シャンプー技術からの再スタート。「扱いづらい後輩」が目覚めるまで「Lond blanche 錦糸町」北山謙三さん
美容室経営の常識にとらわれず、スタッフ第一主義を貫く「Lond」。その勢いは衰えることなく、創業から11年が経った現在では、全国に69店舗を展開するまでになっています。
そんな「Lond」に2019年に中途入社し、現在は「Lond blanche 錦糸町」の店長を務めるのが北山謙三さんです。前サロンではスタイリストとして働いていたという北山さんですが、「Lond」ではアシスタント、しかもアシスタントが最初に学ぶ技術であるシャンプーからのやり直しになったといいます。
以前はスタイリストとして働いていた自負があったため、なかなか先輩のアドバイスを素直に受け入れられず、「扱いづらい後輩」だったという北山さん。しかし「Lond」の先輩スタッフのみなさんが、北山さんにまっすぐにぶつかってくれたことや、成功している先輩を見ているうちに、徐々に心境に変化が起きていったといいます。
今回、お話を伺ったのは…
「Lond blanche 錦糸町」店長/スタイリスト
北山謙三さん
熊本県出身。福岡のサロンを経験したのち、2019年に中途採用で「Lond」に入社。アシスタントからのやり直し入社になったものの、2020年に1年半ほどでスタイリストデビューを果たす。その後、売上がなかなか上がらないことに悩む日々を経て、デビューから1年ほどで売上200万円を達成。現在は「Lond blanche 錦糸町」の店長として、マネジメントにも尽力する。
ホームレス状態も経験。勢いで上京し、「Lond」に入社
――「Lond」へは中途入社とのことですが、入社の経緯から教えてください。
僕は元々、福岡で美容師として働いていました。でもトレンドは東京から生まれると思っていたし、美容師になるからには成功したい気持ちもあったので、いつかは東京に行きたいと思っていたんです。
そこで福岡のサロンを辞めて、上京し、東京のサロン選びが始まりました。「Lond」を選んだ理由としては、6人で共同経営をしているということで、ちょっと異色だと感じたこと、元々僕が働いていたサロンが大企業だったこともあり、またベンチャーのような若い会社だというところに面白さを感じたからです。
――なるほど。では転職は順調だったのですね。
いえ、そうでもなく、「Lond」に決まるまでは割と大変でした。「東京に行けばなんとかなる」と思い、サロンや家も決めないまま上京してしまったのですが、よくよく考えたら働いていなければ、家も借りられないんですよね。
一時期はホームレス状態で、友達の家を転々したり、駅で寝泊まりしたこともありました。その後、「Lond」への入社が決まり、ことなきを得たのですが、行動力はあるけれど、計画性がないのが僕の悪いところだなと思います(笑)。
想定外だったシャンプーからの再スタート
――実際に「Lond」に入社してみて、どんなことを感じましたか?
カリキュラムがしっかりしていると感じました。以前勤めていた会社は、カリキュラムが曖昧だったため、なんとなく技術ができるようになったらテストを受けて、なんとなく合格して、どんどん進んでいく形だったんです。その結果、僕はそこまで技術が身についていないにも関わらず、スタイリストデビューをすることになってしまいました。
技術に不安もあったので、「Lond」に入社する際は、「アシスタントからのスタートでも構いません」と伝えていて、実際にアシスタントからのスタートとなったんです。でも「Lond」ではかなり細かくカリキュラムが定められていたため、これなら安心して技術を高めることができると思いました。
――そうだったのですね。
ただ、自分としては過去にスタイリストを経験しているので、きっとアシスタントのカリキュラムの途中からスタートするものだと思っていました。ところが最初に技術チェックを受けたところ、僕は本当に最初の段階である、シャンプーからのスタートになったんです。アシスタントでもいいと言ったのは自分なのですが、あまりにも自分の技術が未熟すぎてかなりショックを受けました(笑)。
自分に向き合ってくれた先輩の存在が、徐々に自分を変えた
――その後、アシスタント期は順調だったのですか?
1年半ほどでデビューまでこぎつけたこともあって、順調ではあったのですが、先輩から見るとかなり扱いづらい後輩だったようです。前職でスタイリストをやっていたこともあり、指摘を受けても素直に受け入れられなかったんです。
今考えると自分でも意味が分からないのですが、たとえばシャンプーで「ここに流しの腰があるよ」、「洗えていないよ」と先輩に指摘をされても、心の中では「いや、そんなことはない。だって俺はスタイリストをやっていたんだから」と(笑)。
――逆に、メンタルが強い気もしますが(笑)。そこからどうやって技術を身につけていったんですか?
先輩の存在は本当に大きかったです。そんな扱いづらい僕でも、ちゃんと向き合って、叱ってくれました。ときには結構直球な言葉で指摘を受けたこともあったのですが、言われたときは受け止められなくても、あとから振り返ると、「ああ、自分が間違っていたな」と徐々に気づけるようになっていったんです。
そうやって指摘をしてくれるだけでなく、「Lond」の特徴として、先輩が本当にしっかり練習を見てくれるんですね。前に勤めていたサロンでは、後輩は練習のために残るけど、先輩は誰も残ってくれなかったので、技術がなかなか向上しませんでした。先輩たちのおかげで、カリキュラムは順調に進んでいきました。
――先輩たちによって気持ちも変化していったのですね。
そうですね。しかも当時の錦糸町店はこのエリアで1位、2位を争うくらい売上を上げており、技術面でのレベルも高かったため、先輩たちのことを素直に尊敬していました。
また当時、SNS集客が流行りだして、それで結果を出している先輩もいたので、「Lond」でいろんなことを吸収すれば自分も最先端になれるかもしれないという希望がモチベーションにもなっていました。
あとは僕の負けん気の強さも影響していたかもしれません。先輩たちに結果を見せたいという気持ちが大きかったです。最初から成長したい気持ちはあったので、それが段々とうまく結びついていったかなと思っています。
北山さんの新人時代を支えた3つの精神
1.計画性よりも、行動力を優先した
2.技術習得に対して貪欲になり、美容師としての高みを目指した
3.先輩の存在によって生じた変化を大切に、日々努力を重ねた
後編では新人時代の北山さんにとって大きな壁となった、スタイリストデビュー後についてお話しを伺います。順調にスタイリストデビューを果たしたものの、その後売上や再来率がなかなか上がらなかったという北山さん。
アシスタント時代に少しずつ先輩のアドバイスを聞けるようになっていたものの、自分のやり方を通すところがまだ残っていたからだと振り返ります。その後、先輩の言葉でようやく自分を180度変えることができ、結果的に200万円の売上も達成できたそうです。
後編もお楽しみに!