エステサロンが準備すべき契約書と免責同意書とは? トラブルを防ぐポイントを紹介
エステサロンの運営において、用意しなければならないものは多岐にわたりますが、なかでも重要なもののひとつに「契約書」の存在があります。状況によっては不要ですが、該当するサロンの場合は必ず準備しましょう。
そこで今回は、エステサロンの契約書と、あわせて用意したい「免責同意書」について解説します。各書類の概要や必要性について知り、正しく準備して万が一の事態に備えてください。
エステサロンが準備すべき契約書とは?
はじめに、エステサロンが準備しておくべき契約書について詳しくお伝えしていきます。
契約書が必要になるのはどんな時?
エステは「特定継続的役務」に該当すると考えられ、特定商取引法という法律によって決められた事項を守らなければなりません。そのなかで、エステでは、期間が1カ月を超えて金額が5万円を超える場合、契約書が必要になることが定められています。
特定継続的役務提供(美容医療分野)Q&A|特定商取引法ガイド
回数券販売でも契約書が必要になる時がある
エステで回数券を販売する場合でも、契約書が必要になることがあります。そこで、必要なケースと不要なケースの例を見てみましょう。
【契約書が必要なケース】
・1枚5,500円×10回分=5万5,000円
・月に2回施術
この場合、前述したように期間が1カ月を超え、金額も5万円を超えるため、契約書が必要です。
【不要なケース】
・1枚4,800円×10回分=4万8,000円
・月に2回施術
この場合は、期間は1カ月を超えますが、金額が5万円に満たないため、契約書は必要ありません。
契約書で必要な書面は2種類
契約書としては、概要書面と契約書面という2種類の書類の交付が必要です。以下で詳細を見てみましょう。
概要書面
概要書面とは、契約する前にお客様に渡す書類。契約に関する概要を明記しておかなければなりません。記載すべき内容は、以下のようなものです。
・事業者の氏名・住所・電話番号(法人の場合は代表者名も)
・提供する役務(サービス)の内容
・購入商品名・種類・数
・提供期間
・特約(ある場合) など
契約書面
契約書面とは、契約内容を明記したもので、契約後に渡す書類です。内容は概要書面と重複するものもありますが、以下のようなものがあります。
・サービスの内容や商品名
・サービスの販売価格やその他必要な費用
・支払いの時期・方法
・事業者の氏名・住所・電話番号(法人の場合は代表者名も)
・契約担当者名・締結年月日 など
押さえておきたい2つの制度
つづいて、契約を取り交わすうえで押さえておきたい2つの制度について、詳細を確認しましょう。いずれも、概要書面・契約書面ともに必要な内容です。
クーリング・オフ制度
クーリング・オフとは、契約を結んで書面を受け取った日から8日以内であれば、消費者(お客様)側が無条件に契約を取り消せるという制度です。契約書面において、クーリング・オフの事項は赤枠の中に赤字で記載しなければならないと決められています。
引用元
特定継続的役務提供|特定商取引法ガイド
中途解約制度
中途解約とは、クーリング・オフ期間の経過後、契約を解除したい場合に適用される制度です。
エステのサービス提供開始前であれば、エステ側はお客様に対して最大2万円の損害賠償を請求することができます。ただし、すでにそれ以上受け取っている場合は、差し引いた額を返金しなければなりません。
また、サービス提供開始後の場合は、「2万円」もしくは「契約残額の10%」のうち低いほうの金額を請求できます。
エステサロンに免責同意書が必要な理由とは?
エステサロンの経営では、契約書とあわせて免責同意書も用意しておかなければなりません。免責同意書とは、エステサービスの提供中や施術後に何らかのトラブルが発生した際、サロン側の責任を問わないことに同意してもらう書類のこと。
以下で免責同意書について詳しく見ていきましょう。
なぜ免責同意書が必要なの?
エステの施術では、どんなに注意を払っていても肌トラブルなどのリスクがあります。万が一の事態が起きたときでも、あらかじめ責任の所在を明らかにしておくことで健全な運営ができるため、免責同意書の存在は非常に重要です。
お客様にも安心してもらえる
免責同意書では、施術によって想定されるトラブルについての記載があり、事前にお客様にもリスクを理解してもらうことができます。しっかりと説明してもらえれば、お客様も安心して施術を受けられるでしょう。
また、内容に同意できなければ「施術を受けない」という判断をすることも可能です。
免責同意書に盛り込むべき内容とは?
免責同意書に記載する内容について、項目ごとに押さえましょう。
1. 体質や肌質|アレルギーの有無など
体質や肌質についての項目では、アレルギーがないか、敏感肌かどうかなどをチェックします。エステではお客様の肌に直接触れて施術するため、肌トラブルのリスクを確認しなければなりません。
2. 通院歴や持病|治療中の病気など
通院歴や持病の項目では、現在通院して治療している病気がないか、また持病の有無や過去に大きな病気をしたことがないかなどをチェックします。病気の種類などによっては、施術が合わずに悪化したり副作用が起きたりすることがあるためです。
状況によっては、サービス提供前に主治医の許可を得てもらうことも必要になるでしょう。
3. 当日の体調|発熱など
施術当日の体調もチェックしなければなりません。発熱や体調不良のほか、妊娠や飲酒の状況も確認しましょう。
体調がよくないときは、もちろん施術できません。また、妊娠している場合は胎児への影響が出たり、飲酒している場合はアルコールが回って気分が悪くなったりする可能性を考え、施術を避ける必要があります。
4. 契約に関するもの|未成年の場合など
未成年の場合、料金の未回収などのトラブルを避けるため、原則として親権者の許可が必要です。そこで、契約についての項目では、未成年には親の同意を求める・身分証明書を提出してもらうなどの内容を盛り込みます。
契約書・同意書でトラブルを防ぐポイントとは?
ここまで見てきた契約書や免責同意書を正しく利用して無用なトラブルを防ぐためには、
・記入漏れがないように注意して作成する
・万が一の時にすぐ内容を確認できるように保管しておく
という2点を押さえることも大切です。
書類は作成して終わりというものではなく、何かあった際には速やかに双方で確認できるようにしておかなければなりません。慎重に保管し、紛失することがないように注意しましょう。
経営に必要な書面を準備してトラブルを防ごう!
エステサロンの契約書や免責同意書は、サロンとお客様の両者が安全にサービスの授受をするために必要になる大切な書類です。今回見てきた内容を参考に、不備のないようにきちんと準備し、状況に応じて効力を活用してトラブルを防ぎましょう。
引用元
特定継続的役務提供|特定商取引法ガイド
特定継続的役務提供(美容医療分野)Q&A|特定商取引法ガイド