「キレイ」を作る人に伝えたいこととは……:UMiTOS代表 砂原由弥さん 【美と食】#3
カラダは「食」でできていくもの。正しく賢く食べて本物の「キレイ」を手に入れる。
あまりにも当たり前のことすぎて、ついおろそかになりがちな「食」のこと。でも、私たちのカラダは「食べたもの」でできています。そう、「何を、どう食べるか」でその人の美しさ、価値が決まるのです。
サロンワークのほか、ヘアメイクで雑誌の撮影や、テレビCM,映画の撮影などで国内外を飛びまわる砂原さん。「この仕事が好きだから、どんなに忙しくても楽しくて」と言うとおり、いつも笑顔。彼女の技術だけでなく、そのやさしくほがらかな人柄に多くのファンが。
「食育」をはじめとして、異業種研修や美術研修を行うなど砂原さんはスタッフ育成のための投資を惜しまない。なぜ、採算度外視でそこまでするのか、理由を聞いてみた。
「食」を大切にすることは究極の自己プロデュース #3
「食育」をはじめとして、異業種研修や美術研修を行うなど砂原さんはスタッフ育成のための投資を惜しまない。なぜ、採算度外視でそこまでするのか、理由を聞いてみた。
――サロン経営を始められて9年。「海と砂原美容室」も「UMiTOS」も離職率がとても低いと聞いていますが?
砂原 2つのサロンで、スタイリストとアシスタントその他、計23人のスタッフがいますが、これまでに正式に辞めたのは1人です。それも、ここでいろいろなことにチャレンジするうち、自分に新たな才能があることに気づいて美容業界とは別の分野に転身したという(笑)。
サロン勤務時代、毎年新しい人がどっと入ってきては、どっと辞めていく……というこの業界に私は違和感を感じていて、なんとかその構造を変えられないかとずっと考えていました。それは別に、みんなで仲良しごっこをしたかったわけではなく、努力して積み上げたスキルを簡単に手放すのはもったいじゃないかと。お互いにスキルをどんどん高めて、美容という仕事で社会に貢献していきたいと考えていたからです。その思いは今も変わりません。私は、美容業界で育ててもらいました。その恩を、次の世代を育てることで返したい。今は、時間もお金も若い人たちに還元していきたいと思っているんです。
たとえば、報酬としての年2回のボーナスのほかスタッフには毎年、青山にあるファッションブランドの洋服を2〜3着、プレゼントしています。メディアに出る機会の多いスタッフには、年に10数着くらいになるでしょうか。美や流行を生み出す側としての意識を高めるため、身だしなみを整えファッションに気を遣うことも絶対に必要ですから。とくに若手はブランドの服は高価で手が出ない。ならばこちらで用意します、と。
――また、農業研修のほかにも、さまざまな取り組みをされているとか?
砂原 一流の接客サービスを学ぶため百貨店に出向する「異業種研修」、芸術家を講師に招いてデッサンや美学などを学ぶ「美術の時間」、そして内観、つまり自分自身と向き合う「孤高の時間」などを設けています。いずれも強制しているわけではありませんが、スタッフたちにとってはいい気分転換になるようで、みんな楽しみながら参加してくれています。そうやって学んだことが即、形にはならないかもしれない。でも何かの折に必ず、美容の仕事に結びつくと私は信じているんです。
東京現代美術館から講師を招いて行われる「美術の時間」。この時は、造形や美の「バランス」について学んだ。
自分自身と向き合い、好きなこと、自分に必要なことを行う「孤高の時間」。この時間を持つために、スタッフは自主的に朝の5時6時にサロンに来て、カットの練習をしたり絵を描くなどしている。
――美容師になろうと考えている人、美容師としてさらなるステップアップを考えている人に、メッセージをお願いします。
砂原 憧れの美容室に入る、脚光を浴びるスタイリストになる、ということだけを目標にするのではなく、もう少し長く広い視点を持ち、将来自分はどう生きていきたいかをイメージしてみてください。美容室を人生のひとつの通過点として、また、美容という仕事をひとつのツールとして自分の人生を好きに、自由に切り開いていってほしい。サロンワークにかぎらず、ヘアスタイリストとして国内外を飛び回ったり、美容についての研究家になるのもいい。あるいは、自分自身がタレントとして世の中に出ていってもいいじゃないですか。
その結果、美容という仕事の質が高まると思うんです。そのためにも、これまでの美容の枠にとらわれず、自分が好きなことや興味のあることをどんどんやってください。そして、「これだ!」と感じられることをぜひ、突き詰めてほしい。その先にはきっと、新たな美容が生まれるはずだと、私は期待しています。
砂原さんいわく「成分オタク」なスタッフが研究を重ねて才能を開花させ、入社1年目で作ったシャンプー&コンディショナー。
サロンで、最後に顧客に提供されるデトックスジュース。ヘアスタイルが整えてもらった後、こちらをいただくとカラダもココロもすっきり。こうした細かい心遣いが、うれしい。
サロン内には、砂原さんの美容およびサロン経営の理念が書かれたボードが。ビジュアルに表すことで、スタッフへの理解度も高まる。
砂原さんやスタッフがセレクトした、ユニークでかわいいヘアアクセサリ。砂原さんがデザインして、ニット作家に制作を依頼することもあるそう。「人と違う」「他にはない」と、買い求める人が多い。
取材・文/鈴木裕子 撮影/中川良輔
Profile
砂原由弥さん
東京・青山「UMiTOS」代表
日本美容専門学校卒業後、都内2店舗を経て、出産を機に2008 年、「海と砂原美容室」を千葉・南房総にてオープン。さらに2011 年、東京・表参道に「UMiTOS」をオープン。サロンワークに加え、ヘアメイクアップアーティストとしてファッション誌、テレビCM、企業広告、映画の撮影など、幅広く活躍している。
2014 年、カンヌ国際映画祭に参加。また、内閣府認定メンタルケアカウンセラー、認定福祉美容介護師の資格も持つ。著書に『はじめてのおうちカット』(アノニマスタジオ)、『一刻も早くツマラナイゲンジツから脱出スル方法』(共著、コワフュール・ド・パリ・ジャポン)がある。
UMiTOS/http://www.umitos.com/
海と砂原美容室/http://www.umisuna.com
Profile
UMiTOS
東京都渋谷区神宮前5-2-10 アイリスビル2F
03-6418-8305
UMiTOS/http://www.umitos.com/
facebook/https://www.facebook.com/umitos358
すべては「食」から始まる:UMiTOS代表 砂原由弥さん 【美と食】#1 >>