長く美しい漆黒の髪。このトレードマークもセルフプロデュースのたまもの【AMATA 美香さん#2】
困難に向き合いながら成功を収めている経営者にその秘訣を伺うこの企画。前編に続いて、AMATAの代表であり、ビューティプロデューサーとしても活躍している美香さんにご登場いただきます。
異業種から美容業界に飛び込んだゆえのご苦労をはじめ、ハイクオリティなサロンを維持し続けるための心構えなどをご紹介しました。後編では引きも切らずマスコミに登場するようになったきっかけや人材を確保する難しさ、これから起業を考えている方へのアドバイスを伺います。
お話を伺ったのは
AMATA オーナー 美香さん
文化服装学院を卒業後、アパレルメーカーでファンションデザイナーとして活躍。2002年に大人のためのラグジュアリーなサロンAMATAを南青山に開設する。(社)日本毛髪科学協会 毛髪診断士®認定講師、JAPA認定 アーユルヴェーダー アドバイザーの資格を有し、その高い美意識からさまざまな分野で製品のプロデュースやコンサルタントとしても活動している。
AMATAの魅力を発信するために、美香さんご自身が広告塔になることを決意
――創業なさったとき、美香さんご自身が出版社を巡ったとか。
まずは自分から動かなければ何も起こりません。AMATAのお客さま層にあう雑誌の編集部を巡ってサロンのご説明をしました。
取材していただく機会があったら、次につなげるために美容のことや髪のケアにまつわる最新の情報をお話しして、また新しい企画で取材にいらしていただく。最初は本当にごくごく細かったご縁を広げていきました。
毛髪診断士として取材を受けるうちに、AMATAのオーナーとしての取材も受けるようになり、サロンがクローズアップされるようになりました。
――美香さんの美しい髪は何よりも説得力があります。
実はサロンを始めるまではレイヤーの入った茶髪だったんですよ(笑)。その当時セルフプロデュースという言葉が注目を集めていて、「髪をアイコンにしよう」と思い立ったのがきっかけです。2年近くかけて髪を伸ばし、ブルーブラックに染めました。ストレートの黒髪=美香と印象づけられれば…と思っていました。
――サロン発のライフスタイルブランドを扱っていることでも、マスコミの取材が多いですよね。
イタリアのオーガニックライフスタイルブランド、OWAYとはご縁があり2008年日本上陸時から私がアドバイザーを務めています。OWAYを「取り扱いたい」という企業やショップが多かったのですが、コンセプトやブランドの価値観を守ることが何よりも大事。販売経路を広げてブランドのイメージを傷つける、サロン専売のブランドとして大切に育てることを選びました。
1つのブランドが日本で成長していくのはとても喜ばしいことですし、光栄なこと。イタリアでOWAYの生産拠点を巡るなど、エキサイティングな経験は忘れられません。ここ3年はコロナで出張できないのが悲しいですね。
優秀な人材を確保する難しさはAMATAも同じ。ファンを見つけ出すことが大事
――人材の確保はどこも難しいようです。AMATAはいかがですか?
いい人材を確保するのは本当に難しいことですね。求人サイトを利用していますが、InstagramなどのSNSをチェックしてAMATAのファンを見いだすこともあります。
――AMATAのスタッフは社歴が長いですよね。
特に一緒にAMATAイズムを体現している2人のスタッフ、伸江とERIは私の誇りです。在籍19年になる2人は、まさに私の右腕と左腕(笑)。
常に新しいことに向かい、会社の新陳代謝をあげてマンネリにさせないことが大事ですよね。逆に言えば、いつもエキサイティングで社員が楽しめる環境をつくることが、経営者に求められていると思います。極論ですが、「この社員だったらどんな職業でも成功する!」という同じ方向に向かうことができる、団結力のある社風が必要だと思っています。
――AMATAには週に1回「美香亭」があるとか。
日曜の夜、スタッフのために手料理をふるまっています。日曜は営業が早く終わるのでこの時間を利用して技術の練習をするスタッフがいれば、家族と一緒に過ごすスタッフもいます。スタッフとその家族のために、髪と身体にいい栄養を考えたお弁当をつくっているんですよ。
美香亭を始めてから10年弱になります。スタッフも家族の皆さんも楽しみにしてくれているようで、止められないですね(笑)。
――AMATAはヘアサロンという枠組みにとらわれていないように感じます。起業するにあたって、身につけておくべき技術や能力はありますか?
何かしら専門分野の資格があるといいと思います。自分の知らない分野にこそ、ダイヤモンドのように光り輝く未来につながるものがあるかもしれません。固定概念は捨てて、どんなことにも果敢に取り組んではいかがでしょうか。
――起業をして成功させるには、どんなことが必要ですか?
まずはいい人材を確保すること。そのポジションのスペシャリストになるために育成することですね。それから流行に敏感であること。エイジ別のマーケティングや起業する内容のターゲットに関して徹底的に研究しておくこと。その上で他社が真似できないオリジナリティを追求することでしょうか。
――経営を続けることはすごく難しいことですよね。困難を乗り切るにはどうすればよいでしょうか?
ひと言、「タフネス」であることです。
どんなときでも明日はやってきます。人生には嬉しいことも多いですが、嫌なことも辛いことも容赦なく降りかかってきます。でも、嫌なことを考える時間こそがもったいない!次なる策を瞬時で考え、解決の方向に進むに限ります。敏感すぎて1つのことに振り回されないタフな自分でいることが大切です。
それから「好奇心」を持ち続けることも大事。考えをフレッシュにしてくれます。今の感情を大切にしつつ、「なるようにしかならない。大丈夫。その次」と思った瞬間から気がラクになるはず。自然の成り行きに任せることも、経営者にとって時には必要です。
私は常にポジティブシンキングにシフトして、いい風しか吹かないと信じています。
起業を成功させるための3つのポイント
1.メディアとのパイプをつくり常に情報を発信すること
2.ひとつの事業にこだわらず、よりよいものを意欲的に取り入れること
3.何ごともポジティブに考え、時には自然の成り行きに任せること
サロンはもちろん、ご自身のセルフプロデュースをも成功させてしまうほど美意識の高い美香さん。成功体験に裏打ちされた言葉のひとつひとつに重さがあります。インタビューの最後「ポジティブシンキングにシフトして、いい風しか吹かないと信じています」の言葉に、前向きになる勇気をもらえました。
撮影/森 浩司