廣田 純也 interview#2:福祉専門美容師が見つめてきた、美容による生命力の向上
美容師とは、トレンドを生み出し、流行を作り、おしゃれを届けるだけの存在なのだろうか――美容師としてのありかたに疑問を抱き、30代という若さで福祉の道へと活動の場を広げた廣田純也さん。その原動力や、社会活動を行うことによって見えた美容師の可能性について、お話をお伺いしました。
障がいがあるとはいえ、相手は同じ人間。サービスも、技術も、健常者と同じものを提供する。それが、廣田純也のこだわりであり、ポリシーでもある。
――――まずは気になる質問から。障がいを持つ人や、介助が必要な人たちを相手にするということは、それなりに大変なことが多いと思うのですが――?
「障がいの中身や度合いにもよりますが、健常者と変わりありません。みんな同じ人間ですから、違いなんて、そもそもないんです。ただし、その人の障がいや現状を理解することは必要になります。その人の個性だったり、好みの色だったり……そこはしっかりヒアリングしています。でもこれは、普通の美容室のサロンワークでも変わらないことですよね。相手が障がい者だから、と線引きをするのではなく、同じ人間として、ホスピタリティをないがしろにしないことが大切だと思います。あ……ひとつだけ、「うわぁ、大変だ!」と思ったことがありました。」
――――どんなことですか?
「まだ福祉の仕事を始めたばかりで、あまり慣れていないときに、ベッドサイドでカットすることになったんですが……あれは大変でしたね。動きが制約されるし、鏡もないし。慣れたら、どうってことなくなりましたけど。」
――――価格的な部分についてはどうですか?
「そうした面については、実は僕なりの線引きをしています。僕には僕なりの理想があり、それに見合う技術とサービスを提供しているので他の福祉の現場で行われているカットに比べて、多少高い値段を提示させていただいているんです。それでも、普通のワロンワークに比べたら安いんですけどね。僕は技術を安売りはできないと思っているので、きちんとした対価はもらうようにしています。」
――――サロンワークで行われるようなサービスはしているんですか?
「いわゆる肩を揉んだり、頭皮をマッサージしたり……というサービスは一切行っていません。希望により、ヘッドスパは行うことがあります。」
――――病院や施設に出向いて施術をされているんですか?
「そういう場合もありますが、茅ヶ崎で完全個室のサロンも経営しています。ヘアドネーション(小児がんや、白血病、先天性の無毛症など、病気などの原因により髪を失ってしまった子どもに、ウィッグを無償提供する取り組み。NPO法人による活動が主体になっています)ってあるじゃないですか。そうした、いわゆる医療用のウィッグをかぶっている子どもたちの、髪が伸びてきている最中のケアなども、個室だからこそ行えるんです。引きこもりの子たちも、人と極力会いたくないと思っている。だから、路面店のガラス張りなんてもってのほか。個室だと、なんの不安もなく来てくれる。ただ……唯一の難点があるんです。店舗が2階にあるため、車椅子の方に上がってもらえないんです。ここだけは失敗したなぁ……って、反省中です。いつかきちんと対処したいとは思っています。」
profile
廣田純也さん
33歳/神奈川県出身/株式会社Herts代表取締役/山野美容専門学校卒業後、「SHIMA」に入社。美容師としての経験を積み、25歳のときにフリーランスとして独立。美容を通した社会貢献活動を行う傍ら、中学校での講演や、シンポジウムでのセミナー開催等を精力的にこなしている。
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