自身の経験からたどり着いたのは、女性スタイリストのためのシェアサロン。私の履歴書【美容師 NARUMIさん】#1

美容師のNARUMIさんは、都内の人気サロンでスタイリストとして活躍後、2022年7月に女性スタイリストのためのシェアサロン「nuu(ヌー)」を立ち上げました。女性が働きやすい環境にこだわったサロンづくりで多くの女性美容師の共感を得て、同じ年の12月には2店舗目となる「nuu fem(ヌー フェム)」もオープン。

前編では、nuuの代表になる以前の美容師としての経歴や、働きながら出産や子育てを経験する中でぶつかった壁のこと、そして「フリーランスとして自分が働きたいと思うサロン」がなかったからつくることにしたというエピソードをお聞きしました。

NARUMI’S PROFILE

お名前
NARUMI(なるみ)
出身地
宮城県
年齢
34歳
出身学校
日本美容専門学校
プライベートの過ごし方
旅行、推し活、子どもと遊ぶ
趣味・ハマっていること
旅行、推し活、韓国ドラマ鑑賞
仕事道具へのこだわりがあれば
手が小さいのでミニシザー

美容師としてひたむきに働きながら、20代半ばで出産

母やおば、親戚も美容師だというNARUMIさんにとって、幼い頃からごく身近な職業でした。

――まずは、NARUMIさんが美容師を志したきっかけを教えてください。

母が美容師で自分のサロンを立ち上げていたのですが、土日は私も母に着いて行って床掃除のお手伝いとかをしていたんです。小学校低学年の頃からずっと。なので自然と美容師を目指すようになって、ほかの選択肢を考えたことがなかったですね。

ただ、私が美容師になると言い始めたとき、母には「本当に覚悟があるならいいけど、おすすめはしない。ほかにも違う道がいろいろあるよ」と言われました。美容師の大変さをよく知っているからこその言葉だったと思います。東京の美容専門学校に行くことも初めは反対されました。宮城県出身なので、「仙台でいいじゃない」って。

――それでも東京にこだわったのはどうしてですか。

東京への憧れが大きかったですね。素敵な美容室があったり、キラキラと輝いている美容師さんがたくさんいたり、そういうのを雑誌で見ていたので。東京で就職したいから、やっぱり東京の美容専門学校のほうがいいのかなと思っていたんです。

――専門学校卒業後、どこのサロンに勤めたのですか。

最初に入社したのは、代官山にあるOOO/YY(オーオ シカシカ)です。アシスタントとして3年働かせてもらってから、表参道のMELLOW(メロウ)に移りました。そこでスタイリストデビューして、とにかく一生懸命な日々が5年近く続きました。お客様のことを知るためにたくさんお話しして、その中から得たことをヘアに落とし込んで、いかに自分を指名してリピートしてくださるかを考えて…。一人ひとりに集中して施術するので、家に帰ったら倒れ込むように寝てしまう。お客様とヘアのことをずっと考える毎日でした。

やめたいと思ったこともありますし、辛いこともたくさんありましたけど、だからこそ今やめたらもったいない、ここで折れるわけにはいかないと思いました。昔から、そういう気の強さがあったんですよね。

――そんな忙しい日々の中で学んだこと、得たことは何でしょうか。

人に対してもヘアに対しても、ひとつひとつ「追求すること」です。自由な気風のサロンだったのですが、ある意味、自分がしっかりしていないと自由って手に入れられない。それをすごく学ばせてもらった気がします。

――5年近く働いたサロンをやめることになったのはなぜですか。

私は24歳で結婚、25歳で出産したのですが、子育てしながら職場復帰したものの、働きにくさのようなものを感じ始めました。そんなとき、最初に勤めたサロンの先輩とお会いする機会があったんです。その方が独立して代官山にお店を出されるタイミングでした。一緒に食事をしながら悩みを打ち明けたら、「じゃあ、うちの店に来なよ。なるべく働きたいようにさせてあげられるから」と誘っていただいて。すぐにはお返事ができなかったのですが、いろいろ考えた末、その先輩のお店であるSOCO(ソーコ)で働かせていただくことになりました。

フリーランスになりたい。でも働きたいサロンがない…!?

NARUMIさんがSOCOに移籍したのは28歳のとき。子育てが大変な時期でしたが、オーナーや先輩美容師の存在が心強かったそう。

――サロンを移られて、仕事と子育ての両立がしやすくなりましたか。

子育てをしながら働いている方がすでにいらっしゃったので、私としてもすごく安心感がありました。しかも、その方は最初に勤めたOOO/YYでお世話になった大先輩だったんです。私がアシスタントのときとは少し違う関係性でまた仲良くさせていただいて、うれしかったですね。

――そのときは時短勤務ですよね。

そうです。10時〜17時のママさんタイムという感じで働いていました。ママ美容師の先輩がいることで、そういう働き方を選びやすかったし、環境が整っていたのでありがたかったです。

――そこから、どういういきさつでnuuの代表を務めることになったのでしょうか。

娘は今小学校3年生なのですが、1年生のときがすごく大変だったんです。保育園から小学校に上がるとき、子どもってウキウキしますよね。でも実際は本人が思っていたのと大きなギャップがあったみたいで、毎日、学校に行くのが嫌だと泣くんです。それが丸1年続いて、その姿を見るのが精神的にすごく辛くて…。どうしたらいいのかわからないし、私は10時から仕事なのでなんとか娘を学校に連れて行かないといけないし。

時短勤務とはいえ正社員なので、決まった時間に出勤・退勤して、基本給をもらうという働き方です。それももちろんよかったのですが、娘がそういう状態だったので、自由に時間を使えないことへのストレスが生まれてしまったんです。そこで初めて、私はフリーランスのほうがいいかもしれないという気持ちが芽生えました。

そんな悩みを抱えつつ踏み切れずにいたのですが、あるときオーナーに相談してみたら本当にすごく親身になってくれて、理解してくれたんです。

――それで、フリーランスになったのですか。

フリーランスになりたいのに、働きたいお店がなかったんですよ。シェアサロンも増えていたので、いろいろなお店をインターネットで調べて、見学にも行きました。でも、例えばインテリアや環境、システムなどいろいろなものが自分に合うと思うところがなくて。それを正直にオーナーに話したら、「自分でサロンをやればいいじゃん。応援するから一緒にやろうよ」と言ってくださったんです。

――すごいオーナーさんですね!

一人ひとりに寄り添ってくれるというか、柔軟さや共感力をすごく持っていらっしゃる方です。渋谷と表参道、札幌にも美容室を出していて、シーシャのお店も展開している経営のプロですし、私自身が働きたいサロンをつくるということに惹かれて、話がまとまりました。

「女性美容師専用」のシェアサロンをオープン

SOCOで5年ほど勤めたあと、2022年にnuuとnuu femを立て続けにオープンさせました。

――初めから、「女性美容師専用」と決めていたのでしょうか。

サロンをつくろうという話になったときから、女性だけで働きたいという思いがありました。オーナーは「それなら僕が上に立つより、NARUMIがトップになるべき」とおっしゃって、経営のことをイチから教えていただきながら、すべて任せていただきました。

私ひとりだったら、突然フリーランスになって、しかもサロンを出すなんてハードルが高すぎます。私にとっては本当においしい話すぎますよね(笑)。

――おいしいだけでなく、怖さもありませんでしたか。

不思議と怖さはなくて、やってみたいという気持ちしかありませんでした。とにかくやってしまえ、急に経営者になるけど困ったら聞いてしまえばいいって。今思えば、本当に勢いで始めた感じですね。

――そもそも、なぜ女性だけで働きたいと思ったのですか。

フリーランスになりたいと思ったきっかけが、やっぱり子育てに関することで、自分の時間や子どもと向き合う時間がほしいということでした。同じように感じる女性美容師さんが、世の中にたくさんいるだろうなと。女性美容師専用にすれば、そういう部分に共感できる人たちが集まるので、働きやすくなるんじゃないかなと単純に思ったんですよね。

シェアサロンはどんどん増えていますけど、女性美容師専用というのはあまりないですし、需要があるのではないかと考えました。女性美容師であれば、ママだろうと独身だろうとどんな立場でもOKです。

――新たな着眼点でシェアサロンを始めたとき、周りからの反応はいかがでしたか。

性別を限定することに対して、「男女でカテゴリーを分けるのはナンセンス」とか「そういう時代じゃないよ」という声が挙がるかもしれないと思いましたし、女性に特化することが本当にいいのだろうかという不安も少しありました。でも意外と、共感してくれる人のほうが周りには多かったです。「とても働きやすそう」など好意的な反応が多くて、私だけでなく世の中も同じ思いだったんだという結論に至りました。

ただ、例えばの話ですが、「男性だけど心は女性です。nuuで働きたい」と言われたとしたら、私はOKかなと思っています。見た目が男性だからダメというのは、なんだか差別している感じがするので。もしそういう方がいらっしゃったら、大歓迎ですとお伝えしたいですね。

――現在、nuuではどんな女性美容師さんが働いているのですか。

全員に共通して言えるのは、本当に自立している女性ということ。それぞれ個人事業主として独立し、顧客を抱えて、生活が成り立っているわけですから。とても熱心な方が見事に集まっているように感じています。素敵な人たちばかり来てくれて、ありがとうございます!という思いです。

シェアサロンはさまざまな美容師さんが来るので、管理が面倒かなとか、何かしら問題が起こるのかなとか、ちょっと思っていたのですが全然そんなことはありませんでした。皆さんがお互いに気遣いや心配りをしていて、店内もいつもキレイに使ってくださって、すごくうれしいです。

――年齢層や人数はどれくらいですか。

20代半ばから50代まで、幅広い層の方がいらっしゃいます。女性美容師専用というコンセプトに共感してくださり、大手シェアサロンもたくさんある中でnuuを選んでくださっているので、本当にありがたいですね。人数は、nuuとnuu femを合わせて30人弱くらいです。


後編は、nuu&nuu femのこだわりやSNSの見せ方の工夫、今後の構想などをお伺いします。

撮影/高嶋佳代
取材・文/井上菜々子

1
2
求人数3万件!リジョブで求人を探してみる

Salon Data

nuu fem
住所:住所:東京都渋谷区鴬谷町12-7 ヴィラロイヤル代官山1F
電話:070-9909-2754
この記事をシェアする

編集部のおすすめ

関連記事

近くの美容師求人をリジョブで探す

株式会社リジョブでは、美容・リラクゼーション・治療業界に特化した「リジョブ」も運営しております。
転職をご検討中の場合は、以下の地域からぜひ求人をお探しください。

関東
関西
東海
北海道
東北
甲信越・北陸
中国・四国
九州・沖縄