初めての撮影での挫折。「人は自分が思うほど気にしていない」マインドで、撮影チームのリーダーへ【美容師 栗原勇介さん】♯2

東京・多摩エリアを中心に17店舗を展開する美容室グループ「ZEST」でFC店「ZESTIivy」のオーナーを務める、栗原勇介さん。前編では、美容師を目指したきっかけや、1社目での経験を中心にお話を伺いました。

後編では「ZEST」入社後の栗原さんに迫ります。転職後、栗原さんがぶつかった大きな壁が、初めて任された撮影の仕事でした。

そのときに感じた挫折と、そこからの切り替え。そして、5年で撮影チームのリーダーを任されるまでになった試行錯誤について伺います。

さらに「美容師という仕事に出合えたことが、自分にとって一番の幸運だった」と語る栗原さんの仕事観についても詳しくお聞きしました。

今回、お話を伺ったのは…

栗原勇介さん

「ZEST ivy」オーナー/トップディレクター

東京都出身。高校卒業後、美容室に就職し、通信課程で美容師免許を取得。約10年間の経験を積んだのち、2011年に「ZEST」へ入社。八王子店で店長を務めたあと、2026年1月にFC店「ZEST Ivy」のオーナーとして独立。小顔×艶髪を軸に、一人ひとりの魅力を引き出す上品なスタイル提案に定評がある。

インスタグラム

失敗した結果にフォーカスし過ぎず、「次の一手」に切り替え

「ZEST」に転職したあと、さまざまな経験を重ねた栗原さん。なかには忘れられない失敗も

――「ZEST」に入社してみてどんなことを感じましたか?

技術力の高さと、センスのよさを感じました。「ZEST」はカリキュラムがしっかりしているので、土台となる技術力がまず違うんです。

さらに、トレンドの技術を発信している美容師の方を招いた講習もあり、学べる環境が整っていると感じました。

――「ZEST」で転機になった出来事はありましたか?

入社してすぐに撮影チームに入れてもらい、最初に参加したシーズン撮影でまったく成果を出せなかったことです。

前社では撮影経験がほとんどなかったのですが、やってみたいと思い自分から手を挙げました。美容師経験も長く、やる気もあったので、いきなり4人のモデルのうちの1枠を任せてもらえたんです。

でも完成した作品は、納得できるものではなくて……。周りからも「今回のテーマとは少しずれている」と指摘をされました。

――かなり落ち込んだのでは?

落ち込みもしましたが、それ以上に危機感が大きかったです。このままじゃまずいなと。アシスタント時代はできないことがいろいろとありましたが、スタイリストになるとある程度は何でもできるような気になっていて。スタイリスト9年目になってからぶつかった壁だったので、余計に大きな危機感を感じましたね。

――そこからどうやって挽回していったんですか?

僕はあまり落ち込み続けるタイプではなくて。もちろん恥ずかしさも悔しさも最初はありましたが、自分が思うほど周りはその失敗をずっと意識しているわけじゃないと思ったんです。

それなら、ここから結果を出して、みんなの記憶を塗り替えればいい。そう考えて、次にどうすればよくなるかに意識を向けました。

そして撮影の回数を重ねながら改善を続け、少しずつクオリティを上げていくことができたんです。

徹底的な分析で「可愛い」を言語化。5年で撮影チームのリーダーに

撮影に参加する栗原さん。チームで作品を仕上げてきた

――撮影のセンスや技術はどのように身につけたのでしょうか?

新人時代にやっていたことに近いですが、まずは可愛いと思ったスタイル写真を見て、細かく分析しました。

どこにボリュームがあるか、分け目はどうなっているのか、髪の毛が顔に何本かかっているのか。そしてそこで言語化できたことを、真っ白なマネキンの写真をプリントアウトして、自分で描き込んで再現していくんです。

そこで描いたものが可愛く見えなければ、そもそも可愛い形を理解できていないということなので、また写真を見直す。形が理解できれば、あとはそれを再現できる美容師的な技術を身につけていくだけです。その繰り返しでした。

――トレンドはどのようにキャッチしていましたか?

パリコレなどのコレクションを見て傾向を探り、自分がいいと思ったデザインがリアルクローズ(日常生活で普通に使えるようなシンプルなデザインの流行服)に落とし込まれていくかを見るようにしていました。

自分が可愛いと思ったものが、実際に街や服に反映されていれば、トレンドの感覚が合ってきたということ。そんなことを5年ほど続けて、少しずつ評価してもらえるようになり、最終的には撮影チームのリーダーも任されるようになりました。

正直、センスがいい子はほかにも社内にたくさんいたので、僕はコレクションからトレンドを分析したり、撮影までの段取りを組むようなところで評価されたのかもしれません。

美容師という天職に出合えたことが最大の幸運

栗原さんが立ち上げた「ZEST Ivy」。プレイヤー兼経営者として、日々奮闘している

――その後、「ZEST」のFC店オーナーとして独立されたのですね。FCの形を選んだ理由は?

独立はいつかしたいと思っていましたが、ゼロから立ち上げるか、FCにするかは迷っていました。最終的にFCを選んだ理由のひとつは、「ZEST」の畠山社長の考え方に強く共感したことです。

会社の教育理念が「一生努力し続け、共に学び合う共育を柱とし、日本一愛され続ける美容師となる」というもので、僕の考えと重なる部分が多かったんです。

また、ここまで育ててもらった会社に恩返しがしたいという思いと、八王子店のメンバーとこれからも一緒に働きたいという気持ちもありました。

――独立するまでに課題はありましたか?

ありました。実はFC店での独立の話は6年ほど前からいただいていたのですが、当時、八王子店の店長を任されていた僕は、人を育てる力が足りていなくて。スタッフが辞めてしまうことが続き、社長にも「今のまま店を出してもつぶれるぞ」と言われていたんです。

当時の僕は、スタッフに輝いてほしくて、求めるものが多くなっていました。でもそれでは人は残らない、自分が変わらないといけないと気づいたんです。

 ――具体的にどんな点を変えたのですか?

スタッフとの向き合い方を見直しました。相手に合わせること、いい部分に目を向けることを意識するようになりました。そしてスタッフを本気で育てたいなら、その人のことを丸ごと好きにならないといけないと改めて気づき、実践するようになったんです。

自分の基準を押しつけるのではなく、相手を理解する。その大切さを学び、徐々に人が残ってくれるようになっていきました。

――最後に、栗原さんにとって働くこととは?

あまり働いている感覚はないですね。美容師になった当初は、それまでのいい加減な自分が本当の自分で、美容師としての自分を演じているような感覚がありました。

でも仕事を続けていくうちに、美容師としての自分が本当の自分だと感じるようになりましたし、その自分のほうが好きなんです。だから仕事をしている感覚というより、生きている感覚に近いのかもしれません。

寝ている時間以外はほとんど仕事をしているわけだから、人生が豊かだったと思えるかどうかは、仕事が充実しているかにかかっている。以前、そんな話を聞いたことがあるんですが、本当にその通りだと思っています。

――美容師はまさに栗原さんにとって天職という感じですね。

はい。美容師という仕事にたどり着けたことが、僕の最大の幸運でした。学生時代にアルバイトをしていたころは、早く時間が過ぎないかとばかり考えるくらい、仕事が嫌いだったんです。

でも美容師になってからは、仕事に行きたくないとか、辞めたいなどと思ったことは一度もありません。

それくらい、この仕事は自分に合っているし、本当にいい仕事だと思っています。長く付き合ってくれたお客様、スタッフ、そして育ててくれた会社のおかげですね。本当に感謝しています。


美容師という仕事を通して人生を変えた栗原さん。ささいなひと言から始まったその道は、成長したい、お客様に喜んでもらいたいという想いを原動力に、着実に積み重ねられてきました。

印象的だったのは、自分を変えたいと思いながら演じていた姿が、「これが自分だ」と胸を張れるものへと変わっていったこと。

なりたい自分を演じることから、自分を変える一歩は始まるのかもしれません。


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 ZEST Ivy
住所: 東京都八王子市中町9-12 小松ビル101
TEL:0426-34-9970

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