カリスマ美容師Jr.の今。『MAGNOLiA』岩上昌弘さんのサロンづくり #2

‘90年代後半から沸き起こった「カリスマ美容師ブーム」。more rejob読者にとっては、はるか昔の“伝説”で、中には興味がない、という人もいるかもしれません。そんな時代の真っただ中にアシスタントからスタイリストへと成長し、カリスマたちの美容魂を連綿と受け継ぐ「カリスマJr.」と呼ばれる人たちこそ、今の美容業界をけん引していると言えます。

一般女性誌だけでなく、美容業界誌でもその名をよく聞くMAGNOLiA(マグノリア)代表の岩上昌弘さんに、美容師としての“生きるヒント”についてお聞きました。

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サロンでの〝立ち位置″は自分でつくる

――原宿店と青山店の店長、DAISUKEさんとSHINさんの活躍が目覚ましいですよね。
「そうですね。DAISUKEはうちへ来てからわりと短期間でスタイリストデビューをしたのですが、アシスタント時代からモチベーションが高く、スタイリストになってからも後輩たちの面倒を見るなど、僕ら上の世代と、下の世代のちょうどいいパイプ役になってくれていました。SHINは新卒で入社しましたが、サロンのオープン時はリーマンショック、その後の大震災と厳しさが増していく中、それらを乗り越えながら、芯の強い美容師になってくれたことが幸いでしたね」(岩上さん)

――DAISUKEさん、SHINさんはここまでいかかでしたか?
「僕はアシスタント時代(2009年以前)に作品がほしくて、知り合ったカメラマンさんとフォトセッションをやったり、人と違うことをして自分の武器を持たねば、と思っていましたね。うちのサロンに足りないところはどこだろうと、先輩と一緒にサロンで撮影会を企画したり、メンズの美容業界誌へパーマやカラーの企画を持ち込んだり、コンテストに参加したりしていました」(DAISUKEさん)

「僕が入ったときはまだ人数も少なくて、自分自身もできないことが多くて怒られて育ちました。何とかサロン内で認められたいと、フォトコンに応募したりしていましたね。とにかく最初はオーナーの岩上や先輩の真似をしながら、よりリアルなサロンスタイルを極めたいと、人気雑誌と美容メーカーとのコラボ企画のフォトコンテストに応募。売れるスタイルを意識した結果、グランプリを獲得し、売り上げも上がりましたし、賞を獲ることで自分自身の内面も変わった気がしました」(SHINさん)

DAISUKEさん,SHINさん
原宿店店長のDAISUKEさん(右)と、青山店店長のSHINさん。DAISUKEさんは『ナプラドリームプラス2015』でグランプリを受賞。SHINさんも『ミルボンDAインスパイア2016』 でゲスト審査員賞を受賞するなど、注目の若手として活躍している。
ナプラドリームプラス2015
ナプラドリームプラス2015

先輩が後輩を〝引き上げる″サロンづくり

「二人にいつも言っているのは、上の立場になるほど、下の子を引き上げていかなければダメだということですね。これはオーナーの僕にも言えることですが、美容師なら誰でも皆、プレイヤーでいたいと思いがちだけど、昔と違いサロンが会社という形態になっていく今は、撮影や集客、いいデザインを皆でシェアして、個人ではなく〝サロンに新規客を入れる″という考え方にシフトしていく必要があります。お客様はサロンとの共有財産であって、結果的に自分を支えてくれるのはお客様と会社なんだ、という意識転換です。
アシスタントのときは闘っていますからね。早く次に進みたいとか、誰よりも多く撮影をやりたいとか、自分自身や同期といい意味で闘っている。でもスタイリストになって、店長や副店長になったら、個人プレーだけではいけないときが必ずやってきます。その点、この二人は、自分がこのサロンでどういう立ち位置で“機能”すればいいか、スタイリストになる前の早い段階から考えていたんだと思いますね」(岩上さん)

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他人に教えることで、自分の学びになる

「そもそもこの業界特有だと思うんですが、自分が育ててきた子が伸びてくると焦るんですよね。自分もプレイヤーでいたいから。育てなきゃならない立場なのに、育ったら脅威に感じて悩む(笑)他人に教えることで自分も学んでいるんだという気づきがあれば、さらに成長できるし、そうした姿勢は必然的に下の子たちにも伝わっていくはずですから」

――2017年から始められた、営業時間中のレッスンはどうですか?
「今までレッスンは幹部にまかせて僕はチェックだけだったんですが、僕が直接見ることで一番注意したいことをダイレククトに伝えられるようになりましたね。営業中は皆テンションが上がっているし、実戦に近いから緊張感もあります。美容業界の働き方改革と言うか、やっぱり変えられる部分は変えていかないと思いますね。僕が全員の技術教育をする…むしろそれが僕の仕事なんじゃないかと思ってやっています」

レッスン
MAGNOLiAでは、2017年から週に1度、営業時間中にモデルレッスンを開始。岩上さんが直接教える。今年3年目のアシスタントNOZOMIさんは「疑問点がその場でわかることが何よりもうれしくて、これからもっと営業中にオーナーや先輩たちのデザインを見て学ぼうと思いました」

取材・文/山岸敦子
撮影/中川良輔、編集部

Salon Data

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MAGNOLiA (マグノリア)

2008年東京・表参道に、マーボーこと岩上昌弘さんが開いたサロン。前店から受け継いだ“お家芸”ともいえるパーマの技術と独自の分析力で、オープン当初からそのサロン運営はたびたび美容業界誌で取り上げられるほど。2016年には原宿店をオープン。DAISUKE さん、SHINさんという美容業界でも注目の若手ツートップがそれぞれの店長を務める。

http://www.hairmake-magnolia.co.jp/

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