訪問カットってどんな仕事?資格や働き方も紹介
美容師や理容師の活躍場面の1つに、訪問カットがあります。これから美容免許を取る人や、しばらく休んでいて美容師として復帰したいと考えている人にもおすすめの仕事です。
今回は、訪問カットの概要や仕事の流れ、訪問カットを仕事にしたい場合の働き方を学び、今後に役立ててみましょう。
訪問カット(訪問美容)とは
訪問カット・訪問美容とは、病気や高年齢が理由で外出が困難な人のため、自宅や入居している介護施設などを理容師・美容師が訪れて理美容施術を行うことです。「出張美容」「出張理容」などと呼ばれることもあります。
カットのほか、カラーやパーマ、ヘッドマッサージなどが行われることもあり、外出ができなくても身だしなみを整えたり美しさを保ったりしたい人々にとって、サロンに行かなくても願望を叶えられるため助かるサービスです。
対象者ではない相手に行うと法律違反になる
訪問カットは「外出が困難な人」を対象にしていることからもわかるように、日本では、理容室・美容室に自分で行ける人はお店で施術してもらうのが原則です。
平成28年に厚生労働省が都道府県などに対して出した通知には、「出張理容・出張美容の対象とならない者に対して、出張理容・出張美容を行うことは、理容師法又は美容師法違反となる」と明文化されています。
つまり、厚生労働省が定める基準を満たさない相手に対して訪問カットを行うことは、理容師法や美容師法に違反しているとみなされ、処罰の対象になる可能性もあるのです。
訪問カットで求められる資格
つづいて、訪問カットを行う場合、どのような資格が必要なのかを解説します。
美容師・理容師免許|最低限必要
訪問カットでは、当然のことながら美容師や理容師の資格は必須です。専門学校などで美容・理容について学び、国家試験に合格して免許を取得していることが最低限の条件です。
理論上は、これだけあれば訪問カットを行うことができます。ただし、訪問先の施術相手のことを考えると、介護の知識や資格を持っているに越したことはありません。そこで、以下では訪問カット業務に就く際の介護系のおすすめ資格を挙げます。
介護職員初任者研修|あるとベター
「介護職員初任者研修」とは、旧ホームヘルパー2級の資格です。介護の基礎知識が身につくため、介護系の資格を何も持っていない場合に比べて業務の際に役立ち、有利になります。
介護の入門資格とあって比較的取りやすく、合計130時間の講義と演習を受ければ取得できるので、訪問カットを仕事にしたいならぜひ取っておきましょう。
認証NPO法人日本理美容福祉協会「福祉理美容士」
福祉理美容士の資格は、体が不自由な人や高齢者に対する介助の正しい知識や技能を有することを認める資格です。自宅学習と2日間のスクーリングによって得られ、取得後に認定証も発行してもらえるので、さまざまな福祉・介護現場に出向いての活躍を目指せます。
一般社団法人日本訪問福祉理美容協会「訪問福祉理美容師」
高齢化が進み、ますます需要が高まると予測される訪問理美容。日本訪問福祉理美容協会(JVBWA)では、「訪問福祉理美容師」の資格を1日で習得できるよう、基礎知識やサービス提供時の動きなどを学べるカリキュラムが組まれています。
受講スケジュールは公式サイトに掲載されており、東京のほか仙台・大阪・神戸などでも開講されているので、気になる人はぜひチェックしてください。
訪問カットの業務の流れ
つづいて、訪問カットを行うときにはどのような流れで行うのか、仕事の手順の一例を紹介します。
1. 施術のための準備をする
まず、訪問先に着いたら、道具を出したり施術スペースを整えたりという準備をします。利用者や家族などが誤ってケガをすることのないように、道具を安全な場所に置くことや、利用者や周りの人がつまずかないよう導線などに注意するといった配慮も必要です。
2. カウンセリングを行う
次に、カウンセリングをします。利用者本人や家族、施設職員などから要望を聞き、カタログなどを参考にしつつイメージをすり合わせていきましょう。
なるべく全員の意向に沿うのが理想ですが、本人と周りの人の意見が食い違う場合もあり、うまくいかない場合もあります。
そこで、なぜそのようなスタイルにしたいかを聞いたうえで、プロとしての見解も伝え、みんなが納得できるようなイメージを描けるとよいでしょう。
さらに、利用者の頭皮や肌に異常がないか、髪質や髪の状態はどうかなどを確認するとともに、その日の体調も聞いておくことが大切です。状況や健康状態によっては、施術を別日に改めたほうがよい場合もあります。
3. 施術を行う
いよいよ、決めた方向性でカットやパーマなど美容・理容の術を施していきます。長時間の施術は体調を悪化させることもあるので、なるべく手早く行いましょう。また、通常のサロンでの施術以上に、安全面や衛生面にも十分注意しなければなりません。
切り残しなどがないかをチェックし、スタイリングが完了したら、利用者本人や周りの人に仕上がりの確認をしてもらいます。OKが出れば施術は終了です。
4. 片付け・会計
施術が終わったら、道具やゴミなどを速やかかつきれいに片付け、会計を行います。あわせて次回の予約を取る場合もあるかもしれません。すべてが終わったら、業務完了です。
訪問美容師(訪問理容師)として働く方法
では、訪問カットを仕事にするにはどうすればいいのでしょうか。2つの働き方のパターンについてお伝えします。
専門店などに所属する
1つめは、訪問カットを専門で行っている企業などに就職して技術を提供する方法です。自分で顧客開拓のための営業をしなくても、すでに顧客がいるため、安定的に働けるというメリットがあります。
また、社内研修などがあり、訪問カットの初心者でも知識やスキルを磨くことが可能です。
業務では、複数人で介護施設などに赴き、手分けして何十人もの利用者に施術を行うこともあります。ただし、数をこなさなければならないわりに、報酬は低めであるといわれています。
開業して自分で行う
2つめは、個人で訪問カット事業を立ち上げる方法です。自分で開業すれば、働き方や施術料なども好きなように調整でき、自由度が高いというメリットがあります。
なお、新たに事業を開始するにあたって、管轄の保健所によってはもろもろの手続きが必要な場合もあります。しかし、すでに美容所を持っている場合は開業届は不要なため、サロンのオーナーなどであれば比較的始めやすいかもしれません。
訪問カットで利用者のニーズに合ったヘアスタイルに仕上げよう
訪問カットは、自力で美容院や理容室に行けない人々にとって、髪型を整えられる貴重な機会です。高齢化社会においては、今後一段と需要が高まることも予想されます。
通常のサロンワークもすばらしい仕事ですが、来店することができない人たちに対して施術を行う訪問カットなら、さらにやりがいを感じられる人もいるかもしれません。
理美容の知識だけでなく、ぜひ介護福祉の知識や技術も身につけ、利用者の人々に喜んでもらえるような施術をして活躍してください。
引用元
厚生労働省:理容師法施行令第4条第1号及び美容師法施行令第4条第1号に基づく 出張理容・出張美容の対象について
認証NPO法人日本理美容福祉協会:養成講座ご案内
一般社団法人日本訪問福祉理美容協会:訪問福祉理美容師の資格認定制度について
一般社団法人日本訪問福祉理美容協会:訪問福祉理美容師講座