誰に対しても自分を偽らない姿勢と顔まわりカットにこだわり、リピーターを増やす【tas TOKYO 西口朝都さん】#1
「tas TOKYO(タス トウキョウ)」の代表を務める西口朝都さんは、若くして独立を果たし、自身もサロンも成長させ続けている美容師。特に前髪&顔まわりのカットに定評があり、「しっくりくる髪型」に魅せられたお客様が次々とリピートしてくれているそうです。
前編では、西口さんが就職したサロンでの経験を中心に、独立に至るまでをインタビュー。大切なことを気づかせてくれた先輩の存在、なぜ「顔まわりカット」が武器になったのか、働きながらの出店準備…。ステップアップを重ねた20代を振り返ります。
お話を伺ったのは…
tas TOKYO
代表・美容師 西口朝都さん
2013年に美容専門学校を卒業後、Un ami(アンアミ)に入社。新宿のjoemi by Un ami(ジョエミ バイ アンアミ)のオープニングメンバーとして参加し、2017年にスタイリストデビュー。同年オープンしたUn ami Kichijoji(アンアミ キチジョウジ)に異動し、副店長、店長、代表を歴任。2023年4月に独立して「tas(タス)」を立ち上げる。2026年4月に拡張移転し、「tas TOKYO(タス トウキョウ)」としてリニューアルオープン。
NISHIGUCHI’S PROFILE
お名前 |
西口朝都 |
|---|---|
出身地 |
大阪府 |
出身学校 |
関西美容専門学校 |
趣味・ハマっていること |
旅行、キャンプ、読書、サウナ |
憧れの人 |
地元の美容師さん |
仕事道具のこだわり |
柔らかくドライカットしたいので粗歯のコームを愛用 |
先輩の一言で、“優等生”なだけではダメだと気づいた

――美容師になりたいと思ったのはいつ頃で、どんなきっかけがあったのでしょうか。
おしゃれに興味が出始めた中学3年生の頃、パーマをかけたいと思って初めて自分で美容室を探して行ったのがきっかけです。担当してくれた美容師のお兄さんがすごく素敵な方で、パーマも大成功でした。それ以来、自分でお金を払って美容室に通うようになったんですよ。キラキラしていて、楽しそうに働く大人に僕もなりたいし、人をそういう気持ちにさせられる仕事って素晴らしいなと思いました。
――地元である大阪の美容学校へ進まれましたが、東京のサロンで働こうと思った時期や理由は?
最初は上京するつもりはまったくありませんでした。東京の選択肢が出てきたのは2年生になってから。美容学校の上位10%くらいのやる気のある学生たちの多くが、東京のサロンを目指していたんですよ。僕は東京も大阪も変わらないだろうと思っていたのですが、一度ちゃんと自分の目で見てから就職先を考えるべきだなと。それで、学校の先生に勧められたサロンに行ってみた瞬間にビビッときて、そこを受けて入社しました。
――それがUn amiですね。どんなところが心に響いたのでしょうか。
すごくウェルカム感があって、お客様を大事にしている雰囲気が伝わってきましたし、技術にも感動しました。4月か5月に行ったので、ちょうど入社したての人たちがいたのですが、すごく楽しそうに働いているのも印象的でした。
――アシスタント時代の思い出深いできごとはありますか。
自分で言うのもなんですが、僕はいいアシスタントだったと思います。きちんと仕事するし、接客もできるし、これといった難もないから、スタイリストからすれば使いやすい。ただ、そういう意味ではいいアシスタントではないけれどキャラが立っている子たちの方が、お客様に愛されているなと感じていました。
一番最後につかせてもらった先輩スタイリストに、「真面目なだけだと売れないよ」と言われてハッとしました。僕はアシスタントとしていかに上手くサポートして効率を上げるかを考えていたけど、一番大切なのはそこじゃない。アシスタントもスタイリストも変わらず、お客様を幸せにするのが仕事ですよね。スタイリストデビュー前に気づけてよかったし、今現在、自分の店のアシスタントに伝えていることでもあります。
――そこに気づいて、まず何から変えていきましたか。
どう考えても自分は特異なキャラクターではないので、開き直って「自分を偽らない」ことを貫こうと思いました。お客様に合わせて接客を変えることはよくあると思いますが、僕は誰に対しても同じ自分であろうと。それを心地よいと感じてくださる方が最終的に残ってくれたらいいなと思って、相手によって何かを変えるのではなく、いつも自然体でいるようにしました。
僕に気づきを与えてくれた先輩スタイリストも、すごく自然体で愛がある人でした。憧れていたし、僕もそういう美容師を目指したいと思ったんです。でも単に今の自分のままでいいというわけではなくて、自分を磨き続けることが必須。「そのままの自分」が受け入れられるレベルに達していないといけないなと思います。
縮毛矯正から顔まわりカットへ、武器をシフトチェンジ

――スタイリストデビュー後、売り上げアップのために工夫したことはありますか。
初めはまだお客様がついていないので、まずはやりたいことよりも自分ができることをやろうと思いました。当時は縮毛矯正が得意だったので、それを打ち出すことに。今のように多彩なSNS時代ではないので、くせ毛の悩みを持つ方に向けてブログをたくさん書きました。それを見たお客様が結構来てくださったのですが、その打ち出しはある時きっぱりやめました。
――それはどうして?
カットなしで縮毛矯正のみ予約いただくお客様がわりと多かったのですが、なかなかリピートにつながらないんですよね。でも、そういう方もちょっと前髪は伸びて気になっていたりする。その時にお声がけをして、前髪を切らせてもらった方が全員リピートするということがありました。
自分の武器はこれだなと思いました。前髪を含む顔まわりのカットが得意でしたし、くせに悩んでいるお客様も後ろ姿だけじゃなく前から見た印象って大事。だから思い切って、縮毛矯正から顔まわりカットへ打ち出しを変えたんです。
――シフトチェンジしてから、客層や集客に変化はありましたか。
ブログの更新をやめただけで削除はしていなかったので、新規の縮毛矯正予約がなくなったわけではなく、ゆるやかになった感じです。それまでの顧客様は変わらず通ってくださったので、売り上げはキープしていました。そこに新たにカットのお客様が増えていった感じです。
――なるほど。ところで、Un ami時代に新店舗のオープニングメンバーを2回経験されているとか。
僕が入社した時は表参道の1店舗のみでしたが、その年に新宿のjoemi by Un amiがオープンし、そこに移って3年くらい働きました。次に吉祥寺店ができた時に再びオープニングメンバーとして参加しました。新しい店のスタートに携われて嬉しかったのですが、吉祥寺店の時は焦りが大きかったですね。
――焦りの原因は何だったのでしょう。
スタイリストデビューして2ヶ月目で、これからさらに自分のお客様を増やしていきたい時期でした。当時の代表はたくさんお客様を抱えていて、新卒で入ったばかりのアシスタントだけでは手が足りず、僕たちスタイリストもフォローに回る必要があったんです。新しいお店を軌道に乗せなきゃいけないけど、自分のお客様も呼びたい。そんな葛藤がありました。
自分の理想やアイデアを形にするため、28歳で独立

――吉祥寺店では副店長、店長、代表を歴任。責任あるポジションを経験して学んだことはなんですか。
本当にたくさんのことを学ばせてもらいましたが、代表になった時に強く感じたのが、方向性を明確にすることの大切さです。
会社としてのトップには社長がいるとはいえ、店舗内で考えると代表が一番上。店として何を大事にしていくのか、どういう方向に進むのかをはっきり示さないと、バラバラになってしまうと思いました。
――多様な個性が集まっているわけですから、チームとしてまとめることは重要ですね。
大体の問題は、「人」絡みで起きると思います。その時にAさんとBさんが個人の価値観をぶつけ合うのではなく、お店としての指針と合っているのかズレているのか、みんなで同じところを見据えて話ができたら、衝突は避けられるんですよ。
その考えが正解かどうかはわからないですけど、代表を務めた期間は離職者がほぼいなかったので、よかったのかなと思っています。
――20代のうちに独立を決意されましたが、きっかけは?
例えば給与だったり働き方だったり、もっとこうしたい、ここを変えたいというアイデアがどんどん浮かんできたのですが、それは経営者じゃなければできないことばかりでした。だったら自分でやるべきだと思い、実際に独立する2年前に自分の意志を会社に伝えました。1年前には具体的な退職日を決めて、それまでにきちんと後輩に引き継いで…と、段階を踏みました。
――ご自身のお店を出す場所として選んだのは、表参道。これはどうしてですか。
すでに吉祥寺ではしっかりお客様がついていたので、そのまま同じエリアでやれば失敗しないだろうなとは思いました。でも当時は、どうせなら将来的に店を大きくしたい、だったら1店舗目はもっと都心がいいと思ったのが理由です。それで、一流の技術を求めるお客様も、高い技術を学びたい美容師も集まるであろう表参道に決めました。
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――メンバーをどのように集めたのかと、採用基準を教えてください。
インスタグラムで募集しました。採用基準、つまり僕が一緒に働きたいと思ったのは、お客様にめちゃくちゃ愛があって、美容師という仕事が大好きな人。これに尽きるかもしれないです。
今もそれはずっと変わらないのですが、技術の上手い下手や売り上げ云々にはこだわりません。なぜならそれは後からいくらでも伸ばせるから。お客様を幸せにしたいという気持ちがない人にどれだけ教育をしても限界があります。でもその気持ちさえあれば、教育と本人の努力次第で上に行ける。そういう人には教える時間をいくらでも使ってあげたいと思えるんです。
続く後編では、西口さんが立ち上げたヘアサロン「tas」(現在は「tas TOKYO」)について詳しくお聞きしています。サロン名の由来から、お店の方針転換や移転のお話、美容師&経営者としての思いまで、ぜひチェックしてください。
撮影/高嶋佳代
取材・文/井上菜々子
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tas TOKYO
住所:東京都渋谷区神宮前3-42-2 VORT外苑前Ⅲ 4F
TEL:03-6427-2170
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