「寄り道」したからこそ、今がある。さまざまな経験が自分の価値観を作った新人時代「LORONG豪徳寺店」堀田周平さん
2017年12月に誕生した美容室「LORONG」は、無言接客サービスを掲げ、会話をしないスタイルの接客が人気のサロン。堀田周平さんは同店でスタイリストとして活躍しています。
前編では、堀田さんが美容師を目指し始めたきっかけや、新人時代の思い出を伺いました。
後編では、堀田さんがデビュー前後にぶつかった壁について伺います。デビュー後も自分の技術に自信がなかった堀田さんは、先輩にたくさん質問し、技術をものにできるように努力を続けたそう。目の前のお客様を喜ばせることが美容師の本分だと信じ、仕事を続けてきたと言います。
今回、お話を伺ったのは…
「LORONG豪徳寺店」スタイリスト・店長
堀田周平さん
美容師歴は約15年。現在は豪徳寺店の店長と店舗責任者を務め、ボブやショートなどナチュラルなスタイルの施術を得意とする。趣味は音楽と子供の成長を見守ること。
前髪カットの失敗でお客様を泣かせてしまったことも
――練習を乗り越えどれくらいの期間でデビューされたのですか?
約2年でスタイリストとしてデビューしました。お店のなかでは、割と早くデビューした方だったと思います。朝から晩まで練習した甲斐があり、このときばかりはうれしかったです。
研修中も朝から晩までの練習や、金銭面が本当に辛く、正直「辞めたい」と思ってしまったこともあったのですが、サロンを紹介してくれた先輩の顔に泥を塗らないよう、一生懸命がんばりました。
――デビュー後、接客面で悩むことはありましたか?
周りの先輩からは「お客様を楽しませろ」と指導をされていました。僕はあまり会話が得意ではないのですが、お客様に笑ってもらうために、さまざまな話題を提供するように心がけていましたね。ただあまり得意な分野ではないので、苦手意識を感じながら接客に取り組んでいました。
――デビュー後、壁にぶつかったことはありますか?
一度お客様を泣かせてしまったことがあります。前髪のカットを希望されていたお客様だったのですが、僕の技術が未熟で、前髪を切りすぎてしまったんです。とても焦ってしまい、その場から逃げ出したい気持ちになりました。切りすぎてしまったものは直すことができないので、誠心誠意をお詫びするとともに、どうしてミスをしてしまったのかということを振り返って再発をしないように気をつけました。
――デビュー後どのように技術を研鑽してきましたか?
先輩の指導を仰いだり、YouTubeを見てカットを練習したりしました。しかし、聞いたり見たりするだけでは、やはりうまくいかないので、聞いたり見たものを繰り返し練習し、試行錯誤を重ねて自分のものにしないと、再現が難しいのだなと感じましたね。
指導を受ける際、先輩によって言うことが違うということも多々あるので、自分に合ったやり方はどんな方法なのかというのを見極める必要もありました。決して器用ではないので、技術が本当にものになるのには、時間がかかりましたね。
「目の前のお客様を喜ばせること」の積み重ねが大切
――スタイリストとして悩みを抱えたことはありましたか?
スタイリストにはなったものの、自分の技術には全く自信がありませんでした。「本当にこれでいいのかな」という気持ちで、毎日施術をしていましたね。売上はランキング化されるのですが、思ったように結果も伸びず、どうやったらこの状況を打開できるのだろうかと先輩に相談をさせてもらっていました。
――先輩からはどんなアドバイスをもらいましたか?
「『目の前のお客様をただひたすら喜ばせる』ということを繰り返していくだけだ」と言われました。結局のところ、毎日の接客をコツコツがんばるのみで、いきなり数字が伸びるような魔法はないのだと思います。
この言葉は今も心に残っていて、誠心誠意尽くせば、お客様は必ずリピートしてくださると信じて、施術を続けています。
――その後、「LORONG」にはどのようなきっかけで入社されたのですか?
4年弱働いた名古屋のお店を退社した後に、「LORONG」のオーナーから声をかけられたことがきっかけです。
入社を決めた理由としては、プライベートサロンという業態に興味を持ったからです。僕は落ち着いて静かに仕事をしたいタイプなので、プライベートサロンでかつ無言接客というスタイルで、1人ひとりにゆっくり向き合って施術するというスタイルが自分に合ってるのではないかなと思いました。当初は業務委託として入社し、その後社員になっています。
――社員にならないかと声がかかったということは、オーナーさんと信頼関係が築けていたということですね。一緒に働く人との信頼感を醸成するうえで、堀田さんはどんなことを意識していましたか?
当たり前のことですが、人に対して誠実でいることを意識していました。美容師さんのなかには自分の意見を強く持っている人も多いと思いますが、組織で働くうえでは、自分の我を通すだけではなく、周りの人の意見を尊重することも必要です。一緒に働く人たちの気持ちを汲み取り、誠実に向き合うことは、常に意識するようにしていました。
つらい経験や挫折も、きっと無駄じゃない
――堀田さんはボブやショートの施術がお得意と伺いました。どのようにして自分の得意な施術を見つけましたか?
得意にしようと思って練習を重ねたわけではありません。ショートヘアやボブの指名が増えてきたので「得意なのだな」と自覚したという感じです。
実はもともと僕はショートカットの施術に苦手意識があったんです。練習を重ねているうちに、自分が思ったようなスタイルを作れるようになってきたというタイミングも相まって「得意」ということを自覚しました。
――新人時代には、どんな学びがありましたか?
環境的にはとても辛く、逃げ出したいタイミングもありましたが、あの時間を経験したからこそ今の自分があるのだなと思います。戻りたくはないのですが、経験はしておいてよかったなと思いますね。
「LORONG」は、インドネシア語で「わき道」や「小道」を指すそう。たまたまですが、僕はいろいろとわき道を通って、ときには寄り道をして、自分に合ったスタイルの仕事を見つけることができました。今は、「そんな時間も必要だったのだな」と思います。
――最後に美容師を目指す人にアドバイスお願いします。
美容師を目指すうえでは、辛いことや挫折、辞めたくなることがたくさんあると思います。でもそんな経験も決して無駄にはなりません。続けていれば何かしらの形になりますし、やってみないとわからないこともたくさんあります。とにかく諦めずにやり続けてみてください!
堀田さんの新人時代が充実した3つのポイント
1.目の前のお客様に誠実に向き合った
2.興味のあることには、臆せずチャレンジすることを意識した
3.つらい時間もよい経験になると信じて、努力を続けた
「寄り道」をしながらも、長い時間を掛けて美容師として大切なものを見つけた堀田さん。経験を積み重ねたからこそ、今の活躍があるのだと感じた取材でした。これから美容師として活躍を目指す方は、参考にしてみてください。