「路面店」は「広告」ほどの役割を果たす。物件探しで大事なことは…【アンリュミエール オーナー・保戸塚優美さん】#1

オフィス街と住宅街が同居する千代田区麹町。そこで15年続く老舗エステサロン「アンリュミエール」のオーナー・保戸塚優美さんにお話をお聞きします。開業時、「エステの聖地といえば…」という固定概念を取り払い、穴場の「麹町」に思い切って路面店を借りたそう。結果、その決断が功を奏し、「客層に恵まれた」と保戸塚さんは話します。

前編では、独立するまでの経緯、物件探しで意識したこと、HPづくりの重要性について教えていただきました。

教えてくれたのは…
「アンリュミエール」オーナー・保戸塚優美さん

大学卒業後、不動産関連の一般企業に就職。2年後に退職し、エステを学ぶためフランスの専門学校に入学。帰国後は一流ホテルに2年間勤務。2007年に独立し、同サロンをオープン。オリジナルメソッド「顔深筋マッサージ」が話題を呼び、数多くの女性たちが足を運ぶ。

OLを辞め、マッサージを学ぶためフランスへ留学

店内は雑貨屋のような可愛らしい雰囲気でした

――これまでの経歴を教えてください。

大学卒業後、就職氷河期だったこともあり、取りあえず内定をもらった一般企業に就職しました。ただ、2年目のときに会社が傾き、出勤しても毎日暇…という状況が続いて。会社員として、仕事がもらえないのはキツいじゃないですか。このままこの会社にいても自分のキャリアを積むことはできない。だったら自分のやりたい仕事に挑戦してみようと思い、フランスへ渡ったんです。

――なぜ海外でエステの勉強を?

OL時代、デスクワークによる肩こりがすごくしんどくて、よくエステや整体に通っていたんですね。人を癒す仕事も良いなと感じていました。

それと私、大学生の頃から海外で暮らしてみたいという漠然とした夢があって。それで、エステの本場・フランスでマッサージの勉強をしてみようかなと思ったんです。仕事を辞めて、4ヶ月ほど語学学校に通い、そのあとにフランスへ1年半ほど留学しました。

帰国後は一流ホテルに就職しました。

―――流ホテルは厳しそうなイメージですが、実際いかがでしたか?

OL時代に比べたら全然楽しかったです(笑)。私が配属されたサロンは外国人客が多かったので、一般的なエステサロンほど接客もガチガチではなく、少しゆるかったんです。

外国人の方ってすごく褒めてくれるんですよ。高級ホテルだったため、普段は会えないような客層を相手にすることも多くて。そういう方々にも喜んでいただけたことで自信がつきましたね。

この仕事って自信がなければできないと思うんです。技術はなかなか他と比較することができないですからね。だから、お客様からダイレクトに評価していただける環境で働くことができたのはすごく幸運でした

――なぜ独立を?

職場に不満があったわけではないんですが、フランス留学時代から独立したいなとは思っていて。2年ほど勤めた頃でしょうか。不動産会社を長年経営する知人に「独立するなら早い方が良い」と助言をいただき、大量の物件を紹介してくれたんです。

でも、こちらはそこまで本気で考えていなかったのでスルーしていたら、「やる気あるのか! せっかくアルバイトを雇って探し、200件くらいの中からやっと1件見つかるかくらいの優良物件を渡しているのに、君は全然見に行こうとしない」とお叱りをいただいて(笑)。まさかそこまでしていただいているとは思っていなかったので、そこから真剣に物件探しに行くようになりました。

20〜30件と物件を見て回るうちに、次第に「独立しよう」という気持ちが固まった感じです。それが27歳のとき。

働く女性も専業主婦もいる街だから、平日だけで集客できる

――銀座でも恵比寿でもなく、なぜ麹町にサロンを構えたのですか?

もちろん銀座や恵比寿、広尾、それ以外にも色々な街を見て回ったのですが、同じ街でも道一本入るだけで雰囲気がガラッと変わるんですよ。なので、あまり街の知名度やイメージに囚われずに探すようにしていました

麹町は世帯数も意外に多いですし、この辺に勤めている医者や経営者も多いんです。近くに半蔵門駅もあり、2駅からアクセスできるのもポイントが高かったです。

先ほどの不動産会社を経営する知人によると、「人の流れは朝と夜の両方見ておくと良い。エステサロンは女性が通う場所だから、夜道が危ないと通いづらいから」とアドバイスをいただき、時間帯ごとに実際に歩いて雰囲気を確かめました

――夜の雰囲気もチェックしておくことは大事ですよね。ちなみに、「路面店」を選んだのはなぜですか?

路面店ってやっぱり魅力的に見せてくれるんですよね。私も最初はマンションの一室でも良いと思っていたんです。「エステは部屋でやるから、どこだって一緒でしょ」と。でも、外からお店の様子が見えていると安心感も全然違うし、認知してもらいやすい。広告をかけなくても人が集まるんです

最初に小さく出していたら、ここまでお客様に恵まれなかっただろうなと。

――通りすがりのお客様が来店することも多いですか?

そうですね。店の前に置いていたチラシを見て来てくださった方もいます。今思うと、広告費に毎月10万円かけるより、家賃に10万円かけた方が良いんじゃないかなと。うちは、今はほとんど広告費をかけていないですよ。

――なるほど。どのみち広告費をかけるくらいなら、家賃が割高な路面店を借りるのも手ですね。ちなみに客層はいかがですか?

働く女性も専業主婦の方もバランス良くいらっしゃるため、平日でもわりと日中に予約が埋まっているんです。夜もそこまで遅い時間に予約は入りません。平日だけで集客ができているので、うちは日曜定休にしています。それも立地のおかげですね。

ホテル勤めをしていたときもそうでしたが、退社時間が22〜23時と遅かったり、土日に休みが取れないとなると結果的にスタッフは辞めちゃうんですよね。対してうちは、これまで何人ものスタッフと一緒に働いてきましたが、勤続年数7〜8年なので、比較的働きやすい環境だったかなと思います。

専門性の高いWEBページはSNSに勝る

――路面店とはいえ、集客には苦労しましたか?

順調だったのはオープン直後の3ヶ月だけで、そのあとが大変でしたね。

――そのときに一番効果を感じた集客ツールは何ですか?

HPです。外部セミナーに通ってHPづくりのノウハウをしっかり学んだのですか、その通りにつくってみたら本当に集客できるようになって。

――HPづくりで具体的にどんなことを意識したのでしょうか?

このサロンのウリである「顔深筋マッサージ」の専門ページをつくり込みました。どういう手技で、どういう効果があるのか、どんな悩みを抱えた人におすすめなのかを説明したんです。そうしたら、実際にお悩みを抱えている人の来店が増えまして。

――HPを読み込んで来てくれるお客様って本気度が高そうですね。

そうなんです。「安いから来た」よりも「悩みを改善したくて来た」の方がリピート率は高いですね

最近はSNS集客が一般的になり、「HPなんて見ない」と言われがちですが、悩みを抱えている人はきちんとネットで調べて来てくれる印象です。

――SNSはやらなかったのですか?

Instagramもやっていますが、初回来店される方は「ついでにInstagramも見たよ」というくらいで、ほとんどの方はHPをしっかり読み込んで来てくださる場合が多いですね。

私の場合は、SNSよりも専門性の高いページをWEB上につくった方が効果的でした

――逆にあまり効果のなかった集客ツールはありますか?

色々なサロンを集約したポータルサイトに掲載すると価格で比較されやすく、うちのようなサロンは不利になるんです。渋谷や新宿といったメジャーなエリアではないので、サイト内で検索もされにくくて。ポータルサイトのバナー広告にも何十万円の広告費をかけたこともありますが、全然来ませんでしたね(笑)。


オープン当初は色々な集客方法を試したそうですが、現在は広告費はゼロだと言います。そこにたどり着くまでにどんな葛藤や試行錯誤があったのか、後編でさらに詳しくお聞きします。

取材・文/佐藤咲稀(レ・キャトル)
撮影/喜多二三雄

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Salon Data

アンリュミエール
住所:東京都千代田区麹町3-12-6 麹町グリーンヒル1F
電話:03-6893-6893
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