働き女子の大先輩が教える転職時期の見極め方とは? 松本流人生の心得 #1

10代から人気少女モデルとして活躍し、20代で売れっ子スタイリストに。40代で人気女優を抱える芸能事務所社長になり、50代で全財産を失い……そして現在68歳! 人気シニアモデルとして返り咲いた、松本洋子さん。まさに、“転職だらけの人生”だったとか。

モアリジョブ読者にとっては、お母さんより上の世代かもしれません。でも、その時代から“バリキャリ”として、浮き沈みの激しい芸能界で生きてきた彼女。

厳しい世界に身を置いてきたからこそ、社会人として必要な人を見極める力、根性、立ち居振る舞いが身についたと言います。元祖・働き女子の代表として、仕事、生き方、そして親とのつき合い方まで教えていただきました。


毎日ムカつくことばっかり! こんな職場、もうウンザリ! さっさと転職したい! 希望の就職ができても、働いていれば、そう思う日だってあります。

でもちょっと待って! 転職を成功させるためには勢いに任せるのではなく、その原因をよく見極めることが大切。転職したい原因が「自分の実力不足によるものか」、「人間関係によるものか」で、人生の選択は大きく違ってくるのです。

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転職は実力をつけたあと、ステップアップのために!

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写真/橋本哲(「人生、いつだってスタートライン 美しく暮らすおしゃれのヒント」より)

待ち合わせは六本木のカフェ。そこへ“68歳のおばあちゃん”とは思えない颯爽とした姿で現れた松本さん。カフェにいた20代の若者たちはもちろん、50~60代の人たちも振り返ります。

「はじめまして、松本洋子です。モアリジョブの読者さんにとっては立派なおばあちゃん世代。でも、なぜか若い皆さんには、“スーパーおばあちゃん”と言われています(笑)。何しろここに来るまで、それはそれは波乱万丈な人生でしたから。芸能界という場所で、半世紀以上生きてきましたが、職種に関しては“転職だらけの人生”。それだけに皆さんに、転職について伝えておきたいことがあるんです」と松本さん。

「このサイトを読んでいるということは、転職を考え始めた頃、つまり少し自分に自信がついてきた頃だと思うんです。でも、本当に今が“そのとき”なのかしら? 私は、転職の時期は慎重に見極めるべきと思うんです」

なぜ、転職の時期は慎重にしないといけないのでしょうか?

「もし転職の理由が、『こんな仕事をするために就職したんじゃない!』『みんなが私の意見を聞き入れてくれない』というのであれば、一度、思いとどまった方がいいと思います。なぜなら、それはあなたの実力不足が原因で、そうした“思い通りにならない状況”を招いているだけだから。

でも、あなたに実力がつけば、その原因は改善されるもの。きついことを言うかもしれませんが、本当の実力がついてくると、周りって黙ってついてくるものなんです。なんて言えばいいのかしら、“技の力が、自然と周りをひれ伏させる”という感じ。会社というのは、やはり適材適所に人を配するもの。“こんなことをしている今の自分”から抜け出したいなら、それは転職するのではなく、先に力を磨くべきです。

そして、せっかく転職するなら、次のステップアップのためにしたいと思いませんか? 今だから言えるのですが(笑)、実力をつけて辞めた方が確実にいい転職ができるんですよ。

石の上にも3年じゃないけれど、まずはその職場に残って“チャンス”を待ってみてはどうかしら? ただしその間、淡々と自分の技術は磨くんですよ。努力を怠ってはダメ。そのうち力がついてくると、周りのあなたへの接し方も明らかに変わってくるはず。だからこそ、安易に転職という道を選んで逃げないでほしいんです」

ホンモノの一流だけを真似しなさい!

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「そして、実力をつけるには、“いい先輩”を見つけること」と松本さんは言います。

「まずは職場の中で、仕事の仕方が尊敬できる人を見つけ、とにかく観察すること。この観察することって、力をつけるためにものすごく大切なこと。これはいくら時代が変わっても、変わらないことだと思うんです。私の時代にはスタイリストの専門学校などありませんでしたし、先駆者すらいません。だから“現場で先輩たちがやっていること”を観察し、真似て、力をつけていくしかなかったんですね。

尊敬できる先輩の接客から職場での人との接し方、言葉使いまで、とにかく観察して真似てみること。最初はただの“まねっこ”にすぎないかもしれませんが、日々、繰り返すうちに自然とあなたらしさも加わり、あなた自身の魅力になっていくはずですよ」

ここで注意したいのが、一流の人の見つけ方。ここでもちゃんと松本流の見極め方があるそう!

「昔から多いのが、“一流に見せている二流”(笑)。こういう人は、一見華やかなんだけれども、やたら自分の仕事を自慢したり、周りにえばり散らすんです。ホンモノは意外なほど地味で、自分の話はこちらが聞かなければしないくらいだったりするものです。そしてどんなことがあっても動じない、変わらない。だからたとえ有名になっても尊大な態度をとったりせず、謙虚なんですね。多くの“ホンモノの一流”を見てきた私が言うのですから、本当です!」

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人間関係が理由なら、迷わず転職を!

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ここまで松本さんが語ってきたのは、あくまでも自分が努力すれば解決できる技術的な問題が原因であれば、転職は一度思いとどまりなさいということ。でも、人間関係が理由だったら「引き止めません」と言いきります。

「職場って、やはりすごく閉鎖的な空間です。その中で、いじめられたり、こじれた関係というのはそう簡単に修復できるものじゃありません。そのときは、さっさとやめていいと思うんです。いちばん大切なのは、自分の心と体です。心身にストレスを抱えて働き続ける必要はありませんよ。

私自身、芸能事務所の社長をやっていた頃、経済的には絶好調でしたが、大腸ポリープを抱え、胃には胃潰瘍の自然治癒の痕が9箇所。血便・血尿はしょっちゅうというストレス地獄……原因は人間関係でした。でも、そのときは、ストレスに犯されている自分が見えていないんです。だから、そこから『逃げる』という発想もないまま、ただ闇雲に前進しようとするんです。

今、離れてあのときの自分を見てみると、改善できない人間関係のストレスで体まで壊して働き続けるなんて、おかしいですし、いい仕事ができるわけがないんです。だからこそ、『辞めちゃいなさい!』って言えるんです。

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人って、百人百様いい面があるもの。今、あなたは技術者としては失敗したかもしれないけれど、実は営業には向いているかもしれない。だから、たとえ1回失敗したからと言って、自分を否定したり、責めたりしないで。若いうちは、次の可能性をどんどん探せばいいんです。それに自分の長所なんて、自分じゃわからないものです。よく、自分で自分を評価する人っていますよね。でも、その評価って大抵が間違っていると思いませんか?『私ってサバサバした性格なんです』と自分で言う人ほど、フタを開けてみると全然サバサバしていなかった……なんて経験、あるでしょう(笑)?

だからこそ、信頼できる第3者が大切。その人に自分のいいところを上げてもらいましょう。あ、家族はダメですよ、あまりに身近すぎて贔屓目に見たり、逆に厳しすぎる評価を下しますから。

信頼できる人に教えてもらった自分の長所というのは、転職の際、必ずやあなたの武器になります。先ほども言ったように、今、技術職で失敗したとしましょう。でも、お友達に、『あなたの長所は、誰とでも仲良くなれること。話もおもしろいじゃない』と言われたら、営業や販売への転職を視野に入れることもできる。就職・転職は自分をきちんと知り、より長所を生かせる仕事を選ぶことでもあるんですよ」

取材・文/児玉響子

profile

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松本洋子さん

1948年東京生まれ。15歳で少女モデルとしてデビュー。1970年写真家・西宮正明氏にスタイリストとして師事。1975年に独立し、フリーのスタイリストになる。「明治製菓」「サントリー」「ライオン」などのCMを中心に活躍。その後、布施明氏、小柳ルミ子氏、ディオンヌ・ワーウィック氏などのステージ衣装を担当。1990年芸能プロダクション「オフィス松本」を設立。2002年映画製作会社に改めたが、2005年映画製作を断念。55歳で無一文に! しかし一念発起して、60歳からシニアモデルとして再デビューを果たす。
写真/石田健一(「人生、いつだってスタートライン 美しく暮らすおしゃれのヒント」より)

Information

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松本さんの著書「人生、いつだってスタートライン 美しく暮らすおしゃれのヒント」¥1,296(朝日新聞出版)

モデル、スタイリスト、芸能事務所社長……普通の人の3倍速で生きてきた松本洋子さんのライフスタイルエッセイ。“シニア女子”のファッション、メイク、ダイエットはもちろん、“お一人様暮らし”の食事や経済事情についても赤裸々に語った1冊。

働きながら自分を磨く3つのアクションとは? 松本流人生の心得 #2>>

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