まずは技術が「一定ライン」を超えていないと話にならない！そこからが新たな道！

おシゴトをしていると避けられないさまざまな試練。新人には新人の、トップにはトップの困難があるかと思います。そこで「迷える美容業界相談室」と題して、いろんな人たちの悩みに「フルーツルーツ」の榎戸さんがお答えします。

「どんな分野でも、まずは技術が一定ラインを超えていないと話にならないと思うんです。でもそれだけではダメで、一定のレベルをクリアすると、そこからはどんなに技術を上げたとしても、実はそんなに集客的に変化はないんです。なぜなら、お客さまには分からない繊細な技術レベルに入ってしまうから。すると、今度はどのようなことをすべきかというと、専門知識や人間としての幅を広げることだと思うんです。特に知識をたくさん持っていると、この人に任せれば大丈夫だという信頼感が生まれやすいんですね。その最たる例がお医者さん。お医者さんにこの薬を飲んでくださいと言われたら、当たり前のようにそうしますよね。でも、ヘアサロンのスタイリストがシャンプーやリンスを勧めても買わないことのほうが多いと思うんです。その差は専門知識の深さからくる信頼性だと思っています。お医者さんのようになるためにも、勉強は欠かせないということなのではないでしょうか」

――確かにいろいろ知っているスタイリストのほうが安心します。

「それだけではなく、会話のネタも広がりますよね。お客さまが来店したら1、2時間はいっしょにいるわけですから、毎回話がいっしょだとお客さまも飽きてしまいます。来るたびに違う話を聞くことができて、いろんなことを教えてもらえたら満足してくれると思いますよ」

――その人の施術を受けに行くというよりも、その人に会いに行くというイメージでしょうか。

「まさにそうです。実は、最強の営業マンってそんな感じなんです。その人の魅力でものを買わせるといいますか。そういう人物になるためには、休みの日をどう過ごすかがポイントになってくるのではないでしょうか。自分を高める活動をしている人と、そうでない人とではやがて大きな差ができて、指名の数でも広がっていくのだと思います」

――知識というと、専門的なこと以外にも一般知識というのも必要ですよね。

「いろんなお客さまがいるので、どんな方にも対応できる社会的常識は大切です。ただし、新聞などの知識よりかは、もっとお客さまに近い知識のほうがいいのではないかと思うんですよね。例えば、Aさんというお客さまが来店して、ある話題をしたとします。だけど自分は全然知りませんでした。普通なら、その話が終わってしまえばそれっきりなんですね。しかし、感度の高い子はこのことについて自分なりに調べたり、体験してみたりして、次にそのお客さまがいらっしゃったときのために備えるんです。それを繰り返していくことで、自分の中に知識や経験が蓄積されて、やがてはどんなお客さまが来ても対応できるようになるんですよね」

――お客さまが話したことをお店の人が体験してくれたらうれしいですよね。

「すごくうれしいと思いますよ。うれしかったらまた来てくれますし、かわいがってもくれますよね」

――お客さまと遊びに行くというのはアリですか？
「いろいろな考え方があると思いますが、私としてはナシです。お客さまが個展を開くから行ってみるとか、劇をやるから観に行くのはもちろんOKです。しかし、飲みに行くのはNGでも。うちのお店でも禁止にしています。というのも、おごったりおごられたり、お金が絡んでくる可能性が高くなるわけです。そうなってしまうと、お客さまとお店の関係性が崩れてしまい、他のお客さまに対して平等なパフォーマンスができなくなると思うんですよね」

――そういうのをナシにして、指名を増やすことが大事なんですね。

「そうだと思います。だからこそ知識や人間性が重要なのではないでしょうか。お客さまの中には、世話好きといいますか、すごく応援してくれる方っていらっしゃるんです。お客さまが100人いたら、2、3人くらいなんですが。そういう方たちに支持されるような人であれば、どんどん紹介してもらえるんですね。相談者の方には、ヘアスタイルや頭皮について何でも知っている人間になってほしいと思います」

Profile

榎戸淳一さん

（株）ES-ROOTS代表取締役社長

船井総合研究所時代に社内にエステ業界のコンサルティングを立ち上げ、実績を残す。退社後、（株）ES-ROOTSを設立し、オーガニックコスメエステティックサロン「フルーツルーツ」をオープン。２年後に第２回エステティックグランンプリ、モデルサロン部門、フェイシャル技術部門で全国１位受賞。著書に「サロンはスタッフ育成で99％決まる」「愛されるエステティシャンの秘密！」などがあり、業界を牽引する役割を果たしている。

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