スタッフもお客さまも幸せにできるサロン経営。「髪屋こころ」代表・成田順一さん

現在、埼玉県内に2店舗を展開する「髪屋こころ」の代表・成田順一さん。一度は美容師として働き続けることに限界を覚え、異業種へ転職した経験の持ち主です。

さまざまな経験を経て、現在、スタッフにとっては「自分らしく働き続けられるサロン」、お客さまにとっては「長く通いたいサロン」作りを実現しているといいます。

前編では、美容業界にカムバックし、起業することになったきっかけや、経営者として大切にしていることを伺います。

お話を伺ったのは・・・
成田順一さん。

株式会社Hair Life Plan代表。高校卒業後、「手に職を付けたい」との思いから美容師専門学校へ進学。美容師としてキャリアを積む中で、過酷な労働環境に限界を感じて自動車ディーラーへ転職する。さまざまな出会いを通して経営者を志すようになり、美容業界へカムバック。2018年に浦和美園に縮毛矯正&髪質改善を得意とするヘアサロン「髪屋こころ」を開業、2022年には東川口に2号店をオープンした。完全マンツーマンスタイルで、お客さまに寄り添いつつ、スタッフが働きやすい環境づくりを実現している。

Instagram:@junichi.narita

Twitter:@natari00

髪屋こころ

休む間もなく働き続けることが当たり前だと思っていたデビュー時代

成田さんが運営する「髪屋こころ」。落ち着いた和の雰囲気が大人世代に好評

――美容師として働いたのち、自動車ディーラーに転職されたとのことですが、これまでのご経歴を教えていただけますか?

専門学校卒業後、複数の店舗を展開する企業に就職したのですが、最初に働いたのがショッピングモールの中にある大型店舗です。場所柄、1日を通してお客さまが多くいらっしゃるので、休憩も取れないほど忙しい日々でした。

一方で、サロンワークがない日は、社内のスタイリスト育成スクールに通い、休みなく技術取得に専念し、入社2年目でスタイリストデビューしました

――毎日目まぐるしそうですね。

それが、スタイリストになった途端にお客さまが少ない路面店に異動になり、一気に暇になってしまったんです。せっかくデビューしても、お客さまが来なければ髪を切ることができませんから、仕事が楽しくなくて…。
いま思えば、あの頃の自分に対して「時間があるなら練習しろよ」と思いますが、相当サボっていましたね(苦笑)。

そんなときに、当時会社で売上1位だった方から、独立して新宿に新しいサロンを作るから一緒にやらないかと声をかけていただき転職しました。

――新天地を求めたのですね。転職されて環境は変わりましたか?

その店はマンツーマンサロンで、今で言うところの「業務委託契約」でした。ある意味最先端だったと思うのですが、何の保証もありません。交通費も出なければ、基本給もない、契約書すら交わさずに働いていました。

お客さまの髪に触れられる喜びはありましたが、カット&カラーで3900円と単価が安いため、収益を上げるにはとにかく数をこなさなければならなりません。場所柄、夜のお仕事の方も多くいらっしゃるので、朝から晩まで働いていましたね。

アシスタントもいない中、一度に2人のお客さまの施術をかけもちしたり、とにかく早く仕上げて、回転させることばかり考えていました。色々な職種の方と出会えて楽しかった反面、あの頃の自分は決して良い美容師ではなかったと思います

美容師として働くことに限界を覚え、異業種へ転職

写真は浦和美園店の店内の様子。センスのいい空間が話題を呼び、建築関連のメディアに取材されたことも

――とにかくがむしゃらに働くしかなかったんですね。

そうですね。あるとき、ふと自分は何のために働いているんだろう?と考えました。このままでは練習する時間も取れないから技術は向上しない。でも、休まず働かなければ稼ぐこともできない。何より、お金があっても使う暇がないんです。

こんな過酷な環境では働き続けることはできない、この業界はもう先がない。そう思い、まったく別の業界へ転職することを決めました

――大変な思いをされたんですね。転職先として自動車業界を選ばれたのは何か理由がありますか?

単純に、車が好きだったからなのですが、保険代理店の方とお仕事をする機会があったり、お金の流れを学ぶ機会にもなりました。

輸入車を扱っていたのですが、お客さまは富裕層の方々が中心なんですよね。それも、自分でお仕事をされている方が多い。その光景を見て、雇われる側のままでは、本当に稼ぐことはできないことに気づいて、起業を意識するようになりました

そこで自分にできることは何だろうと改めて考えたのですが、自動車業界では知識も経験も足りない。起業するなら、やはり長く経験してきた美容業界だろうという結論にたどり着きました

そもそも、働く環境に限界を感じて辞めたのであって、美容師の仕事そのものが嫌になったわけではありません。改めて美容師として独立するために勉強し直そうと、美容師に復帰しました。経営のノウハウを学ぶ目的でサロンに就職し、実際に独立したのは、4年後の2018年です。

満を持して独立。スタッフから信頼される「ホワイト経営」サロンを実現

信頼のおけるスタッフがいるからこそ、店を運営できると成田さんは繰り返す

――独立を決めたきっかけはなんだったのでしょうか?

労働環境や、給料面など色々な理由が重なりました。当時、僕はサロンとは別に自腹で個人のホームページを作って集客をしていたのですが、それを会社側は良く思わなかったようで…。

結婚して家庭を持ったことや、年に数回、腰痛で寝込んでしまうこともあったりと、健康面での影響も大きかったですね

――様々な経験を経ていま、経営者として最も大切にされていることはなんでしょう?

スタッフにとって「信頼できる経営者」になることです。残念ながら僕はこれまで、信頼できる経営者には出会えませんでした。

店長を任されていても経営状況までは把握できず、もらっている給料の金額は適正なのか、店にどれだけ利益が出ているのか、まったくわからなかった。だったら自分が経営者になるしかないと思ったのです。

――ご自身の経験からたどり着いた結論なのですね。そのためには、どんなことが必要ですか?

せっかくなら、長く働いてもらいたいので、まずはどんな働き方をしたいのか、何を大切にしているのか、面接の際にしっかり話を聞いて、それに対してこちらが対応できるかどうかを確認します。できないことがあれば、それももちろん伝える。働いてもらうために面接するというよりも、お互いの希望に合うかマッチングしている感覚ですね。

一人ひとり、希望する働き方や環境が違うので、いまはそれぞれのスタッフに合わせて勤務形態を変えています。

給与面では、最低保証金額は会社の利益を追わずに設定しています。正直、入店したばかりの頃は利益としてはマイナスになりますが、長く働き続けてもらえたら結局プラスになるんですよね

――ホワイト経営! すごく働きやすそうな現場ですね。

これも過去に失敗経験があるからこそ、たどり着いた答えです。そもそも、こんな小さなサロンで働きたいと思ってくれることに感謝しています

やっぱり、仕事がすべてじゃない思うんです。「家族との時間も大切にしたい」「キャリアを積みたい」など、それぞれ優先順位が違いますよね。そんな、一人一人の思いを大切にできるような職場環境を作れたらと思っています。

成田順一さんが「ホワイト経営」を実現している3つのポイント

1.かつて自身が美容師に限界を感じた経験から、働きやすい職場を追求している

2.スタッフを「雇う」のではなく、「マッチングする」という価値観を持っている

3.目先の利益は追わず、長期的な視点でスタッフやお客さまと関係を築いている

後編では、リピート率が8割を超え、予約2か月待ちという人気の裏側について伺います。
どのようにしてお客さまの心を掴んでいるのでしょうか。後半もお楽しみに!

1
2
求人数3万件!リジョブで求人を探してみる

Salon Data

髪屋こころ東川口店

住所:埼玉県川口市戸塚2-18-23グランディール東川口2 101
電話:048-229-5104
この記事をシェアする

編集部のおすすめ

関連記事