自身が理想とするサービスを追求しつつ、医療美容従事者がいきいきと働ける環境を目指したい【看護師エステ/サロン経営者 伊藤優さん】#2
看護師時代の経験を活かし、「一人ひとりに寄り添った施術をしたい」という想いのもと、美容エステサロン「Yourire(ユリール)」を経営している伊藤優さん。「利益よりも自身を頼ってくれることが最優先」と話す伊藤さんからは、お客様の健康を心から願う気持ちが伝わってきます。ただし、伊藤さんはそれと同様に「お客様に限らず美容医療従事者の健康を願わずにはいられません」と語ります。
前編では、伊藤さんの看護師時代のお話や美容業界へ転向した経緯、開業するまでについてお聞きしました。後編は、サロンのコンセプトや元看護師として現美容医療従事者に対する気持ち、今後の展望を伺います。
教えてくれたのは…
看護師エステ/サロン経営者 伊藤優さん
地元宮城県仙台市の高校を卒業後、千葉県にある専門学校に通い、看護師免許を取得。その後、千葉県にある東邦医大医療センターで看護師として勤務。自身が思い描くサービスを追い求め、同県の美容脱毛クリニックへ転職。美容と健康がリンクしている重要性を伝えるべく、24歳で美容サロン「Yourire」を開業する。自身が理想とする「一人ひとりに寄り添ったサービス」を実現したサロンは、伊藤さんを頼ってくる方々より人気と信頼を集めている。
一人ひとりに寄り添うサービスをかなえるためには、
自身の成長と学びに貪欲でいることが大事
――美容サロン「Yourire」のコンセプトを教えてください。
サロン名に関しては、「ユ」の部分はyou(あなた)、つまりお客様のことをさしています。「リール」はフランス語では笑顔という意味合いらしいんです。お客様に笑顔と元気を広げていきたいという想いを込めて「Yourire」としました。
想いとしましては、やはり「一人ひとりに寄り添ったサービス」をしたいという一心です。症状の改善には、根本の原因を突き止めることが不可欠。根本を探らず、表面上だけケアして一時的に回復しても繰り返してしまいます。そこで、お客様の体質や環境に合うメニューを提供させていただくことに日々尽力しています。
――サービスを提供するために、取り組んでいることはありますか?
興味を持ったものについて、追求することを止めないことですね。保有している資格でいいますと、メディカルアロマ健康管理士や腸相診断士、コスメコンシェルジュ。ヨガにも取り組んでいたり…。
――すごい知識量です…!
全然です!これは伝える側として持っておくべき知識だと思いますし、自分が知りたいと思ったことでもあるので(笑)。
私は、「美容を通じて健康を広めたい、伝えたい」という想いのもと、サロンを経営しています。そういう立場である以上、自分自身が「知らない」ことってすごく怖いなと感じているからこそ身につけてきた知識なんです。
――具体的にどういう風に役立っていますか?
例えば、お客様が悩んでいる症状の原因がわかっても、その対策を考えたときにいくつかの知識を「知っている」と「知らない」とでは選択肢も限られてしまうため、「完全に寄り添う」ことが難しくなってきます。
反対に、いろんな知識を持つことでお客様ごとに提案できる選択肢が増えますよね。「ここにはこういうメニューを」とか「この資格のこの部分が伝えられたらためになりそう」とか…。私は、お客様のことを考えて選択肢をいくつか提示できることは、「寄り添う」ために必要な方法だと考えています。そのために、今後も学びを更新していくつもりです。
元看護師視点のメニュー展開。術後もお客様の生活に合うアドバイスを心がける
――たしかに、自分で選べる要素があるのは「寄り添ってもらっている」気持ちが強まるように感じます。では、サロンとして全体のお客様に推奨しているメニューも教えてください。
当サロンでの人気メニューはハイフですが、私としてはリンパマッサージに特化しているつもりなんです。その理由としては、いいものを取り入れようとしても悪いものが流れていないと入る余地がないためです。実際にリンパマッサージをしたお客様の中では、泣いてしまう方もいらっしゃるほど…。それだけ流れが滞ってしまっているということなんです。いくらいいものを取り入れても吸収されなかったら、意味を成しませんよね。なので、まずは体の中にある余計なものを外に流すことが必要です。
そもそもリンパというのは、血液と比べて流れも遅いですし、弁がついていないので筋肉の運動なしでは排泄することが難しい器官。その溜め込んだ不用物を外に出してあげることで精神的にも身体的にも楽になりますし、そのあとハイフなどの施術をするとより効果が期待できるということなんです。
――やはり溜め込まないようにするのは難しいんでしょうか?
完璧を目指すことは難しいですね。だからこそ、施術後のアドバイスを丁寧に行い、日々の筋トレや食事の重要性をお伝えしています。あくまで施術は、普段の生活習慣のアドバイスでは補いきれないところを手助けするイメージ。個人ではできないことを施術で手助けすることで、さらに健康体に近づくことが可能です。
医療美容従事者のモチベーション向上を図り、いきいきと働ける環境をつくりたい
――やはり看護師として働いていた経験が活かされている部分が多いとお見受けしました。
そう感じますね。私自身が看護師時代の経験や知識が活きていると感じるからこそ、美容に関わる方たちにも看護師レベルの知識を持っていてほしいと思うようになりましたね。
というのも、日本は薬大国と言われるほど、薬に頼っている状態。薬は効き目を感じるまで投与し続けなければいけないので、気づかないうちに体がボロボロになってしまうんです。その現状を踏まえて、病気になる前に患者様またはお客様に関われる看護師が増えてほしいなと思っていて。病気になる前に予防できれば、薬にも頼らず済みますし…。
――そのために始めたことはありますか?
本格的に事業として実現するためにサロン以外にも活動を始めています。活動の幅を広げるためにも会社が必要と感じて、サロンを開業してから約1年後に「PICE YOUMORE合同会社」を設立しました。
これからはサロンの仕事だけではなく、他サロンや施設との提携をすることも視野に入れています。中でも一番注力していることは、美容医療従事者に知識の見聞を広めてもらうことと、現役看護師のサポートです。
以前に看護師団体の方々と、今看護師をしている人たちの大変さや悩みなどを共有したことがあったのですが…聞いてみると、自分らしく働くことが思うようにできていないという悩みを抱えた看護師が多い印象を受けました。以前の私が抱えていたような悩みと同様に、気持ちの面で悩んでしまい、自分の思うように働けていない看護師がいるようです。その現状を耳にして、「なんとかしたい」と思ったんですね。
患者様からしても元気のない看護師よりいきいきとした元気な看護師に診てもらいたいと思うはずですし、私が過去に抱えていた悩みとリンクして他人事とは思えなかったのです。
――主に、どんな活動をしているのか教えてください。
最近ですと、仕事もプライベートも含めて充実したナースライフを送ることを応援する「ナースフェス」というイベントに出展しました。そこで現役の看護師と触れ合う機会があり、悩みの相談にのったり、サロンで行っているリンパマッサージの知識を披露したり…。
あとは、サロンでスクールを開校しました。月一回、サロンを利用してくださるお客様を中心に美容にまつわることについてセッションしています。例えば、私はメディカルアロマ健康管理者を保有しているのですが、その知識をもとに化粧水の作り方を指導を行いました。他にもいくつか保持している資格を活かして学びを広められたらいいなと思いますね。
看護師にはいきいきと働いてほしいですし、反対に美容サロンの方々には看護知識を積極的に習得していただき、私と同じ活動をするような方がもっと増えてくれると嬉しいです。
看護師から美容に転向し、理想のサロン経営が実現できた3つのポイント
1.自身の理想を掲げ、そのための道筋を立てて実行する
2.SNS上で気持ちを提示することで、同じ考えの人に興味を持たせる
3.タイミングに身を任せ、その都度自分で方向性を決めてやりきる
取材・文/東菜々(レキャトル)
撮影/SHOHEI