カット練習で感じた大きな壁。心を折らないために意識したのはプライベートの充実「NERO HAIRSALON NAVY」赤津美奈さん
2012年に渋谷でオープンし、現在は4店舗を展開する「NERO HAIR SALON」。そのなかの1店舗である「NERO HAIRSALON NAVY」に所属するのが、2020年4月に入社し、5年目を迎えるスタイリストの赤津美奈さんです。
前編では赤津さんが美容専門学校時代に体験したことや、入社直後に感じたことについてお話しを伺いました。
後編では新人時代の赤津さんが感じたさまざまな壁をどう乗り越えたかについて伺います。赤津さんが精神的に一番辛かったと振り返るのが、アシスタントを卒業しジュニアスタイリストになったときだったといいます。
後輩のフォロー、自分の技術面など求められることが一気に増え、心の余裕をなくしていた赤津さん。そんなときに赤津さんが選んだのはプライベートの充実だったそうです。自分には美容師しかないという思いがあるからこそ、心を休ませることを優先し、無事にスランプを乗り越えることができたといいます。
今回、お話を伺ったのは…
「NERO HAIRSALON NAVY」スタイリスト
赤津美奈さん
福島県出身。東京の美容専門学校卒業後、2020年に「NERO HAIR SALON」に入社。現在は「NERO HAIRSALON NAVY」のスタイリストとして、活躍中。ナチュラルななかにモードさをプラスしたボブ、ショートを得意とする。
求められることが増え、精神的に辛かったジュニアスタイリスト時代
――スタイリストデビューまでは順調でしたか?
3年4カ月でのデビューで同期の中では一番早くデビューすることができたのですが、デビュー前のジュニアスタイリスト時代が気持ち的には一番辛い時期だったと思います。「NERO HAIR SALON」ではアシスタントのカリキュラムが終わったあとに、ジュニアスタイリストになるのですが、その期間はモデルさんを呼んでカット技術をメインに習得します。
何が壁だったかというと、カット技術がとても難しく分からないことだらけだったのに加えて、ひとつ上の立場になり自分に求められるものが増えたということです。主に求められていたこととしては、技術面と、自分がそれまでやってきたアシスタント業務を後輩ができるようにしておくことでしたが、自分のことだけでいっぱいいっぱいで、後輩のフォローもおろそかになっていました。先輩からの指摘を受けることも多くて、心の余裕をなくしていましたね。
――そのときどうやって乗り越えたんですか?
ちょっと逃げる姿勢になってしまったかもしれませんが、プライベートを充実させました。彼氏や仲良くしてくださっているお店の先輩と良く遊んだり、営業時間内の仕事はもちろんきちんとやるのですが、営業終了後の時間は練習にはあまり残らず、プライベートの時間をたくさんとるようにしたんです。
そのまま進んでいても気持ちが折れてしまいそうだったし、いったん目線を変えてみようと思いました。誰しもこういう時期があったはずだと思って、息抜きの時間をたくさんとり、心が完全に折れないようにして、なんとか乗り越えることができました。
――そうすることで、その後、気持ちは持ち直していったのですか?
ジュニアスタイリストの後半くらいになって、やっと少しずつ持ち直してきたかなという感じでした。後半になってくると徐々に自分の技術がついてくるようになって、余裕ができてきたからだと思います。
――心が折れているときに、美容師を辞めようとは思わなかったのですか?
それはなかったです。やっぱり私にはほかにやりたいことはなかったし、美容師しかないという軸がぶれることはありませんでした。
スタイリストになってより一層感じた、コミュニケーションの難しさ
――前編では自分のことを人見知りだと感じていたとお話しされていましたが、入社してみて、それを感じたことはありますか?
アシスタント、ジュニアスタイリスト時代に、初めてのお客様と会ってお話しするという部分ではあまり苦労を感じたことはありませんでした。自分のお客様ではないので、気負わずに話すことができたんだと思います。ですが、スタイリストになってからカウンセリングなど美容師の技術的な部分でのコミュニケーションの難しさは感じることがありました。
お客様のニーズを引き出してそれを言語化したり、技術的な部分を分かりやすく説明しながら提案をしたり、より高度なコミュニケーション能力が必要だと感じたんです。
――スタイリストデビューから1年ほど経って、コミュニケーション能力を身につけられたと思われますか?
まだ難しいと感じる部分もあるのですが、デビューしたときと比べると少しずつできることが増えているのかなと思っています。4月にサロン内の異動でスタイリストの入れ替わりがあったので、お客様の要望やニーズを引き出して、提案をするのが上手なスタッフとお客様のやりとりを聞いて勉強しているところです。
美容師は人対人の仕事。察する力やコミュニケーションが重要
――新人時代の体験は、赤津さんにとってどのような学びになりましたか。
人として成長できたと思います。段々とできることも増え、自分のことだけでいっぱいいっぱいだったところから、お客様がどう思うか、どう感じているかを少しは気にかけられるようになったのではないかと。美容師の仕事は人対人の仕事で、技術ももちろん大切なのですが、お客様が何を感じているのがとても重要だと思っています。
自分に起きた成長のなかで一番大きかったと思うのは、お客様が喜んでくださることが自分にとっての喜びでもあると改めて知ったことです。それまでの私は自分がよければいいという思いがあったのですが、お客様が喜んでくれる瞬間に立ち会う度にどんどん気持ちが変化して。それこそが成長の証なのかなと思っています。
お客様に喜んでもらいたい気持ちが強くなるほど、プレッシャーを感じることもありますが、お客様の笑顔を見られるからこの仕事を続けていられているんだと思います。
――これから美容師を目指す人に、アドバイスをお願いします。
繰り返しになりますが美容師の仕事は人対人の仕事なので、私はやっぱり人と関わる機会を持つことがとても大切だと思います。美容室にはさまざまなお客様がいらっしゃるので、人と接しているうちに察する力やコミュニケーション能力がつくと思うんです。
学生さんだったら、友人と遊びにいくとか、アルバイト経験を積むとか、そういうことでもいいと思います。またいろいろなお店に行ってどんな接客をしているのかを見るのも勉強になるはずです。少し意識するだけで、美容師になってからのお客様とのコミュニケーションに大きく影響を与えると思います。
赤津さんが壁を乗り越えるときに意識した、3つのポイント
1.壁を感じたときはプライベートを充実させ、心が折れないようにする
2.自分が苦手だと感じる点は、周囲のスタッフからの刺激を受けて改善
3.お客様に喜んでもらえることをモチベーションに、前進し続ける
人見知りな性格に気付いたときも、カット練習でつまずいたときも、自分のやりたいことは美容師しかないと、乗り越えてきた赤津さん。自分の軸となるような思いがあるからこそ、工夫をしながら前進してきたことが伺えた取材となりました。ぜひ参考にしてみてくださいね。