お客様の満足とスタッフの成長に重点を置き、長くつきあえるサロンを目指す【美容師 相楽顕さん】#2
前サロンでの店長としての経験やスタッフとのチームワークを最大限に活かし、自身のサロン「lien.」で順調なスタートを切った相楽顕さん。ターゲットに設定した大人女性を中心にファンを獲得し、さらには男性や子供のお客様も増えているそうです。
後編では、お客様に長く通っていただくために大切にしていることや、スタッフの成長のために実践していること、そして「人に恵まれたからこそ今がある」というお話を伺いました。
お話を伺ったのは…
lien.(リアン)
代表 相楽顕さん
美容専門学校卒業後、都内の大手サロンに入社。その後、原宿のサロン「Tierra」に移籍してスタイリストデビューし、自由が丘店で店長として経験を積む。2020年6月に「lien.」をオープンし、プレーヤーとしても経営者としても活躍中。一人ひとりの骨格や髪質、ライフスタイルに合わせた持ちのよいカットを得意とし、特に大人女性から高い支持を獲得。
大人女性とそのファミリーがリピーターに
――コロナ禍でのオープンでしたが、滑り出しはいかがでしたか。
2020年の6月にオープンで、緊急事態宣言が解除されて急に動きが出始めた月でした。顧客の皆様には連絡を取らせていただいていたので、美容室に行くのをずっと我慢していた方達が一気に来店され、最初はかなり忙しかったですね。
お客様は前のサロンとの距離感に一番びっくりされていました(笑)。場所を迷うわけもないですし、スタッフも見知ったメンバーで安心して来ていただいたという感じはありましたね。これまでのお客様をまずは大切にしたかったので、オープンからしばらくは新規集客に関しては少し抑えつつ、顧客様メインでスタートしました。
――オープンしてすぐに軌道に乗った感じですね。そこから何か波があったりしましたか。
3ヶ月くらい経ってお客様が安定してからは、若手のスタイリスト2人がしっかりとお客様を増やせるようにということを一番イメージして動きました。なのでそこからは新規集客に一気に取り組んで、その2人もしっかりお客様をリピートさせてくれたので、今のところ順調に進んでいます。もちろん、月によって波はありますけど、すごくマズいなという月はまだないですね。
――そのように順調に進んでいる理由を分析すると、何だと思いますか。
スタッフひとりひとりが、自分のお客様でもそうでなくても、店のお客様全員に対して全力でやってくれているので、その気持ちがすごく伝わっているのが一番だと思います。
これは特に教えたからとかではなく、オープニングスタッフがそういうスタンスでいてくれたので、自然とそれが当たり前になっているのかなと。その空気感があるから新しく入ってきた子たちも同じようにしてくれているので、本当にありがたいですね。
――ターゲットは大人女性ということでしたが、男性のお客様も増えたそうですね。
男性の集客に対しては、集客サイト等で積極的に行なっていたわけではないのですが、奥様からのご紹介で来てくださるようになった方がとても多いんです。あとは、小学3年生以下のお子様はカット無料なので、ファミリーで来店していただいています。
――お子様のカット無料というのは、初めから設定されていたのですか。
前サロンで行なっていたものを、lien.でもそのまま取り入れています。入卒園シーズンや夏休みなど、いわゆるイベントごとが多い時期は特にご利用される方が多いですね。お子様連れのお父さんお母さんにご好評いただいています。
一番のモチベーションはスタッフの成長
――スタッフの技術向上のために実践されていることはありますか。
サロン内での勉強会を、定休日を除いてほぼ毎日行なっています。週に一度自主練習日があり、それ以外の日は自主練でわからなかったことの確認などをします。
やっぱり基礎が一番大事だと思っているので、その基礎を教える側のスタイリストがしっかりと共通で教えられているかを、たまにスタイリストだけで集まって確認し合ったりもします。そのうえで日々勉強会を行なうということが、技術の向上につながります。あとは、僕ができるだけサロンワークの中でスタッフの技術をしっかりと見ておくということは意識しています。
――相楽さんご自身のモチベーションアップにつながるものは何でしょうか。
常に先のことをいいイメージで考えるということと、スタッフの成長を見ることがモチベーションになっています。オープンから3年半ほど経ちますが、スタッフが成長する姿を見たときや、その成長が結果として現れたときが一番うれしいですね。
――結果に現れるというのは、例えばどんな風に?
具体的には、売上が伸びたときとか。美容師である以上、数字は常に意識しなければいけないので、スタイリストならやはりそこが成長の証になるかなと。アシスタントの場合は、今までできなかったことができるようになったときですね。それは現場にいなければわからないことなので、常に目を配るようにしています。
――サロンワークの中でスタッフの技術などに目を配るのは、なかなか大変だと思うのですが…。
たぶん、「慣れ」だと思います。お客様が多いときは同時に何人も見なきゃいけないこともありますが、そういうことを日々続けていると慣れていきます。前のサロンで店長をしていた頃に「常に目を配るクセをつける」ということをずっと言われてきたので、いつの間にか当たり前にできるようになりました。
お客様ともスタッフとも、「長いつきあい」をしたい
――今、経営者として大切にしていることは何ですか。
現場を見ることが大事だと思っています。今、スタッフ達がどういう状況にあるか、どういうところが成長して、どこができていないのか。それをしっかり把握しなければならないといけないですね。あとは、軸がぶれないようにすること。
――軸というのは?
何かを判断するときに、それがスタッフの成長につながるのかを一番の基準にしています。やっぱり、スタッフが成長することによってお店も成長すると思うので。
――プレーヤーとしてはどうですか。
先ほどもお話しした通り、長く来ていただくお客様というのを大事にしたいので、そのお客様の気持ちに常に寄り添うということです。長く担当させていただいているお客様だともう15年くらいになるのですが、それだけ年月が経つと生活環境なども変わってきますよね。その中で、「お客様の今」のヘアスタイルをつくる人間としてベストを尽くすことを大切にしています。
――今後の展望や目標を教えていただけますか。
お客様と長くおつきあいしたいのはもちろんのこと、スタッフのみんなにもlien.で長く勤めてもらいたいんです。今、産休・育休を取っているスタッフもいますが、そういう節目節目も一緒に喜んであげたいですし、で必要であれば店舗展開もしたいですね。スタッフが成長したり増えたりしたときに、働く環境をしっかり整えたいと思っています。
――独立して軌道に乗り、店舗展開も視野に入れている。ここまで進んでこられたのはなぜだと思いますか。
一番は、人に恵まれたということだと思います。まずは僕を育ててくれた方達と出会えたことが恵まれていました。教わったことを大切にしてしっかりと続けていく、これが僕自身やっている唯一のことかもしれません。そして、今頑張ってくれているスタッフ達がいること。これも、人に恵まれているというところですよね。
――最後に、これから独立を考えている美容師さんに向けて、ひとことお願いします。
独立するということは、自分ですべての責任を負わなきゃいけないし、すべてをやらなきゃいけない。会社に所属しているほうが環境が整っていてありがたいかなとも思う中で、独立するにはそれなりの覚悟が必要です。
僕自身が独立に向いているかどうかはわからないんですけど(笑)、自分が美容師としてやりたいことや軸がしっかりしている人には、向いているんじゃないかなと思います。
相楽さんが大切にしている3つのこと
1.人に恵まれたことに感謝する
2.お客様に寄り添う気持ちを忘れない
3.スタッフの成長を見守りサポートする
撮影/喜多二三雄
取材・文/井上菜々子