面倒くさいことを面倒くさがらずにやる。それが集客の一番の近道【アンリュミエール オーナー・保戸塚優美さん】#2
前回に引き続き、「アンリュミエール」のオーナー・保戸塚優美さんにインタビュー。開業3年目までは集客に苦労し、たくさんの集客方法を試したそう。最終的に、専門性の高いHPによって悩みを抱えた人たちを呼び込み、その後は「アナログ式」なやり方で関係を繋いできました。
後編では、保戸塚さん流のリピーターを増やすコツ、「安くしない」「広告に頼らない」をポリシーとするコンサルティング、サロン経営者に必要なスキルについて教えていただきます。
教えてくれたのは…
「アンリュミエール」オーナー・保戸塚優美さん
大学卒業後、不動産関連の一般企業に就職。2年後に退職し、エステを学ぶためフランスの専門学校に入学。帰国後は一流ホテルに2年間勤務。2007年に独立し、同サロンをオープン。オリジナルメソッド「顔深筋マッサージ」が話題を呼び、数多くの女性たちが足を運ぶ。
アフターカウンセリングシートで来店後もケア
――集客が安定しだしたのは大体いつ頃でしょうか?
1年で効果が出はじめましたが、定着したのは3年後くらいからですね。その頃になってリピーターが8〜9割くらいに。
――リピーターが定着するまでに3年。地道に歩んでこられたのですね。
値下げをすれば新規客の予約がたくさん入りますが、そうするとリピーターの予約を入れられない。予約枠を埋めたい気持ちと、リピーターで回していきたいという気持ちのぶつかり合いでしたね。
あと、リピーターには正規の金額をいただいておきながら、新規客はクーポンで安くすることに対して罪悪感も感じていました。同じ技術を施しているのに評価が下がるような気がして、こちらもモチベーションが下がります。
結局、うちは「クーポンサイトで値引きをしない」と決め、開業当初からずっと守ってきました。
――15年続くサロンとなると、紹介客もやはり多いでしょうか?
多いかもしれませんが、すぐに紹介してくれるというわけではなかったです。1年ほど通って紹介してくださる方もいれば、3年通ったあとに紹介してくださる方も。ほんと、じわじわと増やしてきたという感じです。
「紹介で集客できるだろう」と踏んで開業したら意外に紹介してもらえなかった…という話も聞いたことがありますし、現実はそんなにハイペースではありません(笑)。
――リピーターを増やすために工夫してきたことはありますか?
アフターカウンセリングをしています。施術前はカウンセリングをするけど、施術後はお茶を飲んで帰るだけ…というサロンは多いと思います。しかし、うちでは施術後にその日の肌状態や体の不調部分などを踏まえながら「次回はこのコースが良いですよ」「何日後の来店がベストです」と伝えているんです。後日、サンキューレターと一緒にアフターカウンセリングシートをご自宅に郵送しています。
また、サロン通信のようなDMも定期的に発行していて、「期間限定メニュー」や「スタッフのオフショット」などを発信しています。文章もかなり長くて、つくるのが大変なんですけどね(笑)。「DMはいらないよ」という人もいるかもしれませんが、地道に続けてきて、第65回まで発行したところです。
コンサル業では、価格帯も下げず、広告サイトにも載せずに集客する方法を指導
――独立・開業を目指す人に対して、コンサル活動もされているようですね。
個人サロンの場合、自分一人でやっているとどうしても自己流になりがちです。しかし、小さなサロンであっても経営の土台はしっかり固めた方が良い。うちは、私の他はスタッフ一人だけですが、マニュアルをつくり、システマティックな経営をしてきました。
経営術をブログで発信していたら同業者にメールで相談されたり、施術を受けに来てくださる方が増えて。それだけ多くの人が相談してくれるなら…と思い、はじめました。
――保戸塚さんの指導方法の特徴とは?
価格帯を下げず、広告サイトにも載せずに集客する方法を教えています。自分がこれまでやってきたことを出し惜しみせずお伝えするのが私のポリシー。
サロン経営の経験を持たず、コンサル業だけしている人の場合は結果まで責任を持つことは難しいですよね。しかし、私はSEO対策の勉強にお金を払ったり、あらゆる広告を試したり、トライ&エラーを繰り返し、結果の出たやり方だけをみなさんにお伝えしています。
「こういうサイトに載せると効率良いよ」と安易なことは言いません。自分の強みや店の強みをきちんと考えてもらい、それをHPやブログに5000文字くらいで書いてもらうこともあります。地味なやり方なので抵抗を持つ人も多いですけどね(笑)。ですが、私ならはじめから5000文字で集客できるとわかっていたら最初から飛びついていたと思います。私の指導のコンセプトは「面倒くさいことを面倒くさがらずにやる」ことです。
施術の準備をきちんとする人にはリピーターもつく
――スタッフさんが働きやすいように取り組んできたことはありますか?
日曜休みで、基本的に勤務時間は9〜18時。毎週1回はノー残業デーもつくっていて、予約が入ってもお断りしています。
美容業界は出来高制のサロンが多いですが、うちは基本給もそれなりにお支払いしています。パートさんであっても、たとえ予約が入っていなくとも朝から出勤していただいています。
あとは、技術練習は必ず営業時間中に。
ほんとOLのような働き方ができるサロンだと思いますよ。
――スタッフさんを雇うとき、どんなところを見ていますか?
これまでの15年間で何人ものスタッフと働いてきましたが、採用に関してはいまだにすごく難しいですね。数年後に独立しちゃうか、あるいは1年足らずで辞めちゃうか。
後者の方だと、リピーターを増やすことができなくて…という人が多かった印象です。うちのようなリピーターの割合が高く、新規予約がバンバン入るわけではないサロンの場合、時間をかけて着実にお客様と関係性を築いていけるような力がスタッフ自身に備わっていなければ難しいのかなと。
あと、細かいところに気づける人。タオルのたたみ方や部屋の準備などに人柄が出るんですよ。準備をきちんとできる人というのは、施術もきちんとしているんですよね。お客様の体の変化や肌の状態などもきちんと見ているということなので。リピーターがつかない人というのは、そういうところで手を抜いちゃっているのかなと。お客様も良く見ているなと、私も最近になって感じました。
――売れるエステティシャンとは地味なことをきちんとできる人、なんですね。
あと今の時代、コミュニケーションが苦手な人が多くないですか?
エステの仕事は接客時間が長いんですよ。「お喋りしたい」と思って来てくれるお客様は結構多く、2〜3時間ずっと会話していることも普通です。もはや「喋るのが仕事」みたいなところも。だから、喋ったり、話を聞いたりというコミュニケーションが苦ではないということは技術以上に大事かもしれません。
エステは1対1で、アナログの仕事。最終的に行き着くのは人間力かなと。
――では、独立に向く人はどんな人ですか?
サロン経営は技術だけあれば良いというわけにはいきません。他にも色々な業務があり、自分が経験したことのないことがどんどん襲いかかってきます。それに耐えられるメンタルの強や、おおらかにやり過ごせる性格でなければ難しいのかなと。
次に、忍耐。安易な集客方法に飛びつかず、長期的な視点を持ち、我慢できる人。
あとは、「無理」と思わない=自分の可能性を狭めないこと。私もはじめこの大きな箱を借りたときは「無理っ!」と思いましたが、やらざるを得ませんでした(笑)。でも、そのおかげで自分のリミットを制限せずに済みました。もし小さなマンションの一室ではじめていたら、そこがリミットになって、ここまで長くお店を続けることができなかったかもしれません。
保戸塚さんが伝授!集客で大事なこととは?
1.安易にクーポンサイトで値下げをしない
2.アナログ作業も面倒くさがらずにコツコツ続ける
3.目先の集客方法に飛びつかず、長期的に考える
取材・文/佐藤咲稀(レ・キャトル)
撮影/喜多二三雄