サロンとスタッフを大切に育てながら、最後までプレイヤーとしてハサミを持ち続けたい【Hank. 代表 堀江昌樹】#2

サロンワークはもちろん数々のメディアでも活躍中の堀江昌樹さんは、美容学生時代も美容師になってからも「結果を出す」ことにこだわって練習や工夫を重ね、着実にキャリアを積んできました。2024年に自身のサロン「Hank.」をオープンさせてからは、経営者という立場とプレイヤーのバランスを取りながら、ますます精力的な仕事ぶりを見せています。

後編では、独立を決めた経緯やHank.のコンセプト、サロンやスタッフに対する思いなどを伺います。


美容専門学校を卒業後、2002年にapish(アピッシュ)入社。25歳でスタイリストデビューし、28歳の時にapish jeno(アピッシュ ジェノ)の店長に就任。全店統括のクリエイティブディレクターを経て、2017年2月に自身が代表を務めるJENOをオープン。巧みなカット技術を武器に、サロンワークのほか各種メディアのヘアスタイル撮影にも数多く携わる。JHA、THAなど有名コンテストでの受賞歴も多数。apishを退社し、2024年4月に新店Hank.をオープン。カット技術や撮影ノウハウなどを学べるオンラインサロン『ホーリーのオシャレカット塾!』も好評。

Instagram @horie_hank

デザインを任せられる仲間を得て、表参道にHank.をオープン

最初に独立を意識した頃、THAというコンテストのリアルデザイン部門でグランプリ、クリエイティブ部門で準グランプリのW受賞を成し遂げた堀江さん。「美容師としてのターニングポイントになるできごとだった」と振り返ります。

――独立を考えたのはいつ頃ですか。

まず35歳くらいの時に一度、独立を考えた時期がありました。坂巻さんに相談したところ、「apish jenoからapishを外してJENOという名前にして、社内独立という形にするのはどうか」と言われたんです。正直、その時は独立資金もなかったし、apishという会社への感謝もあるし、みんなとうまくつながりながら新しいことを始めるのもいいかもしれないと。それで、坂巻さんの提案をありがたく受けてJENOをスタートし、丸6年在籍しました。

――自分で店を出そうと思ったきっかけは何ですか。

一番大きなきっかけは、新型コロナウイルスの流行です。僕はJENOの代表ではありましたが、まだapishの社員として守られながら店を運営する立場でした。仲良くしている美容師は独立して店を経営している人が多く、彼らのコロナ禍の中での精神状態やスタッフへの向き合い方を見て、とても考えさせられるものがありました。人として、美容師として、経営者として成長していく姿に感銘を受けたんですね。

例えリスクを背負っても、想像がつかない未来へのワクワクの方が大きい。自分も人生をかけてトライしてみたい!そんな気持ちが強くなったんです

――Hank.をオープンするにあたり、どんな準備をされたのでしょうか。

これまでは店の代表といっても、経営よりデザインに振り切って集中できる環境だったんですね。でも、自分で店を立ち上げるとなったら、僕自身がずっと表に出るやり方では長続きしないなと思いました。だから、デザイン面を任せられる人が誰かいないかなというのは、独立を考え始めた頃からずっと思っていました。

そんな中で声をかけたのが、米澤香央里さんです。THA(TOKYO HAIRDRESSING AWARDS)の審査員同士として会ったのがきっかけでよく話すようになり、飲みに行くようにもなった美容師仲間でした。提案や話し合いを重ねて米澤さんの決心がついてから、一緒にオープン準備やクリエーション撮影などに取り掛かりました。

――ともに店を作る相棒として、米澤さんに声をかけた理由は何ですか。

まず、センスがとてもいいと思いました。話しているうちに、彼女の真面目さや情熱、美容のことに真剣に向き合う姿を目の当たりにして、すごく刺激をもらって。仲のいい美容師さんはたくさんいますが、「一緒に仕事がしたい」と思ったのは初めてかもしれません。米澤さんとならきっといい美容室を作れると思ったので、すごくプッシュしましたね。

――Hank.という名前はどのように考えたのですか。

自分の名前が堀江なので、Hから始まる言葉がいいなと思っていろいろな候補を考えていました。その中にたまたま「Hank」という単語があり、髪や糸のひと束のことや、船の帆をまとめる金属の輪のことだったんですね。何かを束ねるという意味から、「結束」や「ご縁」を感じられる言葉だなと思っていました。

米澤さんが候補を見返してくれていた時に、「I hank you」というフレーズが出てきたそうです。感謝しますという意味があり、「Hank you」でありがとうということだったので、ますます魅力を感じました。「感謝」や「ありがとう」は、仕事をするうえで一番大事にしている言葉なので、サロンの名前にもその思いを込めて「Hank.」に決めました。

経営者として、一緒に働くスタッフたちの人生を背負う覚悟を持つ

物件探しに難航したものの、表参道という人気エリアでHank.をオープン。洗練された店内は、おしゃれなだけでなく居心地のよさも感じられます。

――お店のコンセプトを教えてください。

「デザインを通じて感動を追求し、笑顔の連鎖を広げる」というのがHank.のコアにあります

デザインと言ってもクリエイティブの意味に限らず、捉え方は幅広いものです。スタッフを育てるという意味にも使えますし。まずは目の前のお客様を幸せにする、店に関わるスタッフを幸せにすることが大前提にありますが、自分たちが生み出し発信するものからいろいろな人が影響を受けて、幸せになってもらって、その連鎖を広げていただけるような活動ができればと思っています。

――初めてお店に伺いましたが、とても素敵な雰囲気です。空間作りでこだわったことは?

家のように落ち着ける部分や美術館のように凛とした雰囲気がある部分など、スペースごとに世界観を少しずつ変えて飽きないような空間作りを意識しました。床の素材も、入り口は石、シャンプーブースはタイル、セット面は木…と場所ごとに変えています。

――オープンから1ヶ月と少し経ちましたが(取材時)、現在の心境はいかがですか。

まだまだこれからではありますが、1ヶ月目の目標としていた数字はちゃんとクリアできましたし、日に日にスタッフのチームワークがよくなっているなと感じます。スタッフ一人一人のいいところもより見えてきたので、毎日がすごく楽しいですね。

――スタッフの採用に関して、意識していることはありますか。

一緒に働いてもらう以上、その子たちの人生を背負うわけです。「美容師としてちゃんと成功できるように育てる」という覚悟を持って採用しているので、時間とパワーをかなり使いますね。採用する側としてジャッジさせていただきますけど、僕たちは面接に来る子たちにジャッジしてもらう立場でもあると思っていますし、入ってよかったと思われるお店にしないといけないと思っています。

――もう少しメンバーを増やす予定ですか。

目標としては、中途スタイリスト2名と、中途アシスタント2〜3名ほど入ってもらって、現在のメンバーと合わせて8〜9名くらいが理想的ですね。そうすると、定休日を作らずにシフトで回せると思うので。

スタッフは完全週休2日制なので、今は店の定休日である火曜日ともう1日で休みを取っています。まだ人数が少ないので、日によっては僕とアシスタントのふたりだけで営業することもあります。なるべくスタッフみんなが揃っていた方がいいので、7月からは定休日を増やして、週のうち2日間丸々閉めてみようかなとも思っているんです。

――店自体が完全2日定休というのは、あまり聞いたことがないかも…。

そうですよね。ある意味チャレンジですが、ありがたいことに撮影やセミナーの仕事が多いので、そちらの収益でうまく回せたらいいなと。

――セミナーなどの仕事はどれくらいのペースで受けているんですか。

今は経営の方に自分の仕事のボリュームを置いている時期なので、以前ほど多くはありませんが、それでも毎週何かしら入っていますね。「TOKIKATA」という髪のクセを取るシザーコームの講師を務めているので、そのセミナーだったりとか。

ひとつひとつの継続の積み重ねが今につながり、未来を紡ぐ

「生活の中で何かを続ける習慣を身につけると、仕事も継続できる」という堀江さんがプライベートで続けていることは、朝のランニング。28歳から続けてルーティーンになっているそう。

――独立して経営者となりましたが、プレイヤーとしてもずっと続けたいですか。

もちろんです!死ぬまでハサミは持ち続けたいです。経営者とプレイヤーのバランスはどうなるかわからないですけど、もし美容師としてサロンに立つのが週に1、2回になったとしても、やりたいですね。やっぱりデザインが好きですから。

――堀江さんにとって、「働くこと」とは?

大抵の人は、1日の中で働いている時間が長いですよね。だから、いかに楽しんだ者勝ちかなと思うんです。僕にとって美容師というのは、趣味の延長に仕事があり、仕事の延長に趣味があるような、どちらの感覚も持てる職業のひとつだと思っています。そういう仕事を選べたことがありがたいです。

――長年に渡り人気サロンで活躍し、さらに自分の店を立ち上げることもできた秘訣というのは、何だと思いますか。

まずは、継続する力です。何かを続けられるかどうかというのも才能のひとつだし、すごく大事なこと。何事も一度で成功するというのはなかなか難しく、結果が出るまで続けたからこそ今があると思うんですね。

「インキュベートの法則」というのがあって、21日間続けると、習慣になって定着するらしいです。集客のためのSNS投稿でも技術の練習でも何でも、まずは21日間頑張ってみるといいかもしれません。

あとは、人に感謝すること。今の自分があるのは、自分だけの力ではありません。やはり親がいてくれたり、今までの自分を支えてくれた美容師さんがいたり、自分の店に入ってくれたスタッフがいるからこその自分。それを忘れたらダメですよね。

そして、自分を信じることも大切だと思っています。

――自分を信じることって、難しいと感じる人もいるかもしれません。何かアドバイスはありますか。

自分が信じてあげないと他の人にも信じてもらえないと思うので、まずは「自分ならできる、大丈夫」って口に出して、自分に言い聞かせることも大事かなと思いますね。

子供の頃、祖父から「できるできる、必ずできる。自分なら必ずできる。自分を信じてやり続ければできる」と書いた紙をもらったことがあるんです。親元を離れて美容専門学校に通っていた時はその紙を毎日見ていたし、コンテストやヘアショーの前にもそれを見て挑んでいました。

自分の力以上のことや特別なことをやろうとすると緊張するので、普段通りの自分でいいと自分に言ってあげてください。普段の自分通りで結果を出すには、準備や練習といった過程がすごく大事。コンテストでも何でも、それまでにどれだけのことをしたのか、どんな風に取り組んできたのかということなんですよね。

成功のための3つのポイント

1.結果が出るまで継続すること

2.自分を支えてくれる人や関わってくれる人に感謝すること

3.準備や練習の過程を大切にしたうえで、自分を信じること

撮影/高嶋佳代
取材・文/井上菜々子

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Salon Data

Hank.
住所:東京都渋谷区神宮前3-6-4 PURE OMOTESANDO 1F
電話:03-6804-5722
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