ニューヨーク（NY）で働いて、わかったことをお教えします！【海外お仕事事情】
本場の空気を感じたい、海外で経験を積んでキャリアアップしたいなど、海外で仕事をしたいと考えている人は多いのではないでしょうか？「海外のお仕事事情」では、海外で仕事をする方法や海外での就職状況などをご紹介します。
美容の本場NYで約2年生活し、帰国後、横浜にサロンを出店した山本崇史さん。海外での経験を現在のサロンに活かして、日々活躍されています。今回はNYで山本さんが感じた日本との違いや、NYならではのエピソードなどをご紹介いただきます。
日本人は自信がない？
「NYと日本では考え方が違うことがたくさんありました。例えば施術の最後にお客さまに鏡を見せる時に、日本だと『どうですか？ 大丈夫ですか？』と聞きますが、NYで同じようなニュアンスで聞いたら、『あなたはどう思うの？』と逆に聞き返されます。お金をもらってやっているなら、キャリアがあってもなくてもプロフェッショナル。だから自信があって当然だという考え方です。日本人は自信がないわけではありませんが、一歩引いてしまう優しさがある。それが、自信がないと見なされてしまうこともあるようです」
「上手いというのはカットが速いとかまっすぐだとかということだけではなく、お客さんが望むスタイルに仕上げる、そのパフォーマンスに対しての評価だとすごく感じました。国籍やキャリアの年数ではなく、“プロフェッショナル”という仕事の仕方をNY ではすごく実感させられました。日本ではそういった立場の仕事が、美容師に限らず、お客さまも働く側も意識が薄いように感じます。サービスが先に来てしまっているからですかね」
スタイルもスケールも日本と違う
「美容師として良かったと思うのは、日本では経験できないことが毎日に溢れていたことです。毛質や技術やスタイルを実際に体験したり目にしたり。日本でアシスタントから基礎を学んだ人は、海外で自信を持って活躍できると思います。そのくらい、毎日他のどの国の美容師たちよりも練習をしていると思います。けれど日本ではその技術を持っていても、すべてを活かす機会が少ないですね。流行がありますし、その移り変わりも早いですから。私がNYで一番培うことができた技術はブローでした。日本にいたときはその必要性をそこまで感じずにいましたが、ブロー技術こそ世界共通で必要不可欠だとNYが教えてくれました」
「日本の美容界は下積みがしっかりある分、技術力が高いです。けれどその反面、国民性か教育方針からなのか、型にはまりやすいと思います。NYでは美容師も美容という枠を飛び越えて、ファッションやアートとして、もっと大きなスケールで考えています。ですから、発想もそうですが技術的にも『こんなやり方していいんだ！』という驚きがたくさんありました。型破りこそトップたちの共通点かもしれません」
「NYには世界中からトップを目指す人がやってきます。彼らは日本人のように決められた道を一歩ずつ進むという考え方ではないので、道を見つけたら早いですね。いろいろな道があって、手段も自由なんです。それも日本人と大きく違うところだと思いました」
先輩の功績と日本での経験が助けてくれた
「日本人美容師に対してのいい評判が広まっていたので、仕事はすごくやりやすかったです。例えば、サロンのお客さまから『日本人だから安心ね』と言われたり、撮影に参加した際も他のスタッフから『ヘアメイクは日本人だから今日は良い作品が撮れるね』と声をかけられたり。私の前にNYで働いていた先輩方のがんばりが、そのときの私をサポートしてくれたってことですよね」
「仕事は体力的には日本の美容師のほうがきついと思います。でもNYでは誰も助けてくれないし、仕事ができなければすぐにいらないと判断されてしまう厳しさがありました。私がちゃんと仕事をして給料をもらえたのは、日本で経験を積んでいたおかげだと思います」
サロン以外の撮影の仕事にも挑戦
「私は元々、サロンワークが好きで、ファッションとかそういう世界にあまり興味がなかったんですが、あるショーにはすごく刺激を受けました。それは病気の人をモデルに起用したチャリティーのショーで、洋服はグッチやアルマーニなどのブランドが提供していて、ヘアはウォーレン・トリコミというサロンが、メイクはM.A.Cが担当でした。そのショーを見に行ったことがきっかけで、サロン以外の撮影の仕事にも挑戦するようになったんです」
「撮影のヘアメイクに携わるようになっても、最初は無給のアシスタントでしたね。とにかく現場で技術を見させてもらいました。NYの一流サロンで、こういうふうに給料なしで現場で勉強させてもらっている日本人がいることも、この時ぐらいに知りました。見させてもらう、勉強させてもらうだけでとても貴重なことですから、とにかく数多くの現場に行きました。それから自分のヘアメイクの作品の撮影をしたり、その作品を見た人からオファーが来て別の撮影に参加したり。撮影は雑誌の企画や広告もあれば、モデルさんや女優さんの売り込み用の写真もありました。ファッションウィークにはショーなどのヘアーも担当させてもらいました。サロン以外の外部のスタイリストやフォトグラファーと仕事ができたのは、自分にとってとても大きな経験だと思います」
帰国、そして次の目標へ
「私は30歳までに地元の横浜にお店を出すという目標があったので、約2年弱で帰国しました。帰国前は、戻ったら日本の流行について行けないんじゃないかという心配も少しあったんですが、全く問題ありませんでした」
「技術はもちろんですが、NYで得たこと、培ったことを後輩たちに伝えて行くのが私の役目だと思います。多くのスタッフに実際にNYに行って、体験してもらいたいです。私のお店では、NYのサロンでやっていたさまざまないいことを、そのまま日本でもお客さまに提供できるようなお店づくりをしています。そしていつかNYにもお店を出したいですね。日本とNYを行ったり来たりするのが今の私の目標です」
Profile
山本 崇史（やまもと たかし）さん
Les Baladins du Miroir 代表
1981年生まれ。専門学校を卒業後大手美容室に就職し、美容師として5年間ひたすら腕を磨く。25歳のときに中国、ドイツのサロン勤務を経験したのち、世界各国をまわり2008年にNYに移住。美容師、ヘアメイクとして活動する。2010年に帰国後すぐに、地元横浜に自らがオーナーをつとめる美容室Les Baladins du Miroirをオープン。
Shop Data
Les Baladins du Miroir（レ バラディンズ ドゥ ミラー）
045-322-1288
月〜土10:00〜21:00 / 日・祝10：00〜19：00 （不定休）
http://www.lesbaladinsdumiroir.com
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