「今の時代、SNSは履歴書の続き。投稿を見れば、その人の考え方や人柄、継続力まで伝わります」【Befine Coo AVEDA】森下容道さん #2

SNSでの発信が日常になっている美容業界。採用においてもSNSの影響力は年々大きくなっています。そこで本企画では、リアルなSNS活用術を現役美容師さんにインタビュー。

今回は、独自のブリーチ技術『タテムラブリーチ®』を考案し、AIを活用したSNS発信でも注目を集める「Befine Coo AVEDA」の森下容道さん。【後編】では、フォロワーよりファンを増やす発信の考え方や、採用担当としての視点を伺いました。

「Befine Coo AVEDA」CMO森下容道さん

2017年 「アヴェダ フォトコンテスト」日本グランプリ受賞、世界大会に進出。Befineに所属しながら、教育やサロン運営を事業化。再現性が高く高品質な仕上がりをかなえる『タテムラブリーチ®』の考案者で、セミナーやオンラインサロンを手がけ、全国に認定講師を輩出している。

Instagram:@befine_pra_morishita

発信は「ゼロか100」。あえて"違和感"を残す動画づくり 

Instagramの投稿ではAI生成動画で“お客さまのヘアデザインの可能性”追求。単に髪が伸びる様子を見せるのではなく、細かな編集テクニックでAIっぽさを抑え、思わず最後まで見たくなる動画づくりを徹底している。⁡

――これからの時代、美容学生や若手もSNSにAIを取り入れた方がいいのでしょうか?

必ずしも全員がAIを使わなくてもいいと思っています。分かる人がやればいいですし、「これを使ってみて」と教えてもらって使うくらいでも十分です。

もしやるなら、とことんやる方がいいですね。SNSもまったく同じです。学生さんも「なりたい目標」があり、その目標にAIを使った方が近づけるのであれば活用すべきですが、自分の目指す方向性と関係がないのであれば、今は技術の習得や通常のSNS発信に注力した方が良いと思います。

――やはりSNSの発信自体は必要でしょうか?

発信も「ゼロか100」でいいと思っています。今は売り手市場なので、入りたいサロンが特になければ、どこでも働ける時代です。入りたいサロンや明確な目標があるなら、絶対に発信した方がいいですが、中途半端に取り組んで時間を取られてしまうくらいなら、SNSではなくリアルなスキルや魅力を上げるために時間を使うといいと思います。

――普段の動画作りにおいて、特に意識しているポイントやこだわりを教えてください。

一番は、見ている人が見やすい構成にすることです。その上で、あえて「ちょっとした違和感」を入れるようにしています。 きれいすぎる映像は、そのままスルーされて流れてしまいがちなんです。AIも完璧に近いものを作ってきますが、完璧すぎると面白みがありません。あえて不自然な部分や違和感というノイズを入れることで「ありそうで、ちょっとない」独自性を生み出し、差別化を図っています。

――具体的にはどのような違和感を入れていますか?

例えば、髪の毛の不自然な伸び方などです。普通に考えたらおかしいですよね。逆に、きれいにつなげすぎてしまっても、ただの場面転換に見えてしまいます。その微調整を繰り返して、面白いものができるまで何度も試行錯誤を重ねています。

――違和感を持たせることで、どのような効果がありますか?

最近は、見る側にも「AIアレルギー」のような反応が出ていると感じます。テレビCMだと分かった瞬間にスキップしたり、広告をスルーしたりするのと同じですね。「あ、これAIだな」と思われるとすぐに飛ばされてしまうので、AI特有の無機質な空気感を消すという意味合いがあります。

採用で見るのは、完成度よりも「成長が見える人」

コンテストで受賞した店長をはじめ、スタッフ同士が互いに高め合える環境がBefineの魅力。一人ひとりの成長を全員で後押しする風土が根付いている。

――採用の場面で、学生さんのSNSを見る際、どのような点に着目してご覧になっていますか?

投稿する内容自体は、極端なものでなければ何でも構わないと思っています。それよりも「成長意欲があるかどうか」を見ています。今何ができているかという完成度よりも、入社してからどのように伸びていくかを重視しています。

地方サロンなので、最初からSNSをバリバリ使いこなしている子を求めているわけではないんです。フラットな状態から入ってきてもらって、そこからどれだけ積み上げていけるか。そっちの方が大事だと思っています。最初から完成度の高い人を求めるというよりは、「一緒に育っていこう」という感覚です。

――SNS発信を通じて「魅力的だな」「一緒に働きたいな」と感じる美容学生は、どのような投稿をしていますか?

技術が上手な人よりも、「成長が見える人」に魅力を感じます。昨日より今日、今日より明日と、一歩ずつ前に進んでいる様子が伝わる投稿は応援したくなります。

また、周囲への感謝や学んだこと、自分なりの気づきを言葉にできる人には人間的な魅力を感じます。SNSは自分を大きく見せる場所ではなく、自分の「成長記録」です。うまく見せようとするよりも、素直に努力を積み重ねられる人と一緒に働きたいですね。

――今からSNSを活用するなら、まずはどういった部分に注力すべきでしょうか。

フォロワー数よりも、「誰に覚えてもらうか」を大切にしてほしいです。美容学生なら、毎日の学びや挑戦、作品づくり、失敗から得たことなどを発信するだけでも十分価値があります。SNSは将来のお客さまだけでなく、採用担当者や先輩美容師も見ています。

だからこそ、自分というブランドを少しずつ育てていく意識が大切だと思います。

――「SNS発信が苦手」「何から始めればいいかわからない」という学生に向けて、おすすめのファーストステップがあれば教えてください。

まずは毎日1枚、写真を撮ることから始めてください。作品でも、練習風景でも、学んだノートでも構いません。そして「今日学んだことを1行だけ書く」。最初からバズる投稿を目指す必要はありません。継続すると、自分の成長が資産になります。SNSは才能よりも、習慣が勝つ世界だと思っています。

――学生時代からSNSを運用しておくことは、就職活動や、入社後のスタイリストデビューなどにどう活きてくるとお考えですか。

今の時代、SNSは履歴書の続きだと思っています。投稿を見れば、その人の考え方や人柄、継続力まで伝わります。さらに、学生時代から発信を続けている人は、デビューしたときには応援してくれる人がすでにいます。美容師は技術だけではなく、「この人にお願いしたい」と思ってもらう仕事です。

人間的な魅力がなければ、支持されにくい時代だからこそ、自分の趣味や考え方を発信して、共感を生むことが大切になります。SNSは、その信頼を少しずつ積み重ねられる場所だと思います。

意味や答えばかり求めず、非効率なことの中にこそ面白さがある

――今後、森下さんがSNSを通じて新たに挑戦したいことはありますか?

美容とAI、そして教育をより融合させていきたいと考えています。美容師の価値は、AIが発達するほどむしろ高まっていくはずです。だからこそ技術だけでなく、思考や人間力、教育の考え方まで発信し、美容師という職業の可能性を広げていきたいですね。SNSを通じて、日本だけでなく海外にも日本の美容師の価値を届けていきたいです。

――どこまでも未来を見据えて挑戦される姿勢、本当に刺激になります。最後に美容学生や就活生へメッセージをお願いします!

一度、がむしゃらにやってみると楽しいですよ。今は始める前から答えが出すぎていて、効率ばかりが求められる傾向がありますが、意外と非効率なことの中にこそ面白さが隠れているものです。

例えば、缶蹴りや鬼ごっこも、合理的な目的を考えたら特にありませんが、子どもたちは楽しそうに遊んでいますよね。ですから、意味や答えばかりを求めすぎず、まずはやってみる。そうすることで見えてくるものがあります。AIを活用している立場から言うのもおかしな話ですが(笑)。

美容師は人の人生を変えられる素晴らしい仕事です。髪を切るだけではなく、自信や勇気、笑顔まで届けられます。だからこそ学生の今は技術だけでなく、人としての面白みを磨くといいですね。

たくさんやってみて、たくさん失敗してください。その経験は、必ずあなただけの価値になります。自分を信じて努力を続けていってください。美容業界には無限の可能性があります。皆さんと一緒に、この業界をもっと魅力的な世界にしていける日を楽しみにしています。応援しています!

――実体験の詰まった温かいエールをありがとうございました!

取材・文/長井まき


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