モデルからヘアメイクへ転身。探し続けた「自分らしさ」の答えが私だけの武器に【トータルビジュアルプロデューサー MANAMIさん】#1

「見た目に関するすべてのプロデュース」を手がけるトータルビジュアルプロデューサー・MANAMIさん。モデル・タレントはもちろん、政治家、起業家、一般の方まで多くのクライアントを抱え、その人が「なりたい自分」に近付くための提案を行っています。

15歳でモデルデビューし、主に海外で活動。帰国後はヘアメイクアーティストとして活動していたという彼女。誰もが憧れる華やかなキャリアに見えますが、何度も挫折を繰り返し、もがき苦しんだからこそ、現在の活躍があります。

「私だけの強みとは?」誰よりも深く真摯に自分へと問い続けてきたMANAMIさん。前編では、モデルからヘアメイクへ転身するまでのストーリーと、ゼロからのスタートとなった日本での活動などをお聞きします。

MANAMI’S PROFILE

お名前
MANAMI
出身地
北海道
年齢
43歳
憧れの人
特にいない
プライベートの過ごし方
​​夫とドライブに行くか、家で漫画を読んだりアニメを見たり。警察24時や自衛隊の動画を観るのも大好きなオタクです。仕事以外何もできません!
仕事道具へのこだわりがあれば
コロナ禍で今まで以上に衛生面に気を遣うようにはなりましたが、できる限りエシカルなもの、サステイナブルなもの、ナチュラルなものを取り入れるようにしています。

スカウトを機に、15歳で海外モデルデビュー!

透明感あふれる凛としたオーラが美しいMANAMIさん。

――キャリアのスタートはファッションモデルだったと伺いました。

15歳の時、地元・札幌でスカウトされたのがきっかけです。

海外でのショー出演が決まっていたモデルが怪我で降板してしまい、事務所が必死で代役を探していた時に出会ったのが私でした。170センチの長身と中性的な雰囲気が目に留まったようです。数日間のウォーキングレッスンだけを受け、何が何だか分からないうちに現地へと連れていかれました。

――映画のようなシンデレラストーリーですね。

そう思いますよね(苦笑)。でも半ば観光気分のド素人ですから、現場に入ってからが大変でした。ひどい人種差別も受けたし、何よりプロ意識が足りず散々な結果で終わりました。

それでもモデルを続けようと思えたのは、努力すればちゃんと誰かに認められる世界だと感じたから。当時の私はいじめられっ子タイプで、学校では浮いた存在。飲食店などでアルバイトをしたこともあったけれど、不器用で要領が悪いため、続いた試しがありませんでした

自分はほかの人と比べて一般的な生活能力に欠けており、大人になっても普通の会社勤めは難しいんじゃないか。そう感じていたことも、モデルとして生きていくことを決めた大きな理由です。

――モデルのお仕事はどちらでされていたのですか?

初めてのショー以降も、海外での仕事の機会に多く恵まれました。高校卒業後は、台湾を拠点に本格的に活動をスタート。

とはいえ言葉も文化も分からない上に、特にコネがあったわけでもなく、インターネットも未発達な時代です。まずCDジャケットの裏面に書いてあった音楽会社に出向き、「モデル事務所を紹介して」とカタコトの中国語で交渉しました。そうやってエージェントを70社くらい回り、3社から合格をもらえたんです。

――ものすごいバイタリティですね!

勇気と行動力だけは人一倍で…(笑)。今考えると、学校生活に馴染めず苦労したのは、周りの目を気にすることなく我が道を突き進む、この一本槍な性格が原因の1つだったのかもなと思っています。けれど、自立心の強さが求められる海外では、それがかえって功を奏したのかもしれません

台湾でヘアメイクアーティストとして活躍するも、帰国後は…

――モデルからヘアメイクへ転身したきっかけは?

台湾での生活が長くなるにつれ、モデル仲間だけでなく、タレントや歌手からもメイクの仕事を頼まれるようになってきたんです。日本文化への憧れや「日本人はセンスが良い」というイメージがあったからだと思いますが、私の施したメイクは「可愛い!さすが!」と評判になりました。

その頃の私は20代半ば。年齢的にモデルを続けるのは厳しいなと感じ始めた時期でした。とはいえ「モデルで食えないから片手間でメイクか」と思われるのもシャクなので、28歳でモデルは完全引退し、ヘアメイクアーティストへ転身することに。しばらく台湾国内で活動した後、31歳の時に日本へ帰国しました。

――日本へ戻ってきた当初はいかがでしたか?

もう全然ダメで(苦笑)。そもそも、北海道からすぐ海外に行ってしまった私は、東京で仕事をしたことすらありません。メディア関係者どころか知人もゼロの環境からの再スタートでした

とにかく日本の業界を経験することが先決だと考え、アシスタントでいいからとヘアメイク事務所へ行ってみましたが、年齢と中途半端なキャリアが邪魔するんです。20代半ばの若いメイクさんが活躍する中、海外経験のある三十路の新人なんて扱いにくいという理由で門前払いされました

――それまでのキャリアがかえって障害になってしまったんですね。

やむなくフリーランスとして活動を始めましたが、知名度がないため依頼なんて来ません。背に腹は変えられず、当時流行中だったSNS「mixi」で募集されていた案件を片っ端から引き受けました。メディアの仕事に限らず、一般の方からの依頼もです。「横浜中華街でチャイナドレスを着て撮影したいから、それっぽいメイクをお願い」という案件もありました(笑)。

その状況が半年くらい続いたある日、中華圏のアーティストが来日することになり、中国語を話せるヘアメイクとしてオファーをいただきました。これをきっかけに、中国の著名人が関わる国内の案件は、ほぼ100%私が獲得するようになったんです

ただ、飯の種を心配しなくて良くなったとはいえ、中国人を相手にメイクをするだけでは、台湾にいた時とやっていることは同じ。日本人は誰も私のことを知らない…という状況に変わりありませんでした

メイク本発行で挫折を経験。改めて見つめ直した自分だけが持つ強み

――状況を打破するためにどうされたのですか?

自分のキャリアプランについてじっくりと考え直しました。この時、私が立てた中間目標は、◯◯年までにメイク本を出版するという具体的なもの

実現に向けてはまず知名度向上が必要だと、手始めにアメブロやTwitterでの情報発信に力を入れました。美容情報だけでなく、毎日の現場の様子もアップし続け、1日10回以上は更新していたかな。すると少しずつ、TVや雑誌、ショー、舞台など、自分の名前が表に出るような仕事が舞い込むようになりました。

――目標だったメイク本の出版は?

一度好循環が生まれてからは展開が早かったです。メイク本も想定していたよりずっと早くに手がけることができ、これまでに6冊を出版しました

――すごい!順風満帆!

それがそうでもなくて。2冊目のメイク本を出版する時に、新たな壁へと突き当たりました。

憧れだった出版社に自ら企画を持ち込んだんです。当時すでに他社で1冊目を刊行しており、雑誌連載を抱えるなど実績も積んでいたため、断られることはないだろうという目算がありました。けれど、企画書を読んだ編集者から「MANAMIさんじゃないと書けないことって何ですか?」と突き返されてしまいました

――それはショックでしたね。

目標を定めて以降、狙い通りに活動を展開できていた私は、どこか驕りがあったんでしょうね。自信満々で挑んだ結果あっさり否定されてしまい、意気消沈して寝込むほどでした。

その後は、1ヶ月間自宅に引きこもって「私らしさって何だろう?」と自問自答を重ねる毎日。自分自身を客観的に見つめることはすごく苦しい作業です。得意なこと、人から褒められたことはもちろん、今まで目を反らしてきた自分の弱さ・欠けている部分も徹底的に洗い出しました

――内省を重ねて得た気づきはどんなことだったのでしょうか?

たどり着いた私だけの武器は、「トレンドに流されない、その人らしいメイク術」でした。自分の素地をいかに輝かせ、他者と差別化できるかを追求してきたモデル時代の経験が、私のすべてのベースになっていると気が付いたんです。

そこで「個性や素材を最大限に活かしたメイク」をテーマに1から企画書を練り直し、再持ち込みしたところ、ようやくGOサインが!苦労して世に出したこの2冊目は、発行から10年経つ今も、メイクの基本書としてロングセラーを続けています。初めに忌憚なく大きなアドバイスを下さった編集担当の方には心から感謝しています。


インタビューを通して感じたのは、MANAMIさんの戦略的思考力の高さ。思いつきや気まぐれで行動するのではなく、目標に向かって筋道を立てて動くからこそ、どんな逆境をも跳ねのけることができたのでしょう。著書でも非常に理論的な表現でメイク法が紹介されており、多くの人が愛読し続ける理由も納得です。

後編では、ヘアメイクに限らない「見た目のすべてを整える」トータルビジュアルプロデューサーとしての活動について詳しくお聞きします。

お話を伺ったのは…
MANAMIさん

15歳よりモデルを始め、主に海外で活動。引退後はヘアメイクアーティストへと転身。現在はヘアメイクに限らず、ファッション、姿勢、ボディメイクなど「見た目に関するすべての教育とプロデュース」を手がける。
著書:「メイクの超基本テクニック」(マイナビ出版)など他5冊

取材・文/黒木絵美
撮影/米玉利朋子(G.P.FLAG)

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