美容師が自由に働けるサロンをつくるため業務委託と教育のハイブリットサロンを設立 美容師・和田光弘さん
大阪で6店舗のサロンを経営する株式会社afrodite 代表取締役の和田光弘さん。前編では管理職時代のリサーチ力を生かし、ヘアケアを推すことで、短期間で多くの店舗をオープンさせたお話を伺いました。後編では「afrodite」の働きやすさについて迫ります。退職者がほとんどおらず、産休復帰率は100%。それをかなえるには、スタッフの個性ややりがいを追求した経営体制がポイントでした。
今回、お話を伺ったのは…
和田光弘さん
大阪府出身。大阪美容専門学校卒業後、3つのサロンに所属し、サロンワークのほか経営のノウハウも学ぶ。2018年に独立し「afrodite(アフロディーテ)」をオープン。現在は京橋に3店舗、天王寺に2店舗、枚方に1店舗、合計6店舗の経営を一手に行なっている。
業務委託と教育サロンのいいとこ取りで、スタッフとお客さまの満足度を高める
――スタッフが自由に働けるサロンが目的とのことですが、具体的な雇用形態を教えてください。
すべてのスタッフを業務委託契約で雇用しています。ただし、普通の業務委託とは違い、
「業務委託と教育サロンのハイブリット」が目的。業務委託というと個人でお客さまと一対一の関係を築くイメージが大きいですよね。「afrodite」はその考えではなく、すべてのお客さまはスタッフ全員の担当であるという精神を持つようにしています。
たとえばお出迎えやお会計、シャンプーなど、担当者本人が忙しい場合はお客さまをお待たせするのではなく、手の空いているスタッフがサポートします。このようにみんなで協力し合うことはサロンで働く上で当たり前のことだと思っていて。「1人で売上をあげられるわけではない」という意識を持って働いてほしいとスタッフには話しています。
一方で休みや働く時間を自分で自由に決められるなど業務委託契約の利点は取り入れるように。そうすることでスタッフにとってもお客さまにとっても満足できる場所になっていると思います。
――研修制度やスタッフ教育はどのようなものがあるのでしょうか。
とくに決まった研修や教育制度はなく、研修についてはスタッフの要望に合わせて都度取り入れるようにしています。もちろん参加は自由。強制して学ばされたところで身につかないと思うんですよね。
教育についてもがっちりマニュアル化してしまうと1人ひとりの個性が生きなくなると考え、作っていません。ある程度は各店舗の店長やスタッフに任せています。やりたいようにやってもらって、なにかあったら僕が全部責任取るよと伝えているんです。その代わり、迷うことがあったり、なにをしていいかわからなかったりするときはすぐに連絡してもらうようにしています。スタッフとはLINEでも頻繁にやりとりをしていますね。
スタッフの要望はすべて取り入れ、充実度をUP
――スタッフからの意見を取り入れることも多いのですか?
スタッフからの要望はすべて取り入れるようにしています。導入してみてダメだったらやめてしまえばいいんです。それが経営にかかわるような大きな損失になることはないと思っていて。今の若い子たちのほうが僕ら世代よりも流行に敏感で、SNSなどを使った情報収集が圧倒的にうまいはず。新しいものをどんどん取り入れて、そのなかでヒットしたものだけを残していく、というやり方で経営を続けています。そうすることでスタッフも働く意味を見出せるのではないでしょうか。せっかく「afrodite」でがんばってくれているので、会社にいる意味を見出せる場所を作り続けたいと思っています。
――「afrodite」の働き方は、お客さまにとってはどのようなメリットがあるのでしょうか。
僕はスタッフファーストで、余計なことを考えなくていいサロンワークに集中できる環境を作るので、スタッフにはその分お客さま中心で働いてほしいと考えています。スタッフの充実度がそのままお客さまの満足度につながればいいなと。
さらに業務委託特有のマンツーマン施術であったり、ヘアケアが他の美容室にくらべてかなり強かったり、売っている商品も契約商品ばかりでここでしか手に入らないので、そういう特別感を味わってもらえるとうれしいです。
5年間での離職はほとんどなし!スタッフの希望をかなえるための店舗展開が次の目標
――実際に働くスタッフはお店についてどのようにお考えなのでしょうか。
わからないですね。うれしい言葉をいただくことはありますが、本音はどう思っているかは本人にしかわからないので。ただし1店舗目をオープンしてからの5年間、やめたスタッフがほとんどいないんですよ。独立したい、実家に帰るなど特別な事情がないかぎり離職していないイコール、満足して働いているという答えだと受け取っています。妊娠、出産を経た方の復職率も100%なんです。
――今後はさらに店舗を拡大していく予定ですか?
店舗を展開したい、というよりはスタッフにとって店舗が必要だと感じるところに出店していきたいという考えです。たとえば昨年出産して現在育休中のスタッフが、ご主人の都合で東京に引っ越さなければいけなくなったんです。ご本人は仕事を続けたいと言っているので、それなら東京に出店してみようかと。市場を調べて展開ができそうなら挑戦しようかと現在検討を重ねています。
また、先日オープンした6店舗目はパーソナルカラーに特化した店舗なんです。これはスタッフの一人がパーソナルカラーを取り入れたいと希望を伝えてくれて実現しました。どうせやるなら講師になるまで本格的に学んでもらって、会社の名前を使って活動してほしいと。研修代を含めた資格習得のための費用についてはすべて会社が負担しました。
高額ですが、サロンの得意分野が増えますし、本人のやりがいにもつながりますし、とてもいいことだと思うんです。このようにスタッフの希望を取り入れながらそれぞれが生き生きと働けるサロンを増やしていきたいと考えています。
和田さんに学ぶ働きやすいサロンをつくる3つの秘訣
1.業務委託と教育サロンのいいところを組み合わせる
2.スタッフの意見はすべて取り入れてから取捨選択をする
3.スタッフにとって必要な場所やコンセプトに沿ってサロンを展開する
今までにない自由な働き方とやりがいを両立させた和田さんのサロン「afrodite」。大部分をスタッフに任せながらもサロンとしての人気を獲得し続けられるのは、スタッフ全員の信頼関係があるからだと感じました。和田さんのスタッフファーストの気持ちがきっと届いているのだと思います。今後の店舗展開にも期待したいです。
Salon Data
住所:大阪府大阪市都島区東野田町1-6-16 ワタヤコスモスビル8F
TEL:06-6809-5180