表参道から福岡へ。人気スタイリストが選んだ地方独立という道【株式会社One Bloom代表取締役・Lond Bloom代表/津賀雅也さん】#1
表参道のトッププレイヤーとして、月400万円売上という驚異的な人気を誇っていたスタイリスト・津賀雅也さん。2021年株式会社One Bloom代表取締役へと就任し、福岡の天神エリアに「Lond Bloom」「Lond Le’a」をオープンしました。
人気スタイリストが独立するのは珍しくない話。けれど、誰もが羨むほど多くの顧客を置いて、彼はなぜ遠く九州へと拠点を移したのでしょうか。新天地でのサロン運営ってどうなの?現在の売上は?地方進出から1年経った今、たくさんの聞きたいことを抱えて迎えた今回のインタビュー。前後編に分けてお送りします!
お話を伺ったのは…
Lond Bloom 代表 津賀雅也さん
Lond表参道店でデビュー初月に指名売上160万円を叩き出し、わずか2ヶ月でトップスタイリストへ昇格。10ヶ月後には副店長就任という異例のスピード昇進を果たす。2021年春、株式会社OneBloom代表取締役としてLondグループの九州展開をスタート。2022年6月、福岡天神エリアに早くも2店舗目をオープンした。
デビュー初月で160万円!表参道のトッププレイヤーとして活躍
――まず、デビュー当時のお話を聞かせてください。
Lond銀座で2年間アシスタントを勤めた後、表参道店の出店に合わせてそちらへ異動し、スタイリストデビューしました。
アシスタント時代はそこまでSNSは一般的でなく、業務が終わったらモデルハントをする毎日でした。その甲斐あって、デビュー初月に160万円の売上を達成。けれど接客も技術もまだ未熟だった面があり、2ヶ月目以降は100万以下に低迷してしまいました。
――そこからどうやって巻き返したのですか?
指名率・再来率を上げたい一心で、それまで手付かずだったネット集客を始めたんです。オリジナルで考えた「#大人美人ショート」がインスタでバズり、新規のお客様が急増。その後は、毎月400万という数字を継続して出せるようになりました。
――多くの顧客を抱えながらも地方での独立という道を決断されたわけですが、新天地に福岡を選んだ理由は?
小さい頃から「社長になってお金持ちになりたい」という野望を持っていたんですよ(笑)。そのため、独立自体は自分の中で必然というか、美容師をはじめた頃から常に頭にあったことです。再スタートの土地に福岡を選んだのは自分の地元だから。実家が美容院をやっていることもあり、地元へ凱旋できたら親も喜ぶだろうという想いがありました。
フランチャイズを選んだ理由は理想を追求するため
――津賀さんが代表を務める2店舗は、Londのフランチャイズだと伺っています。
そうです。今回、フランチャイズという形の独立を選んだのには2つ理由があります。
1つは、Londという会社に対して大きな恩義を感じていたこと。当初は完全独立で会社を出ることを考えていました。でも、今までお世話になった先輩方に恩返ししたい。Londが実践する「スタッフ第一主義」の体制を美容業界のスタンダードにしたい。それらの気持ちがどうしても捨てられなくて。2つ目は、現実的な側面として、スケールメリットに大きな魅力があったためです。
――魅力的なメリットとは?
例えば商材は本部からの発注扱いになるため、仕入れ値が安く抑えられるし、地方の一個人店では手に入りづらい最新の商品も卸してもらえます。求人の際もLondのネームバリューは圧倒的ですしね。
運営コストを可能な限り低く抑え、その分の利益は給与としてスタッフに還元することが僕の目標。その理想の経営体制をオープン直後から実現するためには、フランチャイズが最良の選択だと考えました。
スタッフへのSNSコンサルで、最高のスタートダッシュ!
――オープンから間もなく1年ですが、初年度はいかがでしたか?
オープン初月にスタッフ4人で600万円、半年後の12月には8人で1,600万円売上を達成しました。また、この6月には、同じ福岡天神エリアに2店舗目を出店。当初は4人だけだったスタッフも、現在は春に新卒採用した3人を含め16人にまで増えています。
――素晴らしいですね!まったく地盤のない土地でその成果は驚きです。
みんなの頑張りのおかげで、お店全体は大成功といえます。でも、僕個人の結果だけを見ると、予想していたより少なかったなというのが本音。僕の初月の個人売上は約120万円で、100人くらいの新規のお客様に来ていただけましたが、正直もっと多いと思っていました。東京と福岡の違いを肌で感じましたね。
――どういった相違があると?
顧客となり得る母体数が大きく違うという点です。福岡で僕の技術に匹敵する人はいないという自負の元、技術だけで十分勝負できると踏んでいました。でも、少ないパイの奪い合うという、地方ならではの集客の難しさを読み切れておらず、見通しが甘かったなと。都心はライバルが多いとはいえ、お客様の総数もケタ違いです。東京はチャンスに恵まれた環境なのだと改めて実感させられました。
――津賀さんの志の高さを感じます。けれど他のスタッフさん達にとっては大躍進では?
地方では100万円プレイヤーすらなかなかいませんからね。移籍前は店長クラスで活躍していた1人も月200万いかないくらいだったし、他の子たちは20万前後の売上しか出せていなかったと聞いています。それが今では、月300万以上を叩き出すスタッフすらいるんですよ。
――皆さんが売上を急伸させることができた勝因は何でしょうか?
効果的なSNS運用ができるようになったことだと思います。
出店前、近隣エリアを中心に地方のサロンをリサーチしましたが、やはり都心に比べてSNSを上手に活かし切れていないなという印象を受けました。うちのオープニングスタッフも、移籍前のインスタフォロワーはせいぜい2,000や3,000程度でした。
そこで、オープン半年前からSNSの運用について僕がコンサルを行ったんです。コンサル開始から4ヶ月後には、フォロワー1万人以上へ成長させたスタッフも。それらが起爆剤となり、昨年12月の新規客は800名以上という大きな成果へとつながりました。みんなが僕のアドバイスを素直に吸収し実践してくれたおかげで、お店として最高のスタートが切れたと感謝しています。
2店舗目オープンの前日にインタビューへ応じてくれた津賀さん。会社の勢いそのもののパワフルな受け答えで、新店への期待も大きく膨らみました。
後編では、スタッフへ実践したSNSコンサルの気になる内容や、高待遇を可能にしているお店の仕組み・津賀さんの人材への価値観についてお聞きします。
取材・文/黒木絵美
撮影/米玉利朋子(G.P.FLAG)