カリスマ美容師Jr.世代の今。MAGNOLiA 岩上昌弘さんのサロンづくり#1

‘90年代後半からにわかに沸き起こった「カリスマ美容師ブーム」。more rejobの読者でも若い世代ほどすでに過去の“伝説”で、自分には関係ないと思う人もいるかもしれません。ただ一つ言えることは「その影響はまだ今も続いている」ということ。今、あなたが働いているサロンですでに当たり前となっているモノゴトや考えは、このブームがなければ生まれなかったと言っても過言ではないからです。

そんな時代の真っただ中にいて、カリスマたちの美容魂を連綿と受け継ぐ「カリスマJr.」と呼ばれる人たちがいます。第一弾はMAGNOLiA(マグノリア)代表の岩上昌弘さん。その独特の視点のサロンづくりをリポートしました。

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10年で美容師を取り巻く環境が激変

「独立・開業して来年で10年になるのですが、10年前と今ってまったく違うと思うんですよね。まず美容師を取り巻く環境が明らかに変わったと思います。さらに自分がサロンに勤務していた10年前はどうだったかと言うと、もっと違う。昔は情報を収集するには雑誌くらいしかなかった。美容師同士、横のつながりとかはあったけど、意外にまわりの変化に気づきにくかったと思います。なぜなら毎日必死に“技術”を追い求めていたから。

でも今はネット時代ですよね。よくも悪くもいろんな情報がいとも簡単に手に入ってしまう。発信することだってSNSとかで簡単にできるわけです。若い人を見ていると、カットやパーマをやり始めたくらいのときの25-6歳でブレと言うか、フラフラしだす。例えば途中でサロンを辞めるという場合。昔はカフェとかアパレルとか異業種へ行く人が多かったですが、今は同業他社で天秤にかけるんですよ。少しでもお給料がいいとか、早く帰れるとか。“リア充”って言うんですかね。より生活にマッチしたほうを選ぼうとする。

もちろんそれ自体は悪いことではないんですが、長い目で見ると“そんな選択で大丈夫?”今までせっかくコツコツとそのお店で積み上げてきたものを捨ててまで、それ?と、言わざるを得ない場合が多い。なんとなく不安になったからと、確信もないのに対岸に行ってみたけど、その先は断崖絶壁だった、というオチです。こうした現象は、最初25-26歳の人たちから火がついて、今はさらにその下の22-23歳まで“飛び火”していると思います」

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都内一店舗を経て、パーマの巨匠、ANTI小松利幸氏に師事。2008年に独立し、MAGNOLiA(マグノリア)を開店する。オープニングの年にリーマンショクが起こり、以後3年間は本当に苦しい時代だった、と岩上さん。

時代が変わる今こそ、“本質”を見直すチャンス

「若い人たちがより条件のいい働き口と今のサロンとを天秤にかけたとき、辞めて行きつく先の一つとして面貸しというフリーランスのシステムがありますよね。以前より2-3万、取り分が多いとか早く帰れるとか、最初はそれでもいいんだけれど、やっぱり1人では限界があるし、お客さんも増えない。だからまた組織形態のサロンへ戻る人が多いと聞きます。同じ店にはさすがに戻れないから、また一から違う店でやり直すわけです。以前の店でじっと踏ん張って地道に船を漕いでいれば安全に目的地へたどり着けたかもしれないのに、途中で情報に踊らされて、目先の利益を求めて安易に辞めてしまう。もっと別の技術を高めたいとか、撮影のあるサロンへ行きたいとかならしょうがないですが、そういうモチベーションではない。ネットとかで得た情報に惑わされないで、もし技術的に伸び悩んでいるなら何が原因なのか? 20代の今の自分にとって何が本当に大切なのか、本質を見極めてそのときの判断を間違わないでほしいですね」

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2017年、教育方法を見直し刷新

「とはいえ、若い世代がより充実を求めるのは当たり前だと思うんですよ。美容師の働き方ってやっぱりまだ改善すべき点がたくさんある。なぜ朝来て夜まで営業してまた練習?と。一般的な企業なら、研修は勤務時間内でやりますからね。ただサロンは習得する技術も多いし時間がかかる。基本は営業が優先ですからね。規模が大きい会社なら別日にするのも可能でしょうが、中小はなかなかそう簡単にはいきません。うちも一応、会社ですし保障もきちんとしていますが、練習だけは本当に時間がかかる。一時期、営業が終わる1時間前からモデルカットなどに限り行っていましたが、時間を繰り上げても終わって帰れるのが11時半とかなんですね。11時にはならない。ならいっそのこと、2017年からは営業中にやろうと。しかも僕が直接、見る。営業中に練習するといってもマンツーマンではなく、営業の流れの中でするのでより実践的です。結局、経営者の僕が一番、厳しいですからね。まだやってみないと何とも言えませんが(※取材時は2016年末)、これ、かなり僕の中でうまくいくイメージです(笑) またいつか、カリスマ時代がくると思いますよ」

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MAGNOLiAでは、2016年6月、原宿店をオープンした。その店長として、岩上さんの右腕として活躍するDAISUKEさんは、若手美容師の中でも注目度の高い、期待の逸材だ

取材・文/山岸敦子
撮影/中川良輔

Salon Data

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MAGNOLiA (マグノリア)

2008年東京・表参道に、マーボーこと岩上昌弘さんが開いたサロン。前店から受け継いだ“お家芸”ともいえるパーマの技術と独自の分析力で、オープン当初からそのサロン運営はたびたび美容業界誌で取り上げられるほど。2016年には原宿店をオープン。DAISUKE さん、SHINさんという美容業界でも注目の若手ツートップがそれぞれの店長を務める。

http://www.hairmake-magnolia.co.jp/

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