NORA Journey田中衛さん#1「NORAが目指すブランディングとは?」
1990年代後半の美容師ブーム。その真っただ中に美容師を目指し、当時東京・青山にあった〝日本一のサロン″でしのぎを削っていたNORA HAIR SALONの創業メンバーたち。カリスマJr.世代ともいえる5人の仲間が2007年4月に立ち上げたサロンは、表参道でもひときわユニークなサロンとして注目を集めています。その活動はサロンという枠に捕らわれない、とても自由なもの。
何よりも〝和″を大切に、異業種とのコラボレーションでもまず「それがお客様や自分たちにとって、本当に幸せなことなのかを第一に」決めているのだといいます。今回はサロンを支える仲間の一人、姉妹サロン、NORA Journey代表、田中衛(まもる)さんのお話を中心にさらなるNORAの魅力に迫ります。
美容への執着心がブランディングの源に
――田中さんはいわばNORAの社内で起業して別ブランドをつくられたわけですよね。
「はい、NORAが理想とする、自立した女性たちの人生と旅とをかけてNORA Journeyという名前にしました。そもそもNORA(ノラ)というサロン名も、イプセンの『人形の家』の主人公、ノラから命名して、自由な精神で今を生きる、自然体で都会的な自立した女性像をイメージしています。人生という旅路で、いつどんなときも、そしていつまでも通いたいと思っていただけるサロンがコンセプトです。お客様の人生という旅路を、髪を通じて共に歩んでいきたいと考えています。
今って美容師もお客様も、何を信じればいいのか確信が持てない時代に入ってしまったと思うんですよね。これはアシスタント時代から言えることなんですが、先輩たちのあとについて何とな~くやっているだけではダメで、なぜこれをやるのか? やらなければならないのか? と日々考えて自分から動かなければ、美容師自身もサロンも時代の波にただ押し流されてしまう。美容に対する執着心とでもいうか、たとえばカラーリング一つを取っても、カラーリング前の髪の色や髪質によって色の出方は違うわけで、何でこの色になるのか? どうしたらくすんで見えなくなるのか、など突き詰めて考えることが大切だと思います。
もちろん今はこのメーカーのこの色をチューブから出して塗ればOKという、イージーなカラーが台頭していますが、それでも差をつけられなければ意味がない。色の似合わせ力が明らかに落ちている今、例えばクーポン誌の特集でスモーキーアッシュが人気とあれば、すべてがそれに続くかのように、トレンド的なものにすがる、流されるでは、差別化なんて到底できないでしょう」
自分の技術を〝客観的に″見ることからスタート
「少子高齢化が本格的になり、お客様はどんどん減って、ますます激戦になってきているわけで、そんなときに皆が同じことをしていたら、お客様は簡単によそへ行ってしまわれるでしょう。たとえ一時的に、そのスタイリストについたとしても〝顧客″ではない。すぐにどこかへ行ってしまう儚くて危うい存在だということを肝に銘じるべきですよね。
今、ヘアサロンでも〝ブランディング″が当たり前になって、その方法をときどきセミナーなどでもお話しさせていただいているんですが、まずは自分のサロンや自分自身を客観的に見ることから始めなければなりません。これ、結構シンドいことなんですが、現状を知って危機感を察することが、自己ブランディングのためには絶対に必要な作業です」
プロの視点でもっと技術をつきつめる!
「(前述の)カラーリングで言えば、イージーなカラーを塗っていればいいのではなくて、2か月後にそのお客様がリターンされたときの褪色を見て、次の手をどうするか判断しなければなりません。もっと言えば、もしそのスタイリストに進化する意欲があれば、つねにカラーリングに対して予習・復習を重ねて、どんな髪質のお客様がいらしたときでも、自分のカラーリングで必ずリターンさせる!くらいの技術的な打ち出しがあれば、もっと強くなれると思うんですよね。
僕らは後輩たちに「お客様のBefore・Afterをよく見なさい」と言うのですが、カラーリングによる色の変化って、一番違いがわかりやすいんです。パッと変化が表れるというか、顔映りなど、素人目にもわかりやすい。ましてや僕たちプロは、さまざまな薬剤の特性を分析できるわけですから、仕上がりや褪色の変化などデータとして蓄積して、より理想のカラーリングを追求する。これも立派なブランディングの第一歩だと思います」
取材・文/山岸敦子
撮影/石田健一
Salon Info
NORA Journey (ノラ ジャーニー)
5人の実力派美容師により2007年オープンしたNORA HAIR SALONから派生した姉妹サロンで2013年に表参道にオープン。
田中衛さんを代表に7人のスタイリストが在籍。34坪で年商1億を超える売り上げを維持。着実に若手が成長、人材育成面での評価が高い。サロンブランディングでも、セミナーの要請があるなど、美容業界でも注目のサロン。
NORA Journey
http://www.nora-style.com/journey/
NORA HAIR SALON
http://www.nora-style.com/nora/
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