、色んなセオリーが世の中にはあふれています。
でも最も肝心なのは、アプローチしたい対象のライフスタイルをよく考察し、自分流に変化させること。僕の場合は相手が主婦層のため、ゴールデンタイムとされる通勤時間は外し、家事育児が落ち着くお昼前後に投稿設定するなど工夫していました。
――津賀さんの成功体験があるからこその生きたアドバイスですね。
マーケティングに限らずですが、大切なのは「イメージする、相手の立場に立ってものを考える」ということです。目先の売上を上げたいからとか、上司にSNSやれって言われたからとかじゃなくて、なぜそれをするのか・自分自身がどんなスタイリストになりたいのかを常に思考の真ん中に置いて行動してほしいです。
徹底したコスト意識が魅力ある労働条件を可能に
――One Bloomでの働き方について教えてください。
うちでは正社員雇用を基本としています。社保完備、完全週休2日制、指名売上40%バックで働いてもらっています。
――都心ならともかく、地方では珍しい高待遇なのでは?
そうかもしれません。でもこれって、他業界では特に珍しくない一般的な待遇ですよね?それなのに、多くのサロン関係者がブラックな労働条件に慣れすぎていて「Lond Bloomはおかしい、ズルしてるはずだ」と捉えられてしまうのが悔しいです。
中にはお節介な方もいて、うちのスタッフに向かって「津賀くんは、キミの税金や保険なんて払っていないはずだよ」なんて根も葉もないことを言ってくるんですよ。いやいや、俺ちゃんと払ってるから!って声を大にして言いたい(苦笑)。
――魅力的な労働条件を実現できている秘密はどこにあるのでしょうか?
人件費以外の経費をどれだけ削れるかです。一番大きいのは家賃。儲けを出すための家賃比率は売上の10%未満が鉄則と言われますが、Lond Bloomでは約2%に抑えられています。この浮いた8%に加えて僕の役員報酬を下げることで、かなりの額をスタッフに還元できています。
――経費の観点で、スタッフさんに対しても意識を促していることはありますか?
コスト感覚を持って業務を行うことです。うちではカラー剤も1g単位で材料費を計上しています。スタッフが薬剤を調合中、少しでも多く感じたら「それ作りすぎじゃない?」と厳しくダメ出ししますよ。経験や勘に頼った「これくらいで良いだろう」じゃなくて、数字に基づいたルールを示し、確実に実践できる環境をつくることが大切です。
――儲かるための仕組みをしっかり構築されているのですね。
美容室は利益率が低いと嘆いているお店は、こういった仕組みの部分が曖昧なのかもしれませんね。さっきのカラー剤なんかは「面倒だ、細かすぎる」なんて反発を覚えるスタイリストもいるかもしれませんが、結局は小さいことの積み重ねが自分たちの給料を上げることにつながるんです。そうすれば、ゆくゆくは全員が経営という広い視野で物事を見られるようになり、スタッフ自身のキャリアプランにも良い影響を与えると思います。
――教育の重要性を実感します。
その通りです。ただ、セミナー活動などで僕がお店に立てない日も多く、細かい部分まで見てあげられないのが課題。そのため、会社として喫緊のテーマは幹部の育成です。店舗数もこれから続々と増やす予定なので、今いる子たちには早く育ってほしい。数字の面もしっかりと考えて行動できる人材に、お店をどんどん任せていきたいです。
人と人とのつながりが成功への道と信じて
――人材育成への理念などはありますか?
僕がいつも言うのが「後輩を幸せにできる人間になれ」ということ。何百万円の売上があっても自分勝手で人望に欠ける美容師と、売上はさほどでも後輩からめちゃくちゃ慕われている美容師がいたとしたら、絶対に後者を目指してほしい。
この間、店のグループLINEに「明日シャンプー練習します。よろしくお願いします」と新人がメッセージを送ってきたんですよ。でも他のスタッフたちは何も返信しないから、お前らそりゃないだろうって叱りました。若い子が勇気を出して発言したんだから、先輩は「頑張れ」のひと言でも返してあげないと。「変なこと言っちゃったかな」「練習したら迷惑かな」って、その子は余計なことを考えてしまいますよね。
自分自身の持つ影響力をよく理解し、相手の立場に立って想像してみれば、自分が取るべき行動はおのずと見えてくるはず。人、特に自分より立場が下の人間を大切にできないやつは大成しませんよ。
――津賀さんがそこまで「人」を大切にするのはなぜでしょうか?
僕はLondで社長や先輩方にお世話になったおかげで、ドン底だった人生が変わりました。その恩返しがしたくて、フランチャイズの道を選んだという経緯があります。小さな力かもしれないけれど、Londのさらなる成長に向けて尽力したい。そして今、僕を信じて、One Bloomのために頑張ってくれているスタッフがたくさんいます。
尊敬する人たちの夢のお手伝いをしながら、自分の夢もかなえて、次に誰かの夢をかなえてあげる。結局、この繰り返しの先に大きな成功があるのかなと。僕は僕の大好きな人たちみんなに物心両面の幸せを提供したいし、事業継続においてそれが最強の答えだと思っています。
――One Bloomの今後の展開を教えてください。
福岡天神の2店舗に続き、今夏には3店舗目を出店予定です。時機を見て、そのうち郊外へも進出していきます。今後10年間のうちに、九州エリアで50店舗展開・500人雇用がOne Bloomの目標。途方もない夢だと思われるかもしれませんが、絶対に叶えますよ。今、それを実現するための道を1歩1歩つくっている最中です。
津賀さん流!売上を出せるお店づくりの3つのポイント
1.教育
2.材料
3.風土
津賀さんのお話から感じられたのは、目標に向かって物事を着実に進めるシビアなビジネス感覚と、それに相反するような周囲の人々への愛情深さでした。このバランスの妙こそが、場所が変わっても彼が成功を収め続ける理由なのでしょう。津賀さんの大きな夢の実現を楽しみにしています!