“一生つきあえる”美容師&サロンであるために。あらゆる面でアップデートし続けたい!【tas TOKYO 西口朝都さん】#2

この春リニューアルオープンした「tas TOKYO(タス トウキョウ)」は、「理想の自分に出会いたい」「美容室でうまくオーダーできない」という人の救世主サロン。一流の技術はもちろんのこと、巧みなカウンセリング力で似合うヘアを提案してくれます。

オーナー美容師である西口朝都さんは、お客様とスタッフの幸せを追求することがモットー。その思いに共感して集まったメンバーとともに、サロンを進化させ続けています。この後編では、特に力を入れている教育面についてや、サロンとしての強み、西口さんが考える美容師人生のテーマなどをお聞きしています。

お話を伺ったのは…

tas TOKYO

代表・美容師 西口朝都さん

2013年に美容専門学校を卒業後、Un ami(アンアミ)に入社。新宿のjoemi by Un ami(ジョエミ バイ アンアミ)のオープニングメンバーとして参加し、2017年にスタイリストデビュー。同年オープンしたUn ami Kichijoji(アンアミ キチジョウジ)に異動し、副店長、店長、代表を歴任。2023年4月に独立して「tas(タス)」を立ち上げる。2026年4月に拡張移転し、「tas TOKYO(タス トウキョウ)」としてリニューアルオープン。

インスタグラム

「スタッフは社内顧客」と捉えて、経営理念を軌道修正

「スタッフが安心できる環境を作りたい」と話す西口さん。「そのためには給与、働き方、教育などの土台をしっかり整えないと」。

――サロン名の由来は何ですか。

プラスの「足す」が由来です。美容師には裏技も近道もなくて、目の前に来てくれたお客様に喜んでもらうというシンプルな仕事だと思っています。シンプルだけど、めちゃ深い。一人ひとりのお客様の満足を積み重ねていくことは「足し算」だなと思ったんですね。

今はSNSで集客をすることも多いですが、そちらは「かけ算」な感じがするんです。何かひとつバズったら100人来るかもしれない。すごいことだし、今の時代に必要なツールではあるけど、100人全員が喜ぶかどうかはまた別問題で。僕が大切にしたいのは足し算だと思い、「tasに関わる人にプラスを」という意味で名づけました。

――関わる人ということは、お客様はもちろん、スタッフにもプラスを?

そうですね。スタッフに対しても同じ考えです。仲間になってくれたからには、本当に上手くなってほしいし、そのためにいくらでも面倒を見たいと思う。そういう気持ちにさせてくれる子たちが、実際にメンバーになっています。

やっぱり目の間にいるからこそわかること、できることがあると思っています。だから例えば、SNSでリクルートをかけるけどサロン見学は必須です。SNSだけ見て面接を希望されても、絶対に受けていません。

「サロン名は覚えやすくてキャッチーで、ちょっと可愛い響きにしたい」という思いもあったそう。まさに「tas」はその通りの名前。

――創業2年目という早い段階で、会社として方向転換を図ったそうですね。何を変えたのか、またその決断の理由は何だったのか教えてください。

僕はお客様に対する思いが非常に強かったので、1年目はとにかく「お客様のために」を大事にしていました。それが間違っていたわけではなく、今もその思いは変わりません。ただ途中で、「スタッフもお客様」だと気づきました。みんな、この環境や待遇や教育を選んでくれているお客様なんです。そう思ったら、まずスタッフを幸せにした先に、そのスタッフがお客様を幸せにするという構図が健全なんじゃないかという考えに至りました。

――なるほど。お客様とスタッフ、どちらが欠けても成り立たないですしね。

そこで2年目から経営理念を修正し、MVV(ミッション・ヴィジョン・バリュー)も再定義しました。お客様に対するMVVとスタッフに対するMVV、思い切って2つに分けて、どういうお店を目指すのか明確にしたんです。そのほか、給与体制や働き方などいろいろな面を見直しました。

――そういった改革をしたことで、スタッフさんに何か変化は見られましたか。

正直、途中での方向転換に立ち上げメンバーが賛同してくれるのか、もしかして離れてしまうのではないかと不安もありました。でもみんな着いてきてくれて、本当に感謝です。新たに仲間になったスタッフも、すべてに共感した上で来てくれた素敵な人たちなので、店としてのまとまりや働きやすさを感じています。

旗艦店としてリニューアルし、教育に力を入れる現在

明るく心地よい空間の「tas TOKYO」。元の店舗と比べてキャパは3倍に。「スタッフは今11人。もっと増やせますね」と西口さん。

――今年の4月に拡張移転し、「tas TOKYO」として新たなスタートを切りました。店舗を増やすのではなく、拡張移転を選んだのはなぜですか。

スタッフ数が増えてきた時、元の店をそのまま続けながら小規模で2店舗目を出すこともできたと思います。でも、店の数が増えても既存メンバーにとってチャンスが増えるわけではないような気がしました。ひとつの場所にまとまった人数がいるからこそできることがあると思い、より広い場所に移ることを決めました。

――例えばどんなことができると考えたのでしょうか。

主に、教育体制の充実化です。組織立ててしっかり教育できる母体のようなサロンを作って、そこから違う形も展開していきたいなと。だから旗艦店の意味を込めて、サロン名に「TOKYO」とつけ加えたんです。

――教育面で取り組んでいることと言うと?

うちは「1年半でスタイリストデビュー」をアシスタントの目標に掲げていますが、今って二極化していますよね。めちゃくちゃ早期デビューか、しっかり時間をかけるか。どちらもメリット・デメリットがあると思っています。

例えば1年でデビューした場合、その後に学ぶ場を担保するのがなかなか難しい。目の前のお客様のことで精一杯になりがちですし。学ぶチャンスを逃すと、一生美容師を続けるための技術が身につかないという問題が出てきます。これは誰も幸せにならないと思っているので、絶対にやりたくないんですね。

一方で、僕自身は丸4年アシスタントをしました。確かな技術は身につくかもしれないけど、そこまで長くなくてもよかったかなというのが正直なところです。長すぎると、楽しさよりしんどさが上回ってしまったりして、離職の一因にもなります。

――両方のいいとこ取りができたらいいですよね…。

なので、tas TOKYOでは「早く楽しく上手く」を目指しています。早くデビューできて、ずっと楽しく続けられて、そして間違いなく技術も上手くなれる。それが教育の大テーマ。必要なことは何ひとつ省かず、非効率なことは全部排除して、とても濃い内容を1年半で学べるカリキュラムを作りました。

そこで大切なのが教える側の問題です。ベーシックなことは誰が教えてもバラつきなく高水準を保ち、その先で個人個人のこだわりも伝えられるようにしたい。そのために僕が特に力を入れているのが「教育者の教育」。人を育てられる人を育てたいと思っています。高い基準で教えられる人が増えた方が絶対いいですから。

――先ほど、デビュー後の学ぶチャンスの話が出ましたが、その点はどういったフォローをされていますか。

まだ歴の浅いスタイリストに向けて、月1回の勉強会をしています。技術だけではなく、カウンセリングや集客、紹介、お客様心理など、いろいろなテーマを設定して行っています。今はいったん休止しているのですが、今後も続けていくつもりです。

サロンの強みは「似合わせカット」と「カウンセリング」

先輩に言われた「ベストセラーよりロングセラーになれ」という言葉が、今も胸に残っているという西口さん。目指しているのは「一時のバズりよりも一生のつきあい」。

――お客様に対するサービスやメニューでこだわっていることは何ですか。

「似合わせカット」と「カウンセリング」が完全にうちの強みになっています。

「似合わせカット」は、例えばショートヘアとか髪質改善のようにわかりやすいワードではありませんが、お客様の潜在ニーズだと思っています。お客様が求めているのは、プロにおまかせして、自分の思いを汲み取ってもらって、最終的に一番自分に似合う髪型にしてもらうことではないでしょうか。だから、わかりやすい顕在ニーズではなく、お客様自身も気づいていないニーズをつかみに行きたいんです。

――「似合わせカット」というワードでオーダーはしないかもしれないけど、似合わせてほしいのは大前提ですもんね。

わかりやすい打ち出しではないから集客が難しいのはわかっているんですよ。でも、ショート、髪質改善、ハイトーンカラー…、入口が何であっても終着点は似合う髪型。今までショートだったけど伸ばしたくなったり、ハイトーンカラーをやめたくなったり、やりたいことがいろいろ変わっても、「似合う」ことが大切であるのは変わらないのでは。

僕はお客様と長くおつきあいして、美容師として一緒に人生を歩んでいきたい。だから「似合わせカット」にこだわっているんです。

――お客様の潜在ニーズをつかむには、カウンセリングが重要というわけですね。

そうなんです!カウンセリングの時に、9割の美容師が使うけれど僕が絶対に使わないワードは「今日はどうしますか?」。これを聞くとゴールの8割をお客様が決めることになります。「ショートにしたいです」→「どんなショートがいいですか?」→「この写真の感じでお願いします」→「わかりました」という風に。

極論ですが、それなら担当する美容師が自分である意味もないし、リピート率も低いんですよ。似合うショートにできてお客様も喜んでくださっても、その時お客様の頭にあるのは「私が選んだ髪型は間違っていなかった」ということなので。

――では、西口さん流のカウンセリングとは?

新規のお客様の場合はまず、「どうして来てくれたんですか?」というニュアンスで聞きます。メンテナンスの気分なのか、髪型をガラッと変えたいのか、たまたま近くに寄ったからなのか…。お客様の温度感を知ることから始めています。

例えばそこで「ロングからボブに切りたい」と言われたとしたら、その理由を聞いて、奥にある本当に叶えたいニーズを探ります。そうすると、「実は彼氏にサプライズしたくて」だったり「仕事の節目で気分を変えたくて」だったり、何かしら出てくる。それに合わせて別提案やプラスアルファの提案もできますよね。それこそプロの仕事だと思うんです。

ちなみに何度もリピートしてくださる方は、大体「おまかせ」です。美容室に行く時、予約をして、なりたい髪型も考えて、見本写真を探して…って結構大変じゃないですか?毎日髪のことを考え続けている僕たちにまかせて、お客様はサロンに来てくれるだけでいいんです。お客様にとって「楽に」ニーズが満たされなかったら、一生のつきあいはできないんじゃないかなと思います。

――「一生つきあえる」ことが美容師人生のテーマなんですね。経営者として大切にしていることは何ですか。

僕が大事にしていること、本質だと思っていることに共感してくれる人たちを絶対に幸せにしたいです。つまり、今一緒に働いてくれる美容師や今後仲間入りする美容師が幸せになれるように、いろいろな面でどんどんアップデートしていきたいなと思っています。

――では最後に、西口さんにとって「働く」ということは?

直感的に思い浮かんだ答えですが、「人の役に立って価値を循環させること」です。美容師という仕事は、役に立つことだし誰かにとっての価値になることだと思っています。

でももしお客様が喜んでいないとしたら、僕はそれを仕事と呼びません。なぜなら、その価値が届いていないから。趣味なら誰にも迷惑をかけないし影響も与えないけど、仕事なら自己満足ではなく価値をちゃんと届けないと。だからこそ自分の好きなことを仕事にするのは覚悟がいりますよね。

人の役に立って価値を感じてもらうと、自分も豊かになり、循環が生まれます。美容師は働くことで精神的豊かさも金銭的豊かさも両立できる、本当に素晴らしい仕事だと思っています。

西口さんが考える、成長と成功に必要な3大要素

1.愛

2.好奇心

3.自己理解

撮影/高嶋佳代
取材・文/井上菜々子


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tas TOKYO
住所:東京都渋谷区神宮前3-42-2 VORT外苑前Ⅲ 4F
TEL:03-6427-2170

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