すべては「食」から始まる:UMiTOS代表 砂原由弥さん 【美と食】#1
カラダは「食」でできていくもの。正しく賢く食べて本物の”キレイ”を手に入れる
あまりにも当たり前のことすぎて、ついおろそかになりがちな「食」のこと。でも、私たちのカラダは「食べたもの」でできています。そう、「何を、どう食べるか」でその人の美しさ、価値が決まるのです。
「食育」という、これまでの美容業界での育成方法とは一線を画すスタッフ教育で、注目を浴びている東京・青山「UMiTOS」、そして千葉・「海と砂原美容室」。なぜ「食」にこだわるのか、その理由をオーナーの砂原由弥さんが語ります。
「食」を大切にすることは究極の自己プロデュース #1
食べる時間も、寝る時間もないほど忙しい、ということは誰にでもあること。でも、「忙しいからこそ、きちんと食べなければ」と言う砂原さん。それはカラダの健康のためだけでなく、脳やココロのためでもあるといいます。
あなたは昨日何を食べましたか?
息をしたり、眠ったりするのと同じように、食事についてもとくに意識をすることなく毎日を過ごしている人も少なくないのでは?「昨日一日、自分が何を食べたか覚えていない。それどころか今日のランチは何だったんだっけ? という人もいるかもしれませんね。もちろん、『忙しくて食事のことを考えるヒマなんてない』という日も、あるでしょう。でも、その状態が続くと後で必ずツケが回ってきます。単にカラダを壊すだけはなくて、ココロをも弱らせてしまうんです。最悪の場合、うつ状態に陥ってしまうことも。その結果、夢をあきらめざるを得なくなった人たちを、私はこれまでにたくさん見てきました」。
砂原さん自身も、修業時代は「食べない、寝ない、休めない」という毎日が続いて、うつのような状態を経験したそう。
「お客様がお会計をなさっている間、お見送りに出る前のわずかな時間にスポーツドリンクをほんの一口、口に入れておしまい、という日も少なくありませんでした。それでも、とにかくいっぱい仕事をこなして技術を磨こうとがんばり続けていたわけですが……いつの頃からかココロがかさかさ、ささくれだってきたように感じ始めました。夢中で働いているけれど、なんかココロが満たされない。なぜだろうと考えている時、実家で両親や祖父母と一緒に食卓を囲んでいた風景が、ふわっと頭に浮かんできたんです」自分に足りないのは、ちゃんとした食事だ――。
砂原さんは、そう思ったといいます。「もっとも、修行時代は時間がないから大した食事はできません。でも少なくても、昨日何を食べたか思い出せるような生活をしてココロを潤さなければ、いい仕事ができるはずがない……そう思ったんです」
カラダとココロは食事でコントロールできるんです
思えば、千葉の南房総にある砂原家の食卓には、朝昼晩、季節の旬の食べものがいっぱい並んでいた。
「母も美容師なのですが、サロンをひとりできり盛りしながら姉と私の子育てをし、祖父母の世話をし、家族全員の食事をつくり、父と私たちにお弁当を持たせ……と、どんなに忙しくても食事を疎かにすることはありませんでした。今思えば、私が夢を持ち、それに向かって突き進めたのは、母が作ってくれた食事のおかげです。栄養的にということだけでなく、心のこもった食事を家族みんなで食べることによって、精神的にも満たされ、心身ともに、つねにエネルギーチャージができていたんだと思うんです」。
その後、出産を機に、南房総に戻った砂原さん。久々にゆったりした時間を過ごしながら、南房総の海と山の恵みを口にするうちに、カラダは元気に、ココロも潤いを取り戻したという。
「その頃は、毎朝私が家族の朝ごはんやお弁当、スタッフのお昼を作っていました。凝ったものではなくて、ごく簡単なものですよ。南房総は野菜も魚も新鮮なものが手に入るので、とれたての生のままだったり、ただ岩塩で焼くだけといったシンプルな調理でも、素材がいいから本当においしいんです。でも、母親が40年間続けてきた美容室をリニューアルして『海と砂原美容室』をオープンし、本格的に仕事を再開したら、子育てにサロンワークにヘアメイクの仕事に……とてんてこ舞い。自分で料理をする時間がなくなってしまって。そこで、栄養士を招き入れて『できるかぎり地元の食材を使って、カラダにいいものを』とお願いし、食事をスタッフの分まで作ってもらうことにしました。それが、UMiTOS名物『まかないランチ』の始まりです」。
砂原家のふだんの食事でも「毎食8品以上の料理の用意をする」と決めているそう。「むずかしいことを考えなくても、たくさんの種類の食べ物を食べていると自然とバランスがとれるような気がします
サロン内のデザイン、レイアウトは砂原さん自身が担当。5部屋、それぞれ趣が違う。
取材・文/鈴木裕子 撮影/中川良輔
Profile
砂原由弥さん
東京・青山「UMiTOS」代表
日本美容専門学校卒業後、都内2店舗を経て、出産を機に2008 年、「海と砂原美容室」を千葉・南房総にてオープン。さらに2011 年、東京・表参道に「UMiTOS」をオープン。サロンワークに加え、ヘアメイクアップアーティストとしてファッション誌、テレビCM、企業広告、映画の撮影など、幅広く活躍している。
2014 年、カンヌ国際映画祭に参加。また、内閣府認定メンタルケアカウンセラー、認定福祉美容介護師の資格も持つ。著書に『はじめてのおうちカット』(アノニマスタジオ)、『一刻も早くツマラナイゲンジツから脱出スル方法』(共著、コワフュール・ド・パリ・ジャポン)がある。
UMiTOS/http://www.umitos.com/
海と砂原美容室/http://www.umisuna.com
「食育」は、クリエイティブワークの一環!:UMiTOS代表 砂原由弥さん 【美と食】#2 >>