「すみません」では、すみません!こんな間違い、あるある!接客で求められる【言葉づかい&話し方セミナー #5】
何気なく口にしている言葉、あるいは気を使ったつもりの言葉のなかには、若い世代の間だけに通用するものもあるもの。社会に出て使うと自分の格を落としてしまい、信用まで失いかねない言葉があります。今回は、つい安易に使ってしまうことがある「すみません」について考えてみます。
お客様や目上の人に対しては、使いません!
気がつけば、「すみません」が口癖になっていませんか? 実際「すみません」という言葉は、とても使い勝手がいいのです。
たとえば、謝罪する場合に「すみません、今後気をつけます」
何かをお願いする場合に「すみません、◯◯を取っていただけますか?」
感謝の気持ちをこめて「すみません、お世話になりました」
どこかのお店で店員さんを呼ぶときに、「すみませ〜ん!」
たしかに、万能な言葉ではあるのですが……お客様に好感を持たれ、信用されるに足る人になるには、使い方に注意が必要です。
とくに、謝罪の意味で使う場合。学生の頃は、友達の間ではもちろん、目上の人にも「ごめんなさい」、「すみません」と言っていたのではないでしょうか。
また社会人になってからも、社内ではこの2つの言葉も通用するかもしれません。
おわびの気持ちを表す言葉としては間違いではないのですが、お客様や取引先、目上の人に対しては使わないほうが賢明! 何のためらいもなく「ごめんなさい」「すみません」という謝罪の言葉を使っていると、相手に幼稚な印象を与えてしまうのです。
お客様や目上の人、また公の場で、おわびの気持ちを伝えるときには「すみません」や「ごめんなさい」ではなく、「失礼いたしました」や「申し訳ありません」が正解です。
感謝の気持ちを伝えるには、「ありがとうございます」
謝罪の意味で使う「すみません」と並んで多く耳にするのが、感謝の気持ちを伝えるときの「すみません」です。
物を取ってもらったとき、贈り物をいただいたとき、席をゆずってもらったとき……「すみません~」で、すませていませんか?
顔の表情や声の調子から、相手は「感謝しているんだな」「うれしいんだな」と、こちらの気持ちを判断してくれるでしょう。でも、感謝の気持ちを表し、お礼を言う場合には、もっと適切でもっとすてきな言葉がありますよね。
そう、「ありがとうございます」です。
「すみません」という言葉は、「済む=終了する、完了する」という動詞+打ち消しの助動詞「ぬ」=「すまぬ」のていねい語である「すみませぬ」がもとの形。
現代では「ぬ」を「ない」に替えて「すみません」と言うようになりました。
なんでも、「済む」は「澄む=にごりや混じりけがなくなる」と語源が同じだとか。したがって「済む」にも、「気持ちがおさまる」「気持ちが晴れる」という意味があるのだそうです。
したがって、感謝の気持ちを表す場合の「すみません」は、「よくしていただいたのに、何のお返しもできなくて、私の気持ちがおさまらないほどありがたい」と、全身全霊で(!)感謝の意を伝える言葉と言えるのですが……ちょっと、わかりにくい。
それよりも素直に、それこそ心よりの最大の感謝の意をこめて「ありがとうございます」と言ったほうがスマートです。
ちなみに、外国人にとっては、感謝の意を表すときに「すみません」と思う日本人のメンタリティはなかなか理解できないそうです。
海外で、相手に感謝の意を伝えたいときに「感謝の意=すみません=sorry」だと思って「sorry」を使うと、相手は「へ? なんで謝るわけ?」ということに。
海外で、あるいは日本にいても外国人に対して感謝の気持ちを表したい場合には、シンプルに「thank you」を、強調したい場合にはその後に続けて、「very much」「so much」
「すみません」に替わる言葉を覚えておこう!
最後に、依頼する場合に使いがちな「すみません」について。
「お忙しいところすみませんが、◯◯をしていただけますか?」は、相手に時間を取らせてしまうことをわびつつ、お願いをするときによく使われるフレーズです。
これは、目くじらを立てるほどのことでもないのですが、お客様や目上の人、公的な場で「すみません」を言わないと考えた場合、ほかの言葉のほうがふさわしいかもしれません。
「すみません」ではなく、「恐縮ですが」「恐れ入りますが」「お手数をおかけしますが」「ごめんどうをおかけしますが」などなど。
お店に入ったときに誰の姿も見当たらず、バックヤードに声をかける場合も、第一声は「すみません」より「ごめんください」「こんにちは」「こんばんは」と言ったほうが、ワンランク上の振る舞いに感じられます。
なお、「すみません」と同じように使われている「すいません」は、「すみません」の口語体、いわばしゃべり言葉です。
「すみません」と意味は同じですが、より砕けた印象に。ですから、お客様や目上の人、公的な場、そして手紙などには「すいません」を使いません。
しゃべり言葉だけに、つい「すいません」と言ってしまいがちですが、相手に軽薄な印象や社会人として幼稚な印象を与えてしまうので要注意、です。
参考文献
「スラスラ話せる 敬語入門」渡辺由佳/かんき出版
「『そのまま使える』敬語ハンドブック できる人の『この言葉づかい』『この話し方』」鹿島しのぶ編著/知的生き方文庫(三笠書房)
「できる大人は知っている 日本語雑学」矢橋昇/知的生き方文庫(三笠書房)
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