お客さまと対等であるために。「More beaute」篠原まゆかさんのエステ経営論
高校在学中、約400社ものサロンに就活の問い合わせをして、夢だったエステティシャンの世界に飛び込んだという篠原まゆかさん。25歳で顧客0から独立し、現在では1ヶ月先まで予約で埋まる人気プライベートサロンになるまで経営を軌道に乗せています。
その美容に対する熱量は高く、自宅でできるセルフマッサージや痩せるための基礎知識を発信しているTwitterアカウントも好評。今回はエステ業界の固定観念にとらわれない、自由な発想の経営論について深堀りします！
今回お話を伺ったのは…
篠原まゆかさん
本気痩せ隠れ家サロン「More beaute（モアボーテ）」のオーナーエステティシャン。一人ひとりの体質、脂肪のつき方、生活スタイルといった状況に合わせてオーダーメイドで施術を提案する。「本当の太る原因」を導き出して持続可能な理想の体を作り出すプロフェッショナル。AEA上級認定エステティシャン、JEO認定エステティシャン、日本テステティック協会認定エステティシャン、AJESTHE認定衛生管理者、AJESTHE認定認定美肌エキスパート、日本痩身美容協会認定痩せる家庭教師インストラクターなど資格も多数。Twitterでは「痩せる家庭教師」としてさまざまな情報を発信中。現在のフォロワーは2.9万人。
Twitterで積極的に「本気痩せ」情報を発信。認知度を上げて信頼につなげる
エステティシャンになってから5年かけて体質を改善。15kg痩せたという篠原さん
――さっそくですが、Twitterでは「本気痩せ」に大切な情報を積極的に発信されていますよね。ここまで上手にSNSを活用されているエステティシャンは珍しいと思います。
Twitterでは普段お客さまにお伝えしている内容を、そのままつぶやいているだけなんです。例えば「水を飲んだら代謝が上がり痩せやすくなる」といったありきたりな内容なのですが、意外なほど大勢の方から反響をいただけています。
私が当たり前だと思っていたことが、必ずしも皆さまにとっての常識ではありません。極端な例ですが「なにも食べてないのに太ってしまう」というお客さまがいらして、詳しくお話をうかがうと「3食ラーメンを食べている」ということがありました。美容に対する意識も知識も人それぞれですから、基本的なこともしっかりお伝えする必要があると考えています。
――なるほど「痩せる家庭教師」というキャッチコピーにぴったりなお話でした。ちなみに現在はフォロワーが3万人近くいらっしゃいますが、そこから新規で訪れるお客さまも多いのでしょうか？
1ヶ月あたり5〜10名ほどのお問い合わせをいただきます。Twitterではサロンの宣伝を一切行なっていないこともありますが、それほど大きな集客効果はないですね。また、現在は1ヶ月先まで予約が埋まっている状況が続き、新規のお客さまへの対応が難しいという問題もあります。お客さまをお待たせしてしまうのが申し訳なくて、なかなか休暇も取れず……エステティシャンという仕事は大好きなのですが、最近では体力的な限界を感じはじめました。
現在の働き方を、どこかのタイミングでシフトチェンジする必要があります。その大きな方向転換の際に役立つのではないかと考えて、Twitterを運用している側面もあるんです。お客さまからのお話を伺う限り、美容情報をTwitterで収集している方は多いので「痩せる家庭教師」としての認知度アップにはつながっていると思います。
お客さまと一緒に楽しい未来予想図を描くためカウンセリングは欠かせない
篠原さんは「エステの効果だけで理想的な体型になることは難しい」と話す
――「本気痩せ」について、ご来店されたお客さまにはどのようなお話をしているのでしょう？
エステの施術自体はあくまでサポートであり、お客さまご自信の変化がなければ理想は実現できないことをお伝えしています。それでも食事制限や運動を勧める訳ではありません。大切なのは日常生活の質をワンランク上げること。本来であれば目標とする体型に徒歩で少しずつ近づいていくところを、私がお手伝いすることでタクシーでの快適な移動になる、そんなイメージですね。
――たしかに徒歩とタクシーでは大違いです。具体的には、どのような施術を行うのでしょうか？
お客さまにとって必要な施術はそれぞれ異なります。まずはお体の状況についてしっかりと計測を行い、ゴールとなる「どのような体型が理想なのか」と「現実的にはどうなのか」という2本の柱を共有することが重要です。そのうえでお客さまの体質、脂肪のつき方、生活スタイルなどお体の状況に合わせ、オーダーメイドで施術を提案しています。
私がエステサロンに大切だと考えているのは、こうしたお客さま体の状況をしっかりとご説明することが5割、施術内容が3割、楽しさが2割です。
そもそもエステは美容整形ではありません。いくら質が高くても1度の施術で体重を10kg減らすことは不可能です。絶大な効果がすぐに表れる訳ではないため、施術内容のみではリピート率や満足度に直結し難いと考えています。
――なるほど、だからこそカウンセリングが重要になるんですね。
そうですね。私の場合はパーソナルトレーナーをイメージしながら、カウンセリングを行うようにしています。ご来店いただく度に繰り返すのが、Twitterで発信している内容と同じく「日々の生活で楽しく痩せましょう」というアドバイスです。お客さまが1日を過ごす中で「お風呂に入っていない」とか「アイス食べようかな」など、ふと気が緩んだ瞬間に私の顔が浮かぶような、印象に残る会話を心がけています。
――実際にどれくらい効果があるのでしょうか？
理想とする体型など最終的なゴールは、お客さまの状況に合わせて無理なく柔軟に設定していますが、1ヶ月後くらいには目に見えて体型が変化するはずです。そうでないと継続してご利用いただけませんから。お客さまからは「こんなに何もしなくても痩せるんだ」「普通のことをしていたら痩せるんですね」といったご感想をよくいただきます。ダイエットは「窮屈で苦しいもの」「がんばらないといけないもの」というイメージがありますが、そうしたネガティブなものからお客さまを解放できるのが、このお仕事の醍醐味です。
コンサルティング業務も軌道に乗せ、少しずつエステ業界の印象を改善したい
コンサルティング業務ではカウンセリングや集客に関することだけでなくエステ機器の知識なども幅広くアドバイスできるそう
――さきほど「楽しさが2割」とおっしゃっていましたが、たしかに「本気痩せ」が楽しそうに感じてきました。
お客さまが1年かけてマイナス10kg、マイナス10cmと未来予想図に近づいていく体験を、私もご一緒できるのがすごく楽しいです！ そもそも私自身20代の頃は太っていて、肌も荒れていて、コンプレックスの塊だったので……だからこそ、お客さまのお悩みにも深い部分で共感できるのだと思っています。
コンプレックスと向き合うことは、お客さまの美意識やモチベーションを保つために必要です。その話題だけだとネガティブになってしまいがちですが、過去の恋愛などと絡めて、できるだけ楽しく、お客さまの未来予想図を描けるように心がけています。
――素晴らしい心がけだと思います。エステに抱いていたイメージが変わりました。
実は、私自身もエステ業界に対しては疑問を抱いています。新陳代謝が進んでいない部分が多く、20年以上前の古い考え方を振りかざす、現場のことがまるで分かっていない男性経営者も少なくありません。目先の経営だけしか考えず、接客や施術について目が向いていないように感じることも……どこかのタイミングで変わる必要があるのではないかと思っています。
――篠原さんは若手の独立を支援するコンサルティング業もしているとおっしゃっていましたね。そうした取り組みも、その一環なのでしょうか？
そうですね。ただ現状では、知人の紹介などを通して開業のお手伝いをする程度です。やはりエステ業界のコンサルティングって、どこか胡散臭いと思いませんか？ 実際にマルチ商法まがいのビジネスが横行していて、私としても信用できませんから。どのようにして、これから独立するエステティシャンと信頼関係を築くのか、これからの課題ですね。
――せっかくなので、独立を目指している方々に何かメッセージをいただけますか？
エステティシャンは「お客さまと対等な信頼関係を築く必要がある」と私は考えています。もう頭を下げて媚びを売るような時代ではありません。理想の体型というゴールを共に目指すパートナーとして、エステティシャン側にだってお客さまを選ぶ権利があるのではないでしょうか？
そのゴールをした先では「人生が変わった」「自分のことが好きになれた」というお客さまから嬉しい言葉もいただけます。そんな私たちにしかできない仕事を、私と同じように熱量をもって楽しみたいと考えている方がいれば、ぜひ一緒にがんばりましょう！
これからのエステサロン経営に大切な3つのポイント
今回の篠原さんから伺ったエピソードをまとめると、以下の3つの要素が重要であることが分かりました。
1.大きな方向転換を見据えつつ、たくさんの方に役立つ情報をSNSで発信！
2.パーソナルトレーナーのように、お客さまの生活の質そのものを改善
3.価値観を共有できる仲間を増やすため、新しいエステ経営論を普及
非常に苦労したため、無責任に独立はお勧めできないとのことですが「1年目は大変でしたが、今では大好きな美容業界で自由に生きていけるようになりました」とサロン経営について話す篠原さん。後編では、経営知識がないなか独立をした状況から、どのようにして成功をつかんだのかも詳しく伺っていきます。どうぞお楽しみに！
