高いリピート率はカウンセリングによる来店周期のコントロール。「髪屋こころ」代表・成田順一さん
成田順一さんは、「髪から関わり人生を豊かにする」を理念に掲げ、埼玉県内で「髪屋こころ」を展開しています。前編では、経営者として大切にしていることを伺いました。
後編では郊外にありながらリピート率が8割を超え、予約2か月待ちの人気サロンに成長した裏側を伺います。どのようにして集客し、リピーターにつなげているのでしょうか。
お話を伺ったのは・・・
成田順一さん。
株式会社Hair Life Plan代表。高校卒業後、「手に職を付けたい」との思いから美容師専門学校へ進学。美容師としてキャリアを積む中で、過酷な労働環境に限界を感じて自動車ディーラーへ転職する。さまざまな出会いを通して経営者を志すようになり、美容業界へカムバック。2018年に浦和美園に縮毛矯正＆髪質改善を得意とするヘアサロン「髪屋こころ」を開業、2022年には東川口に2号店をオープンした。完全マンツーマンスタイルで、お客さまに寄り添いつつ、スタッフが働きやすい環境づくりを実現している。
Instagram：@junichi.narita
Twitter：@natari00
カウンセリングを通じて、お客さまの来店周期をコントロール
マンツーマンで向き合い、お客さまの悩みにじっくり耳を傾けるのが「髪屋こころ」のスタイル
――「髪屋こころ」を縮毛矯正、髪質改善に特化したサロンにされたのは何か理由がありますか？
都内のサロンで働いていた頃、縮毛矯正で成功している美容師さんや人気サロンを見てきたからです。僕は人気サロンのやり方を見ながら、自分の店に合いそうなメニューやサービスを積極的に真似しているんです（笑）。
――お客さまのリピート率8割以上、予約2か月待ちとのことですが、どんな風にお客さまの定着につなげているのでしょうか？
当店では1人のお客さまに対してスタッフがマンツーマンで接客しています。お客さまの多くは、くせ毛など何らかのお悩みを抱えていることがほとんどですから、時間をかけてお話を聞きながら、一つひとつ不安やお悩みを解消していきます。
その上で、仕上がりの「一番良い状態」を保たせるためにはどれくらいの頻度で通うのがベストかをお伝えします。そうすると、自ずと来店する頻度が計算でき、その場で次回予約につなげることができます。
――なるほど、信頼を得ることと、次回予約が大きなカギを握っているんですね。
そうですね。忙しい方は特に、サロンに行くタイミングを逃したり、忘れたりしがちなので、来店周期のコントロールは、お客さまにとっても有益です。
信頼面という点では、金額についてもきちんとご説明をします。髪質改善や縮毛矯正のメニューはどうしても単価が高くなりますが、無駄をなくせば費用を抑えることは可能です。
例えば、当店ではカット○○円、パーマ○○円といった設定ではなく、すべてカットやトリートメントなどがセットになっているんですね。でも、長く伸ばしたい方にとってはカットは不要だったり、髪質によってはトリートメントが不要な方もいらっしゃいます。そんなときは、もちろん不要な施術はせず、その分の料金はいただきません。
目先の単価を上げるため無駄な施術をするのではなく、お客さまにとって良い状態を維持するためにどうすればいいかを常に考えています。
「お金は信頼を得てこそいただけるもの」とスタッフに徹底教育
公式HPでも施術例や店内の様子を紹介
――さらに、施術後15日間保証も付いているんですよね。お客さまにとっては融通が利いて、安心して通えるサロンですね。
「髪を美しくする」という結果を出すためには続けてきていただく必要がありますし、続けて来ていただくためには、何よりも安心感や信頼感が重要だと思うんです。ですから、スタッフにも「利益を追うのではなく、目の前にいるお客さまにとって100％必要だと確信したメニューだけを提案してください。少しでも迷ったら、提案しないでほしい」と伝えています。
お金は信頼との価値交換であり、価値に見合わないものを提供すればお金と引き換えに信頼を失ってしまう。そう説明をすると、スタッフも自分の仕事にプライドや責任感を持つようになります。
――人としての「心」の深い部分を大切にされているのですね。ひょっとして、店名にもそんな想いが込められていますか？
そうですね。当店では「髪から関わり人生を豊かにする」を理念に、お客さま、スタッフともに一生涯のお付き合いをするべくサロンワークを行っています。僕たちが提供するサービスは、美容師としての「技術」ではありますが、そこに「心」が入っていなければ、お客さまにもなぜ僕たちがこのメニューを提案するのか、伝わらないし、お金をいただく価値がないと思うんですね。
もう一つには、誰でも一度で覚えられる、わかりやすい名前にしたいという思いもありました（笑）。
横文字はカッコいいのですが、覚えてもらわなければ紹介にもつながらない。だから漢字も使わず、ひらがなで「こころ」と付けました。
美容以外にも事業展開し、スタッフに還元したい
老若男女、だれでも覚えやすいよう、店名はひらがなに
――確かに、覚えやすいお名前ですね！ 最後に、今後の目標について教えてください。
美容事業としては、ヘアサロンに限らず 10店舗までは増やしたいと思っています。
あとは、不動産や飲食店など、まったく違う事業での展開も考えていて、既に動きはじめているものもあります。
――なぜ、美容以外の事業に目をつけられたのでしょう？
近年、経営の多角化が注目されていますが、美容事業はどうしても利益率が低いんですね。だから、スタッフのお給料を上げることもできないし、労働環境は一向に良くならない。だったら、他で利益を上げればいいわけです。
これまではいかにサロンワークで売上を上げていくかを考えていましたが、今後は他の事業で得た収益を自分の生活資金に充て、美容事業による収益はすべてスタッフのお給料や、職場環境作りに還元していけたらと思っています。
また、これまでも時々セミナー講師やコンサルティングのご依頼をいただいていましたが、こちらもさらに本格的に取り組んでいきたいですね。
――サロンを経営される方にとって大きなヒントになりそうですね。
もともと僕は美容師としての志が低くて、いずれ経営者になるなんて思ってもいませんでした。美容師として理想の働き方をするために起業したのがはじまりでしたが、何かに縛られることがない分、自分で道を切り拓く楽しさも感じています。
その分、スタッフやお客さまに対する責任も大きいのですが、本当の意味でスタッフにとっても働きやすいサロン作りに力を入れていきたいと思っています。
髪屋こころがリピート集客を実現している3つのポイント
1.お客さまの悩みに寄り添い、「結果を出す」ことを目的に来店周期をコントロール
2.無駄な施術は行わない
3.サロンの基本理念を、スタッフ全員に徹底周知している
スタッフを雇用する上でも、お客さまと接する上でも、「目先の利益は追わない」という成田さん。これこそが「ホワイト経営」を実現し、多くのお客さまを惹きつけている理由ではないでしょうか。
「髪屋こころ」という店名からも、常に他者を思いやる温かい人柄が伝わります。これから独立、開業を考えている方はぜひ参考にしてみてください。
