アイデアと想いが詰まったサロンが実現。今後は美容業界への恩返しも含めた活動を【サロンオーナー 柳亜矢子さん】#2

2022年7月に東京・代官山にてオープンしたサロン「Sraw」で、オーナーを務める柳亜矢子さん。長年構想し続けた、柳さんのアイデアがたくさん詰まっています。

前編では、体を壊したことによって変化した働き方や仕事に対する姿勢について伺いました。後編では、柳さんなりに実践した働き方改革や、サロン「Sraw」がオープンするまでの経緯、美容師としての気持ちの変化にフォーカスしてお話を伺います。

お話を伺ったのは…
サロンオーナー 柳亜矢子さん

国際文化理容美容専門学校卒業後、当時代官山にあった「エイトアンドハーフ」に就職。6年ほど勤務したのち、「broocH」立ち上げにディレクターとして参加。2022年7月には、「Sraw」オーナーに。現在もサロンワークだけでなくメディアに多数出演、美容系アイテムの商品開発にも携わっている。

ヘアメイクの現場を経験したことで、サロンワークの楽しさを再確認できた

――復帰後の働き方について教えてください。

体を壊してからは仕事のペースをゆるやかにしていたのですが…復帰後も変わらずヘアメイクの仕事をいただけるありがたさから、今度はサロンワークを疎かにするようになってしまいました。お客様の予定をこちらの都合で変更していただくことが続き、結果的にはクレームとなってしまって…。

これではまずいと思い、遠方に拠点を移すことで物理的に通勤時間を増やしてサロンワークに集中できる環境をつくろうと考え、鎌倉に移住をしました。ヘアメイクの仕事って早朝からが多いので、鎌倉に引っ越してしまえば仕事を引き受けなくていい口実、ができるなと考えたんです(笑)。年齢的にも今後は、美容師一本にしたいと思っていましたし

――美容師一本に決められたのは、やはりヘアメイクの現場も経験できたからなのでしょうか?ヘアメイクとしても地位を確立していた状況で美容師一本に戻るという選択。抵抗はありませんでしたか?

美容師ってひとりでデザインの仕上げまで遂行できるけど、ヘアメイクはスタイリスト、カメラマン、編集者…などいろいろな人たちと一緒に作品を作り上げます。周りの声に耳を傾けながらスピーディーに対応しなければいけない。そんなヘアメイクの現場に窮屈さを感じて、サロンワークに戻った方が自分らしく働けるのでは、と改めて実感したんです。原点に立ち返って、やっぱり髪の毛を切るのって楽しいなと再確認できる経験にもなりました

自身のアイデアを詰め込んだサロン「Sraw」が、自分を見つめ直すきっかけに

――美容師に絞ったあとオープンした、サロン「Sraw」ができた経緯をお聞かせください。

美容師に軸を戻してからは、自分のイメージを反映させた空間を形にしたいと考えるようになりました。コロナ禍以前から会社にサロンを出したいと相談をして、2021年頃にようやく話が進み始め、2022年7月にオープンすることができました。

「broocH」のときは、お店の内装とかデザイン的なところはあまり触れられなかったのですが、今のサロンは自分の気持ちを表現することができて楽しかったです。

――物件はやはり、代官山なのですね。

実はこの建物、20代の頃に通っていたセレクトショップがあった思い出の場所なんです。最初は候補に上がっていなくて他の物件を見に行ったのですが、空室になっているのを偶然見つけて、「絶対ここがいい!」と思い決めました。

もともと、前はアパレル会社のプレスルームだったらしく、シンプルな内装となっていたのでベースとして最適だと感じたことも決め手でしたね。

――内装でこだわったポイントを教えてください。

海外のお店や家からインスピレーションを得ました

特にサンタモニカで立ち寄ったショップは、どのお店も白をベースとした明るく開放的な雰囲気で、とても気持ちが良かったんです。白だと映えて見えるし、空気もなんだか澄んでいるように感じられるのもあって、サロンをつくる際に参考にしました。

あとは、できるだけ美容室っぽさを消したかったので、椅子や鏡なども選び抜き、誰かの家にいるような雰囲気づくりを意識しました。やわらかくて温かみが感じられるテイストを中心に選びましたね。

――コンセプトは?

何かにつけて忙しいお客様が、サロンにいるときだけでも自分と向き合ってリセットできる場所にしたいという想いを込めて、「ゆっくり=スロウ」+「ありのまま=ロウ」=スロウとつけました。

――お客様と接するうえで心がけていることを教えてください。

お客様とのコミュニケーションには気を遣っています。

年月が経っても場所が変わっても、変わらない私のままで接することを忘れずにいたい。美容師を始めた頃からずっと大事にしていることです。

――「broocH」ディレクターの時とは違い、イチからサロンを手がけてみて実感したことはありますか?

今までしてきた選択が間違っていないと思えるいい機会になりました。

最近は原点に立ち返る機会が多かったのですが、それって過去にかっこいい背中を見せてくれた先輩のおかげだと気づいたんです。となると、今の私って後輩から見たらどうなんだろうって。今までは教育とか全く興味がなかったのですが、自分が楽しいと思うことがその人のためになるなら、取り組もうと思いました。

これからは自分本位な考えではなく、美容業界に少しずつ恩返しをしていけたらと思っています。

柳さん成功の秘訣

1.自分が置かれている立場を俯瞰して見ること

2.自分に合った働き方や仕事を見極めて注力する

3.たまに原点に立ち返り、感謝の気持ちを忘れず仕事に取り組む


取材・文/東菜々(レ・キャトル)
撮影/喜多二三雄

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