あえて特化せず「すべてがハイスタンダード」なプライベートサロンを目指して 美容師ワタナベエリカさん
清澄白河でプライベートサロン「yadorigi（ヤドリギ）ー小さな街角美容室ー」を経営するワタナベエリカさん。
前編では、開業のきっかけと、オープン後の経営について伺いました。ワタナベさんはもともと独立意思はなかったものの、不動産屋さんからの物件の紹介を受けて開業を決意したんだとか。オープン当初はコロナ禍。安心しておしゃれを楽しんでほしいという思いで、プライベートサロンの形態をとることにしたそうです。また、ワタナベさんが心がける丁寧なカウンセリングはお客さまの真の要望を捉え、信頼感をつくり、ひいてはリピーターの創出にも繋がっているのだそう。
今回、お話を伺ったのは…
ワタナベエリカさん
清澄白河のプライベートサロン「yadorigi（ヤドリギ）ー小さな街角美容室ー」代表。スーパービューティーカットコンテストモデル部門全国大会 グランプリ受賞、ウエラトレンドビジョンアワード カラー部門全国大会グランプリ受賞など、さまざまなコンテストで優勝経験をもつ。独立前のサロンでは総売上、新規指名数、再来率グループNO.1の経歴を持ち、2店舗の統括ディレクターを経験。2020年には、ニューヨークファッションウィークにヘアメイクチームとして参加。雑誌に取り上げられるなど、多方面で活躍中。
“物件先行”で開業へ コロナ禍にプライベートサロンをオープン
時勢もあり、マンツーマン施術が人気の後押しになったそう
――ワタナベさんは、13年勤めたサロンを退職後、2021年に清澄白河に「yadorigi（ヤドリギ）ー小さな街角美容室ー」を開業されました。自分のサロンを持つというのは、念願だったのでしょうか。
実は、自分のサロンを持つということは全く考えていなかったんです（笑）。前職のサロンには長い期間本当にお世話になって、楽しく仕事をさせてもらっていたこともあり、独立ということは頭にありませんでした。
ある時、清澄白河エリアで自宅の引っ越し先を探そうと不動産屋さんに足を運びましたが、前職の仕事が忙しくなり、引っ越しは取り止めに。しかし、なぜか不動産屋さんが「あなたにピッタリの物件があるよ！」と美容室のテナントを紹介してくださったんです。美容室の物件探しは全くお願いしていなかったんですけれど、大家さんに許可までとってくださったんですよね。
――物件先行で、サロン開業を考え始めたんですね！
そうなんです！素敵な物件だったこともあり、「これもご縁かな」と思って開業を決意しました。その時はちょうど、コロナ禍。前職のサロンでも「大人数がいるサロンだと少し心配」「少人数でゆったり施術を受けたい」というニーズを耳にしていたため、マンツーマンのサロンを開業することにしました。
――前職のサロンでは、2店舗の統括ディレクターをされるなど活躍されていましたが、反対の声はありませんでしたか。
社長に退職を申し出た際には「思ったよりも早かった！」と驚かれましたが、困ったらいつでも戻っておいで、と快く送り出していただきました。新卒で入社してからさまざまな経験をさせていただき、最後に温かい言葉までいただけて、本当にありがたいことだなあと思っています。
自分の”好き”を詰め込むことが差別化につながる
ワタナベさんが“好きなもの”が並ぶ店内
――経営は、開業時から順調でしたか？
ありがたいことに、「お客さまが来なくて困った」ということは今までありませんね。
時代柄か、ネットで名前を検索して来てくださったり、地域の方が来店してくださったりしています。また、開業がちょうどコロナ禍だったこともあり、マンツーマン施術を行うサロンを探して、遠くから車で来店してくださる方もいらっしゃいました。時代にあった形式だったのも、経営がうまくいった要因のひとつかもしれません。
――清澄白河にも多くのサロンがあると思いますが、他店との差別化などは意識していますか。
多くのスタッフを抱えるサロンだと、統一感を出すためにお店のコンセプトを作り出す必要があると思うのですが、「yadorigi」のようにひとりのスタッフが営むプライベートサロンだと、自然と「私そのもの」のカラーが全面に出ます。自分が好きなものや、美しいと思うもの、素敵だと思うものを選んで提供することが、自然とお店のコンセプトになると思うんですよね。ですから、施術や施術に使うアイテム、インテリアなど、お店に好きなものを詰め込んでいます。それが自然と差別化に繋がっているのかなと思います。
「なぜその髪型を？」悩みを見つけ出し、最適な提案を！
「人と人同士、大切なのは信頼関係だと思います」と話すワタナベさん
――「yadorigi」をオープンし2年以上経ちますが、売上を上げていくために大切だと考えていることを教えてください。
売上を上げていくためには、繰り返しお客さまに来店していただく必要があります。そのために大切なのは、「お客さまとの信頼関係」。信頼関係を結ぶために私が大切にしているのは、「ハイスタンダードであること」と「カウンセリング」の2つです。
繰り返し来店したくなるのは、自分が期待していた以上のサービスを提供されたとき。そういった意味で、カラーもカットも、シャンプーも、空間づくりに至るまで、すべてがハイクオリティであることを目指しています。
最近は時代の変化もあり、カラーやパーマなどの1つの技術に特化した美容師さんが増えていますが、逆に私は「特化しない型美容師」だと思っています。あらゆることをハイスタンダードにして、どんなお客さまがいらしても要望に答えたいんですよね。欲張りなのかもしれないです（笑）！でもそのおかげか「yadorigi」には、老若男女問わず、本当にいろいろなお客さまが来てくださるんですよ。
――顧客層が広いというのは、高い技術があるからこそですね！カウンセリングではどんなことを意識されていらっしゃいますか。
必ず聞くのは、「なぜその髪型をしたいのか」ということです。たとえば、「3cmカットをしたい」というオーダーがあったとしますよね。その理由が、「髪を伸ばしたいけれど傷んでいるから3cm切りたい」なのか、「本当はバッサリ10cm切りたいけれど、似合うか不安だから3cm切る」なのか知ることができれば、前者の方にはトリートメントを提案できるかもしれないし、後者の方には似合うショートカットを提案できるかもしれません。
言われたことをそのまま受け取るのではなく、発言の奥にある悩みやライフスタイルを知ろうとしながらカウンセリングを行っています。対面している時間に、どれだけお客様に寄り添って、どれだけお客様のことを理解できるか努めることが、信頼関係の構築につながると思います。
ワタナベエリカさんのサロン「yadorigi」が人気の3つの理由
1.マンツーマン施術を行う形式により、顧客の安心を得た
2.1つの技術に特化するのではなく、すべてに対してハイクオリティを求めている
3.オーダーの奥にある「悩み」を汲み取ったカウンセリングを実施している
後編では、ワタナベさんが雑誌やヘアメイクのお仕事など活躍の幅を広げている秘訣について伺いました。過去に著名なコンテストで優勝するなど、技術を研鑽してきたことが現在の活躍に繋がっているんだとか。ワタナベさんの活躍の秘訣がつまった後編もお楽しみに！
