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工業製品から生まれる『美』との出会いNAGAE+ #1

日本国内のモノづくり、どのくらいご存知ですか? 大量生産に埋もれて、ますます価値のあるものが見失われていくいまこそ、ていねいなモノづくりをしているブランドを知るべき時。日本全国の、さまざまな“モノ”や“コト”をストーリーを交えて、いま一度見直してみたいと思います。きっと生活を豊かなものにしてくれる、モノやコトに出会えるはずです。

工業製品と聞いて、いったい何を連想しますか? 車や機械といったものを想像して、なんだか物々しく硬くイメージを持ってしまう方がほとんどではないでしょうか。今回ご紹介するのは、工業製品の中でも金属加工の技術を生かしたものづくりをしているブランドです。冷たいイメージを持つ金属が、美しい製品に生まれ変わるまでのお話を、このブランドをプロデュースしている鶴本晶子さんにうかがいました。

SHIKICOLORS
ため息がでるほど美しい「NAGAE+」の錫のカップ「SHIKICOLORS」。最先端の着色技術で美しい色がほどこされている。
鶴本晶子さん
NAGAE+でプロデューサーを務める鶴本晶子さん。

「2001年までニューヨークにいて、もともとモダンアートに携わる仕事をしていました。仕事の中で金属を使ったコラボレーションをすることになったんですね。その時に作品づくりを協力してくれる工場を探したのですが、それが日本のものづくりとの出会いでした」。そのときに日本のものづくりの技術、職人のプライドを持って仕事をする姿のすごさを知り、すっかり魅了されてしまいます。その後大きなプロジェクトで、金属を使った作品のギャラリーの運営を任される、という仕事のオファーがきて、さあこれから、というときに、リーマンショックがやってきて、鶴本さんは、孤軍奮闘することになってしまったのでした。

「大きなプロジェクトだったので、さまざまな分野のプロがたくさん関わっていたのですが、一気にプロジェクトの規模が小さくなって、残されたのものはギャラリー。さて、どうしようか? と思ったのです」。そんなときに、いままでの金属加工の工場とのやりとりから得た経験と、人脈があるなら、なんとかなるんじゃないか、といってくれる友人のアドバイスで、鶴本さんは一気にやる気を出します。そしてゼロからまったく新しい企画を立てました。今までになかった、チタンを使った、ハイエンドなテーブルウエアのブランドを、見事に成功させたのです。

「失敗は成功のもと、なんていいますが、このときの経験は本当に私を強くし、そして今に繋がっていく大切な時間になりました」。ビジネスは順調だったそうですが、体調を崩してしまい退職。その後今回のブランドを立ち上げる会社と出会います。

「日本のこうした技術をいろいろ使って、そのプラットホームになるようなブランドを作りたいと思ったのです。そのときに、金属加工を60年続けているナガエと出会いました」。ナガエは富山県高岡にある金属加工のメーカーです。富山県高岡市は古くから商工業が盛んで、豊かな水資源があり、アルミ製品の生産が多く行われるなど、金属加工や鋳物の産業が行われている街です。ナガエは、メインとなる事業とは別に、ライフスタイルブランドを持っていましたが、それをもっと強固なものにしたいと思っているところでした。

工場の様子
工場の様子。
錫を溶かしているところ。
錫を溶かしているところ。

「ものを作るところから売るところまで、トータルで全体を見る役目をする、いわばファシリテーター的な役割ができる人をさがしていたそうですが、私のキャリアとそれはまさにぴたりと当てはまるようでした」。金属加工の老舗のメーカーと鶴本さんの培ってきた経験が融合することで、ブランドとしてブレないものづくりができるようになったのです。そして2015年“NAGAE+”(ナガエ・プリュス)が誕生しました。

Part2では、錫の美しいテーブルウエアについてご紹介します。

NAGAE+ http://nagae-plus.com
構成・文/高橋麻紀子 Edit&Text:Makiko Takahashi

偶然から生まれた『美しさ』を形にNAGAE+ #2 >>

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