トレンドを創る人 Vol.1 U-REALM 高木裕介さんの華麗なる挑戦 #1
‘90年代後半から花形職業として注目を浴びた、美容師という仕事。そこから約20年が経った今、美容師としてどう生きていくか? 考えない日はないのではないでしょうか。東京・表参道といういわば檜(ひのき)舞台で、毎日のように美容師のことを、さらにはその未来を考えている一人が、U-REALM代表の高木裕介さんです。
皆さんからすると雲の上の存在? かもしれませんが、穏やかな口調のその奥には、美容師という職業に対する誇りと、もっと何かできることがあるはずだ、という強い情熱がみなぎっています。高木さんの新たな挑戦を追いかけました。
サロンスタイル撮影の、その先にあるもの
――高木さんと言えば、今話題のTOKYO BREND(東京ブレンド)の発起人の一人ですよね。
「そうですね。ただ最初から僕個人が他のメンバーに声を掛けたわけではなく、カメラマンの永谷さんによるところが大きいんですよ。そもそも当時、サロンスタイル、しかもCamCanやViViといったいわゆる赤文字系雑誌をやっているサロンはバリバリのライバルで、あまり仲がよろしくなかったので(笑)モデルの取り合いとかで、2000-2005年くらいまでサロン間がギスギスした感じだったんですよね。
ただ僕らの世代は年も近いし、個人的には仲が良くて。毎日毎朝、撮影するスタジオで顔を合わすわけですから、自然と仲良くなる。カメラマンの永谷さんと朝まで飲んで、みんなで何かをしたいよね、と。でも先輩世代にはあり得ないわけです。一緒に勉強会!? 技術の流出でしょ、とか言われていました。確かに当時は今より撮影の仕事に対して真剣でしたからね。雑誌に載ることが新規客を呼び込める策だったわけで、撮影の仕事がなくなることはお客さんがいなくなること、という危機感を皆が持っていました」
ライバルから“仲間への第一歩”
「みんなして、誰がその雑誌の1ページ大を獲るか、つねにせめぎあっていましたからね。(※編集部・注 当時の雑誌1ページあたりの広告料金は200万円ほどに相当。もちろん支払う必要はないが、その1ページ全面に自分が創ったヘアが載るということは、かなりの反響と自信をもたらした) どうしたら勝てるのかつねに考えていたし、こんなに苦労して勝とうとしていたメンバーが、今度は仲間になるわけですから(笑)仲がいいとはいえライバル美容師である僕が誘うのではなくて、永谷さんからそれぞれのメンバーに声を掛けていただき、逆に僕は一歩引いた立ち位置でいました。
いざ始めるとなると、ルール作りが大変で(笑)メンバー全員でかなり協議を重ねましたね。お金儲け的なことは絶対にやめようねと、方向性を定めました。そこからディーラーさんやメーカーさんを回ってきちんと意図を説明し、参加スタイリストでオーナーさんがいるサロンには直接僕が伺ってご挨拶をしました。当時はこうしたトップサロンのスタイリストがサロンの垣根を超えて集うことは前例がなかったので、やるからにはきちんと了解を得てからやらねばと思っていましたから」
横のつながりを通して、後進を育てるという志
「ブレンドを会員制にしたのは、地方でのセミナーの際、講師として出向くスタイリストの経費をまかなうためです。最初はメンバーサロンの勉強会が主だったのですが、そのうち地方でもやってほしいとお声をいただいて。僕らのセミナーは会員の皆さんからいただいた会費や参加費で賄っているので予算が限られるのですが、泊まらずに日帰りにするとか、アシスタントが同行しないなど、工夫をすれば何とかなる(笑)
そこまでして何でやるの? とよく聞かれるのですが、表参道の美容室で地方へセミナー講師として呼ばれる美容師は薬剤系が圧倒的ですよね。カット&スタイリングやヘアアレンジのセミナーとなると、口頭でわかりやすく説明できる人が限られてしまう。それではもったいない、何とかこの技術をほかの地域の美容師さんへも届けたいと始めたので、僕らトップの人間だけでなく、下の世代へもつながるようにしなければ意味がないわけです。
地方の会員の皆さんは、僕らの技術が知りたいとわざわざお金を払って集まってくださるので、まなざしが温かいですし、参加者も講師も皆、同じところを目指しているのでセミナー自体がとてもやりやすいんですよね。地道にコツコツ続けてきたおかげで、今ではJr.世代が講師として立てるまでになりました」
東京ブレンド結成のビハインドストーリー、いかかでしたか? 第二弾は高木さんのさらなる挑戦についてお届けします。
取材・文/山岸敦子
撮影/内田龍、編集部
Salon Data
U-REALM(ユーレルム)
代表の高木裕介さんが2005年に表参道に開いたサロン。
愛され系・モテ髪のヘアスタイルを確立、そのスタイリング技術を連綿と今に受け継ぐトップサロンの一つ。
「世界中でU-REALMにしかできない最高のヘアスタイルの提供」を使命として掲げ、高木さんを筆頭に実力派美容師が日夜、センスUpと技術の向上に向けて研鑽を積んでいる。
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