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カリスマ美容師Jr.世代の今・ S.植田高史さんの人を惹き寄せる力 #1

‘90年代後半から美容業界に巻き起こった「カリスマ美容師ブーム」。その真っただ中でスタイリストとしてデビューし、“センパイ”たるカリスマ美容師たちのもとで美容魂を磨いてきたカリスマJr.世代。今回は、S.(エス)オーナースタイリストの植田高史(たかし)さんです。

今や伝説となったヘアサロンAks(アクス)での修業時代。スタイリストデビューをして数年後、突然退社。欧州へと旅立ちます。さまざまなアーティストと交流したのち帰国し2003年にS.をオープン。以来、その独特なたたずまいと、意外にも(!)職人肌な仕事ぶりで、カリスマブームが終息した今でも主要女性誌から矢のように仕事が舞い込むという人気者です。その魅力を堀下げます。

人とのつながりの連鎖反応で、今がある

―植田さんといえば、今も女性誌で単独の特集が組まれるほど人気者ですよね。
「いやいやいや(笑)前のお店にいたときから編集者のお客様が多いんですよね。そこからのご紹介も多くて、髪を切るだけでなく、撮影の仕事もいただいています。その中で、ブチ抜き6ページとか、僕単独でヘアを担当させていただく企画がたま~にあったり。ありがたいことに人とのつながりの連鎖反応と言うか、そんなご縁から雑誌などに露出する機会がどんどん増えたのが、この20数年でした。

サロンワークでは、ひとり一人のお客様と話をしたいタイプなんですよ。ちょうどいい距離感を保つのが僕の仕事のスタンス。だから今は月に300人くらいまでに予約を制限させていただいています。若いときは月に500人とか入れていたときもありましたが、メンズのお客様も多いので、その人に合わせて時間をかけてカットしたいなと。僕自身がダメなんですよ、そうしないと。同じ髪型なんてつくれないし、そもそも量産なんてできないじゃないですか、ヘアって。

でもサロンは商売でもあるから、商売として量産的な仕事をせざるを得ないときもある。いつの頃からか、売り上げを伸ばすことだけに集中する美容人生って本当にイケてるのかなぁと、考えてしまって。生活のためには必要ですが、結果より過程こそ大切で、そこがなおざりだと、何かもっと大切なことを見誤るような気がずっとしていました」

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サロンワークでは、時間の許す限りじっくりとお客様に向き合いたいと、予約を月300人までに調整。雑誌の仕事は今も引きを切らず。編集者からの支持が厚いことでも、同世代の美容師の群を抜いている。

基本は相手がよろこぶデザインであること

「僕の中では、撮影もサロンワークも相手がよろこぶデザインであることが基本です。よろこび方には2種類あって、期待通り、思い描いていた通りのときと、ぜんぜん違うけど意外性とか、裏切られたというようなよろこび方もありますよね。誰をよろこばせるのか? ですが、雑誌の場合は、読者とか編集さんとか読み手になる。広告の場合は広告主だったり、ファッションの場合は服飾デザイナーだったり。ショーやその作品を見ている人かもしれない。サロンの場合はお客様がよろこぶヘアをつくるのは当然ですからね。ちょうどいいバランスでやり方をちょっとずつ変えて進化させていきながら、形をつくっていけばいいんじゃないかと思います。僕らの仕事は何にしろ、新しい空気を入れて髪の毛を仕上げることですから」

レザーを〝封印″して、新たな境地を得る

「デザインに関していうと、修業時代はレザーとスライドでカットしていたんですが、S.を開いてから、僕自身のカットの幅を広げるために一度レザーを封印したんです。使うのはシザーとセニングだけにシフトして、10年くらいそれを続けてから解禁したら、新たな発見がたくさんありました。営業で制約するのは正直やりづらかったですが(笑)それがかなりいい経験になりました。

シザーで切るって、緻密な完成図をつくらないといけないじゃないですか。レザーはそこにニュアンスや遊びを加えて、見たままを削りながら彫刻をするような作業だなと。結果的にジオメトリックなハサミの使い方ができるようになってディテールを強く出せたり、毛束の引き出し方一つをとっても正確性がUpしたり。改めて似合わせのデザインの違いが表現できるようになったなぁと。たかが道具ですが、それこそ使う側の心一つで、ここまで違うのかと思いました。自ら制約をかけて、自分を成長させることの大切さを学ぶいい機会でしたね」

大きな目を輝かせて、少年のように語る植田さん。そういえば以前、ある雑誌で彼を取材したときにコメントをもらった、長年の顧客の男性の言葉を思い出しました。
『彼は一見、頼りないけどハサミを持つとまさにプロ。今までの髪型はすべて気に入っています』(Pen2004年 男のヘアサロンより筆者抜粋)

一度会うと、また何度でも会いたくなる男。植田高史さんの人を惹き寄せる魅力は、そんなどこか人なつっこい独特の空気感にあるようです。第二弾はその作品づくりをクローズアップします。お楽しみに!

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ヨーロッパ武者修行を終え、サロンを開業した当時の雑誌記事。植田さんの気負いのなさと人柄が表れたリポートで、この記事がきっかけとなり、再会をはたせた顧客も。(Pen2004年『男のヘアサロン』より

取材・文/山岸敦子
撮影/石田健一

Salon Data

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S.(エス)

植田高史さんが、2003年、仲間とともに立ち上げたサロン。
外苑前のビルの1フロアからスタートして2010年、現在の表参道へ移転拡張。独特の空気感と卓越したセンスで一躍人気の美容師に。
必要以上に媚びない、でも微妙な女ゴコロがわかる、女性像をつくり出す手腕は、多くの先輩カリスマ美容師や同世代の著名な美容師たちから一目を置かれている。

http://www.s-tokyo.net/

カリスマ美容師Jr.世代の今 S.(エス)植田高史さんの作品づくり #2>>

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