「我流」→「丸パクリ」で見つけた、生き残りの道。スタイリスト1年目で売上200万円を突破「Lond blanche 錦糸町」北山謙三さん
美容室経営の常識にとらわれず、スタッフ第一主義を貫く「Lond」。その勢いは衰えることなく、創業から11年が経った現在では、全国に69店舗を展開するまでになっています。
そんな「Lond」に2019年に中途入社し、現在は「Lond blanche 錦糸町」の店長を務めるのが北山謙三さんです。前編では「Lond」に入社した直後やアシスタント時代の経験についてお話しを伺いました。
後編では新人時代の北山さんにとって大きな壁となった、スタイリストデビュー後についてお話しを伺います。順調にスタイリストデビューを果たしたものの、その後売上や再来率がなかなか上がらなかったという北山さん。
アシスタント時代に少しずつ先輩のアドバイスを聞けるようになっていたものの、自分のやり方を通すところがまだ残っていたからだと振り返ります。その後、先輩の言葉でようやく自分を180度変えることができ、結果的に200万円の売上も達成できたそうです。
今回、お話を伺ったのは…
「Lond blanche 錦糸町」店長/スタイリスト
北山謙三さん
熊本県出身。福岡のサロンを経験したのち、2019年に中途採用で「Lond」に入社。アシスタントからのやり直し入社になったものの、2020年に1年半ほどでスタイリストデビューを果たす。その後、売上がなかなか上がらないことに悩む日々を経て、デビューから1年ほどで売上200万円を達成。現在は「Lond blanche 錦糸町」の店長として、マネジメントにも尽力する。
自分のやり方に固執し、結果につながらなかった日々
――新人時代にぶつかった壁はありますか?
一番大きな壁はスタイリストデビュー後、売上がなかなか伸びなかったことです。集客ができず、リピートにもつながらないということで、かなり苦戦しました。
――その理由をご自身ではどのように分析していますか?
自分のやり方に固執しているところが多かったからだと思います。前編で先輩の話しを素直に聞けるようになったとお伝えしたと思うのですが、実はそのときはまだそこまで改心できてはいなかったんです。
たとえば、当時の僕はショートを推していたんですね。なぜかというと、単純にショートで成功している先輩がいたからでした。周りの人からは「指名なしできたお客様がいたらどうするの?ほかの技術もちゃんとやっておいたほうがいい」と言われていたのですが、かたくなに「いや、ショート1本で」と答えていました。
ほかにもSNSはかたくなにインスタグラムだけにしぼっていて、ホットペッパーのブログ機能やミニモを使わなかったり。技術で指摘を受けても、お客様の反応がよさそうであればいうことを聞かなかったり。でもその後、そういうお客様は再来してくれることはなく、先輩の指摘はやはり当たっていたんだと思います。今考えると、先輩からのアドバイスを一切聞かず、自分でいばらの道を進んでいたようなものですよね。
――なぜ自分のやり方にこだわっていたのですか?
ちょっと調子に乗っていたんだと思います。当時の僕は24歳だったのですが、スタッフが120~130人くらいいたなかで、社内最年少スタイリストだったんです。
――なるほど。その後、売上がなかなか上がらない壁は、どう乗り越えたのですか?
当時の店長に相談したことがあって、そのときに「自分ひとりの力で全部をやるには限界があって、人に頼らないといけないときもある。うまくいかないときは、成功している人のことを全部マネしたほうがいい」と言われたんです。そこで意識ががらっと変わって、アドバイスはすべて素直に聞き入れるようになりました。
技術や集客の方法はもちろん、接客の口調、先輩が着ている服まで同じ店で買ってみたり。周囲のアドバイスを素直に聞き入れるようになって、段々と状況が変わっていきました。
推しとお客様への姿勢を変え、売上200万円を突破
――具体的に北山さんが先輩をマネしたことで、売上アップにつながったことを教えていただけますか。
ひとつには自分の推しをショートから、カラーを使ったスタイルに変えたことです。僕は長時間のメニューがあまり向いていないのと、エリア的にもあまり派手な髪色はできない人や、家庭のあるママさん層が多いので、ブリーチカラーは選択肢にありませんでした。
そこで「Lond」の別の店舗でワンカラーでできるダブルカラー風のカラーで成功している人がいたので、それをマネしたところ、単価が大幅にあがりました。
あとは、お客様に対しても謙虚に聞く姿勢を持つようになりました。たとえ仕上がりのときには満足してくださっているようにみえても、次に来たときには本当に満足できたか、不具合がなかったかなどはきちんと聞き、ネガティブな意見にもちゃんと向き合うようになったんです。それまでの僕は、ちょっとでもお客様が満足していない様子が見えても、一切聞かなかったし、受け止めることができていませんでした。
――マネをするようになったら、結果はすぐに出たのですか?
運がよかったこともあって、びっくりするほどスムーズに結果がでるようになりました。というのもお客様が呼べない理由のひとつに僕の力不足のほかにも、席が埋まっていたという要因があったのですが、たまたまそのタイミングでお店が2つに分かれることになって、席数が増えたんです。
それに加えて、推しやお客様に対する姿勢を変えたことに対する効果が徐々に表れてきて、それまで売上を上げられても60万円止まりだったのですが、その年の年末には200万円まで売上を上げることができました。
失敗だらけだったからこそ、自分の軸を見つけられた
――北山さんが考える、美容師の仕事のやりがいは?
シンプルですが、お客様が喜んでくれることです。感謝してもらえるということは長く付き合いが続くということだし、そうするとお客様が新しい学校に入るとか、結婚するとか、子どもが産まれるとか人生の節目などにも一緒に参加しているような気持ちになれて、とてもうれしく感じます。
また美容室にはスタッフにも成長とか節目みたいなものがあって、それをお客様が一緒に喜んでくださる空間でもあると思うんです。「Lond」は離職率が低いので、スタッフはサロンのなかで成長していって、スタイリストデビューしたり、役職があがったりしますが、それをお客様が喜んでくれることも、美容室で働くやりがいのような気がします。
また店長となってからは、いろいろな経験を積ませてもらっていることにもやりがいを感じます。先日お店が移転したのですが、一美容師が普段あまり関わることがないような、内装業者の方とのやりとりなどを経験させてもらったんです。あと2年ほどで「Lond」の名前を背負ったまま独立させてもらうことを目標にしているので、自分の学びになりました。
――北山さんにとって、新人時代の体験はどんな学びになりましたか?
反省点がかなり多い新人時代でしたし、当時の自分にもしアドバイスができるとするなら言いたいことはたくさんあるのですが、失敗をしたからこそ学んだものや、得たものはとても多いと思っています。とくに負けん気、どうにかして現状を打破すること、諦めない気持ちなどは新人時代に作られた自分の軸ではないかと思うんです。
あとは、本質の大切さをとても学んだ時期だったと思っています。僕は最初にお話ししたように、前職ではスタイリストだったわけですが、中身が伴っていなかったらいくらスタイリストを名乗っていても、その先はないということが良く分かりました。あのとき勇気を出して東京にきて、「Lond」の一員になり、自分と向き合ってくれた先輩たちのおかげで今があるなと思っています。
北山さんが新人時代に得た3つの学び
1.うまくいかないときは、うまくいっている人を徹底的にマネする
2.失敗の中からこそ、自分が大切にすべき軸が見えてくる
3.大事なのは本質で、外身だけがあってもうまくいかない
笑いを交えながら、新人時代をコミカルに振り返ってくれた北山さん。しかしビジョンをしっかり持ち、くじけずに進む姿勢には、心を打たれるものがありました。これから美容師として活躍したい人はぜひ参考にしてみてくださいね。